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米オルガノン・フェレイラCMO 女性の健康エコシステムの構築に意欲 社会でウィメンズヘルスの再定義を

公開日時 2025/03/18 04:53

米オルガノンのフアン カミロ アルホナ フェレイラ・研究開発責任者兼チーフメディカルオフィサー(CMO)は3月17日、本誌取材に応じ、女性の健康課題を解決するためのエコシステムの構築に意欲を示した。ウィメンズヘルスと言えば“リプロダクティブ・ヘルス”が想起されがちだが、同社はウィメンズヘルスを、▽女性特有の疾患、▽症状や影響の出方が男女で違う疾患、▽女性により多い疾患――の3つの観点から幅広く再定義。医薬品にとどまらず診断機器やアプリなどのソリューションをスタートアップやアカデミアなどと連携して開発・提供し、女性の健康に貢献していく構えをみせた。また、産官学と連携して、女性が女性特有の症状やコンディションを話しやすい社会環境を醸成することも、女性の健康や早期受診・早期診断のために重要だと強調した。


◎「ウィメンズヘルスのリーディングカンパニーであり、最前線を走っている」

オルガノンは2021年に米メルクから分社化して設立されたウィメンズヘルスに注力するグローバルヘルスケア企業。設立当初から、「女性に影響を与える疾患/コンディションにおけるアンメットニーズに取り組む」ことを掲げ、(1)Uniquely(女性特有の疾患)、(2)Differently(症状や影響の出方が男女で違う疾患)、(3)Disproportionately(女性により多い疾患)――の3つの観点から幅広く女性の健康の改善に取り組んでいる。2024年のグローバル売上は64億ドル(前年比2%増)で、この4分の1強をウィメンズヘルスが占める。

フェレイラCMOは、「弊社のような規模の企業でウィメンズヘルスをミッションとして掲げている企業はほかにはない。弊社はウィメンズヘルスのリーディングカンパニーであり、最前線を走っていると自負している」と述べた。そして、「女性の健康を改善・サポートしていくこと、ウィメンズヘルスをアドボカシー活動として推進していくことは、各国でほぼ同じように進めている」と語った。

◎女性特有の症状やコンディションが話しづらい社会環境 各国で課題

このうちアドボカシー活動に関しては、自身の産婦人科医としての経験も踏まえ、「例えば生理の話など女性特有の症状やコンディションを(社会で)話すことはタブー視され、ここにはスティグマがある。医師相手でも女性や女の子には話しづらさがあり、診断が遅れたり、最適な治療を受けられなくなることもある」と述べ、女性特有の症状やコンディションが話しづらい社会環境は日本に限らず各国で課題になっていると指摘した。そして、このような社会課題を解決することに強い意欲をみせ、「女性特有の疾患やコンディションについて話せることが普通な社会に変えていく必要がある」と強調した。

ただ、「当社だけで社会を変えられるものではない」とも話し、「政府や他社も巻き込んでウィメンズヘルスを再定義することが必要。(社会の)意識啓発や意識改革に当社も貢献していきたい」と述べた。フェレイラCMOは今回、BIO(Biotechnology Innovation Organization)の日本訪問の代表団の一員として来日した。PMDAや厚労省、経産省、国会議員を訪問して女性の健康課題全般について意見交換する予定で、女性特有の疾患やコンディションを話しやすい環境作りもテーマになりそうだ。

女性の健康課題に起因する経済損失が3.4兆円にのぼるとの日本政府の試算を引き合いに、「女性の健康が改善されるメリットだけでなく、社会全体にも良い影響を与える」とも語った。

◎子宮内膜症治療薬候補・OG-6219 「結果次第で第3相試験の対象に日本人も含む可能性」

フェレイラCMOは、オルガノンとしてウィメンズヘルスを再定義した▽女性特有の疾患、▽症状や影響の出方が男女で違う疾患、▽女性により多い疾患――という3つの観点についてそれぞれ課題や取り組みの一端を紹介した。

「女性特有の疾患」では、一例として子宮内膜症や月経困難症を挙げた。子宮内膜症に対しては、既承認薬で課題となる“生理サイクル”を変えることなく症状改善が期待できる新薬候補OG-6219(開発コード)について、今年半ばに第2相試験(日本含まない)の結果が発表される見通しだと紹介。「結果次第で、第3相試験の対象に日本人も含む可能性がある」と明かした。フェレイラCMOは、「疾患の病態を変えることにもつながる疾患修飾的な役割も果たすのではないかとの期待もある」と述べた。

OG-6219は経口17β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素1型(HSD17B1)阻害薬で、全身のホルモン濃度に影響を与えることなく、標的組織に局所的に作用する可能性があるという。開発が順調に進めば、ファーストインクラス薬になる可能性がある。

月経困難症に対しては、国内開発中のOG-8276Aについて、「第3相試験が進行中で、25年の完了を目標にしている。なるべく早く承認申請したいと考えている」と話した。オルガノンは24年9月に同試験で主要評価項目を達成したと発表しており、申請時期に注目が集まっていたが、具体的な時期の言及は避けた格好だ。

OG-8276Aはデソゲストレルとエチニルエストラジオールの配合剤。日本では両成分を配合した経口避妊薬・マーベロン(製造販売元:オルガノン)が承認されている。ただ、OG-8276Aとマーベロンではエチニルエストラジオールの含有量が異なり、OG-8276Aはデソゲストレル150μg、エチニルエストラジオール20μgとなっている。マーベロンはエチニルエストラジオールとして30μg含有している。

◎有病率や発症率が同じでも、症状の出方や痛みの感じ方に性差あることも

「症状や影響の出方が男女で違う疾患」に関しては、「有病率や発症率は同じでも、(疾患によっては)女性が疾患に気付くことに遅れ、診断が遅れがちになることがある」という。一例として虚血性心疾患を挙げ、症状の出方や痛みの感じ方に性差があるようだ。

オルガノンとしては、臨床試験において相応の数の女性被験者を組み込むことや、性差の違いを浮き彫りにするデータ分析を進める意向で、「女性のデータを取り、女性のデータを用いて、(性差を)解釈するアプローチを進める」と述べた。また、女性がいち早く自身の疾患に気づき、早期受診・早期診断につなげられるようにするため、「低分子医薬品の開発だけでなく、医療機器、診断薬、アプリなど多面的なアプローチを考えていきたい」とも強調した。

「女性により多い疾患」では、「会社として片頭痛に興味がある。女性に多い疾患というカテゴリーの中で、真にイノベーションをもたらす薬剤を探してコンタクトしていきたい」と述べた。
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