テセントリク、バベンチオ、リブタヨ 「重大な副作用」に免疫性血小板減少症を追記 添付文書改訂
公開日時 2025/03/06 04:50
がん免疫療法薬のテセントリク点滴静注、バベンチオ点滴静注、リブタヨ点滴静注について、「重大な副作用」の項に「免疫性血小板減少症」を追記するなどの添付文書改訂が行われた。厚生労働省医薬局医薬安全対策課が3月5日、課長名で添付文書改訂を指示したことを受けたもの。テセントリクとバベンチオは免疫性血小板減少症との因果関係が否定できない症例が集積され、リブタヨは海外添付文書の記載状況等を考慮し、使用上の注意を改訂することが適切と判断された。
このほか添付文書が改定されたのは、▽2型糖尿病に対するGLP-1受容体作動薬・トルリシティ皮下注、▽抗悪性腫瘍剤のBRAF阻害薬・タフィンラーカプセル及びMEK阻害薬・メキニスト、▽CAR発現T細胞を含有する再生医療等製品のイエスカルタ点滴静注、アベクマ点滴静注、カービクティ点滴静注、キムリア点滴静注、ブレヤンジ点滴静注――となる。トルリシティは「重大な副作用」に「肝機能障害」が追記された。
添付文書の改訂指示があった医薬品は次の通り。
▽アテゾリズマブ(遺伝子組換え)(テセントリク点滴静注、中外製薬)
▽アベルマブ(遺伝子組換え)(バベンチオ点滴静注、メルクバイオファーマ)
▽セミプリマブ(遺伝子組換え)(リブタヨ点滴静注、リジェネロン・ジャパン)
改訂概要:「重大な副作用」の項に「免疫性血小板減少症」を追記する。
改訂理由:免疫性血小板減少症関連症例を評価した。専門委員の意見も聴取した結果、アテゾリズマブ、アベルマブにおいて、免疫性血小板減少症との因果関係が否定できない症例が集積したこと、セミプリマブは、現時点では因果関係の否定できない症例の集積はないものの、海外添付文書の記載状況等を考慮し、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
免疫性血小板減少症関連症例の集積状況:国内症例について、医薬品と事象との因果関係が否定できない国内症例は、アテゾリズマブで12例、うち死亡との因果関係が否定できない症例は0例。
医薬品と事象との因果関係が否定できない海外症例は、アベルマブで1例、うち死亡との因果関係が否定できない症例は0例。なお、アテゾリズマブで29例確認されたが、専門協議において因果関係評価を行っていない。
▽デュラグルチド(遺伝子組換え)(トルリシティ皮下注、日本イーライリリー)
改訂概要:「重大な副作用」の項に「肝機能障害」を追記する。
改訂理由:肝機能障害関連の症例等を評価した。専門委員の意見も聴取した結果、本剤と肝機能障害関連事象との因果関係が否定できない症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
肝機能障害関連症例の集積状況:医薬品と事象との因果関係が否定できない国内症例は4例、うち死亡との因果関係が否定できない症例は0例。医薬品と事象との因果関係が否定できない海外症例は1例、うち死亡との因果関係が否定できない症例は0例。
▽ダブラフェニブメシル酸塩(タフィンラーカプセル、同小児用分散錠、ノバルティスファーマ)
▽トラメチニブ ジメチルスルホキシド付加物(メキニスト錠、同小児用ドライシロップ、ノバルティスファーマ)
改訂概要:ダブラフェニブの「重要な基本的注意」の項に好中球減少症、白血球減少症に関する注意を追記する。トラメチニブの「重大な副作用」の項に「好中球減少症、白血球減少症」を追記する。
改訂理由:好中球減少症及び白血球減少症関連症例を改めて評価した。専門委員の意見も聴取した結果、ダブラフェニブ及びトラメチニブと好中球減少症及び白血球減少症との因果関係が否定できない重篤症例が集積したことから、使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
好中球減少症関連症例の国内症例の集積状況:医薬品と事象との因果関係が否定できない症例はダブラフェニブで17例、トラメチニブで18例。いずれも転帰死亡症例は0例。
白血球減少症関連症例の国内症例の集積状況:医薬品と事象との因果関係が否定できない症例はダブラフェニブで4例、トラメチニブで4例。いずれも転帰死亡症例は0例。
〈CAR発現T細胞を含有する再生医療等製品〉
①アキシカブタゲン シロルユーセル(イエスカルタ点滴静注、ギリアド・サイエンシズ)
②イデカブタゲン ビクノユーセル(アベクマ点滴静注、ブリストル・マイヤーズ スクイブ)
③シルタカブタゲン オートルユーセル(カービクティ点滴静注、ヤンセンファーマ)
④チサゲンレクルユーセル(キムリア点滴静注、ノバルティスファーマ)
⑤リソカブタゲン マラルユーセル(ブレヤンジ点滴静注、ブリストル・マイヤーズ スクイブ)
改訂概要:①~⑤について、「重要な基本的注意」の項に、CAR発現T細胞を含有する再生医療等製品(以下、CAR-T細胞製品)の投与後にCAR陽性のT細胞を起源とするリンパ系腫瘍の発現が報告されている旨及び、T細胞を起源とするリンパ系腫瘍に関する注意事項を追記する。
①②④⑤について、「その他の注意」の項から、他のCAR-T細胞製品において、製品投与後にCAR陽性のT細胞を起源とするリンパ系腫瘍の発現が報告されている旨を削除する。
改訂理由:CAR陽性のT細胞を起源とするリンパ系腫瘍関連症例を評価した。専門委員の意見も聴取した結果、以下の理由から使用上の注意を改訂することが適切と判断した。
1)CAR-T細胞製品との因果関係は明確ではないものの、シルタカブタゲン オートルユーセル及びチサゲンレクルユーセル投与後にCAR陽性のT細胞リンパ腫の発現が認められた症例が複数確認された。なお、アキシカブタゲン シロルユーセル、イデカブタゲン ビクルユーセル及びリソカブタゲン マラルユーセルにおいては、CAR陽性のT細胞を起源とするリンパ系腫瘍の発現が認められたと明確に判断可能な症例はなかった。
2)シルタカブタゲン オートルユーセル及びチサゲンレクルユーセル投与後にCAR陽性のT細胞リンパ腫の発現が認められた症例が複数確認されたことを考慮すると、他のCAR-T細胞製品においても同様に、「CAR陽性のT細胞を起源とするリンパ系腫瘍」と判断される事象が発現する蓋然性が高く、CAR-T細胞製品として共通の注意喚起を行うことが適切と考えること。
CAR陽性のT細胞を起源とするリンパ系腫瘍関連症例の集積状況:医薬品と事象との因果関係が否定できない国内症例及び海外症例は、いずれも0例。