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小野薬品・滝野社長 営業利益400億円下方修正は“オプジーボ特許切れ”対策の大型投資に起因

公開日時 2024/11/01 04:49
小野薬品の滝野十一代表取締役社長COOは10月31日の2024年度第2四半期決算説明会で、24年度通期業績予想を修正したことを報告した。売上収益は期初予想比350億円増の4850億円に上方修正する一方、営業利益は同400億円減の820億円に下方修正した。主な要因は、6月に総額約24億ドルで買収した米バイオ企業デシフェラ社の損益(売上、研究開発費、販管費など)が小野薬品の連結財務諸表に加わったこと。滝野社長は営業利益予想が修正後に400億円減となったことについて、「オプジーボの特許切れを乗り越え当社がグローバルスペシャリティファーマに成長するための大型投資に起因するもの」だと述べ、28年以降の段階的な“オプジーボクリフ”対策を見据えた複数の大型投資による減益だと説明した。

◎24年度通期予想 フォシーガは60億円上方修正、CKD適応で伸長 キンロックは235億円

修正後の24年度通期業績予想は、売上4850億円(期初予想比350億円増)、営業利益820億円(同400億円減)、コア営業利益1100億円、親会社帰属純利益580億円(同330億円減)。

売上の上方修正は、フォシーガが慢性腎臓病(CKD)の適応で想定以上に伸長し、売上計画を期初予想比60億円増の890億円と設定したほか、デシフェラの買収により獲得した消化管間質腫瘍(GIST)治療薬・キンロックの7月~25年3月の9カ月分の売上予想235億円を計上したため。またブリストル・マイヤーズ スクイブ(BMS)からのオプジーボ関連のロイヤルティ収入が円安の影響で期初予想を上回ることもプラス要因となる。

営業利益の下方修正は、期初予想の時点で未織り込みだったキンロックに係る無形資産の償却費など(約150億円)や、デシフェラに係る研究開発費260億円及び販管費150億円を見込んだほか、韓国LigaChem BioSciense社との創薬提携にかかる費用などを織り込んだことが主な理由となる。

◎滝野社長 デシフェラ社の成長の実現が「私の大きな役割」

デシフェラは自社創製の経口キナーゼ阻害薬からなる製品・開発品を有する。KIT阻害薬・キンロック(一般名:Ripretinib)は、唯一のGISTの4次治療の薬剤として欧米など40か国以上で販売中。キンロックは特定の遺伝子変異(c-KIT exon11+17/18変異)を持つ2次治療で第3相臨床試験段階にあり、米FDAから画期的治療薬に指定されている。

デシフェラのパイプラインには米国で申請中のCSF-1R阻害薬・Vimseltinibもある。同剤は腱滑膜巨細胞種(TGCT)を対象とした第3相臨床試験(MOTION study)で主要評価項目及びその他副次的評価項目を達成している。滝野社長はVimseltinibについて、「米FDAから優先審査に指定されていることは期待の裏返し。(TGCTは)大きな市場ではないがアンメットニーズに裏打ちされた形で上市できるだろう」と期待感を示し、24年度末までの米国での承認取得を見込んでいると語った。欧州でも申請済みで、25年度中の承認取得を見込む。

滝野社長にとってデシフェラの買収は、自身の4月の社長就任とタイミングが重なる。滝野社長は、社長就任からの7カ月間を振り返る中で、「社長就任とデシフェラのM&Aがほぼ同時期だった。この大きな投資対象の成長を実現することが、私の大きな役割だと思っている」と抱負を述べた。そして、デシフェラの製品・開発品でグローバル展開を加速させることに意欲を見せ、「非常にやりがいのある時期に差し掛かっており、私自身、楽しみにしている」と話した。

◎24年度上期業績 再算定のオプジーボは16.5%減の626億円 フォシーガは21.7%増の437億円

同社の24年度上期の連結業績は、売上は前年同期比7.1%減の2403億円、営業利益は42.4%減の559億円となるなど減収減益だった。

製品商品売上は2.1%増の1633億円。最主力品のオプジーボは、4月の薬価改定でバベンチオの共連れで市場拡大再算定を受け、薬価が15%引き下げられた。その結果、オプジーボの売上は16.5%減(124億円減)の626億円と大きく減少した。一方、CKD適応でフォシーガは21.7%増(78億円増)の437億円と伸び、キンロックの7~9月の海外売上81億円も加わり、製商品売上としては増収を維持した。

オプジーボは肺がん適応の新規処方で若干苦戦しており、売上の中心は胃がんや食道がんの消化器系のがんとなっている。髙萩聰常務執行役員営業本部長は、「肺がんの新規処方シェアが回復傾向にある。特に胃がん領域で競合品の浸食を抑えれば、しっかりと(24年度通期計画の)1250億円は見込める」と強調した。

◎ロイヤルティ・その他収入は22%減

売上を構成する「ロイヤルティ・その他」の収入は22.0%減の770億円だった。前年同期にアストラゼネカとの特許関連訴訟の和解に伴う一時金収入170億円を計上した反動減や、米メルクなどからのPD-1関連ロイヤルティ収入がロイヤルティ料率の低下に伴い減少したことが響いた。

PD-1関連ロイヤルティ収入に関しては、米メルクの抗PD-1抗体・キイトルーダの販売許諾に係るロイヤルティ収入の料率が、23年12月までの全世界売上の1.625%から、24年1月以降0.625%に引き下げられた。スイス・ロシュからの抗PD-L1抗体・テセントリクに係るロイヤルティ収入も、料率は非開示だが、1月から率が下げられた。メルク、ロシュからのロイヤルティ収入は26年末で終了する。オプジーボに関するBMSからのロイヤルティ収入は、24年から段階的に減少し、30年にゼロとなる見通し。

上期の営業利益の2ケタ減益は、減収のほか、デシフェラの買収により7~9月の研究開発費や販管費などの費用を計上したことが主な要因となる。

◎髙萩営業本部長 MR数は「適宜見直しが必要」 国内主力品の段階的特許切れ見据え

25年度から段階的に国内主力品の特許切れが続くが、今後の営業体制やMR数について髙萩営業本部長は、「適宜見直しが必要」との考えを示した。具体的な製品名には触れなかったが、売上規模や対象疾患、取扱製品、新製品/導入品、適応追加を勘案して、「適正な人員数を考えていかないといけない」と語った。滝野社長は、今後の早期退職者募集の可能性について、「今のところは全く計画していない」と話した。

25年度にフォシーガの2型糖尿病適応、26年度までに2型糖尿病薬・グラクティブ、28年度にフォシーガの慢性腎臓病(CKD)適応の特許切れが控えており、国内収益にマイナスインパクトを与えるイベントが続く見通しになっている。

同社の国内MR数は約820人だが、前年から約100人減っている。減員のほとんどがプライマリー担当。同社はこれまでに、製品構成の変化やデジタルによる情報活動が増えたことを踏まえた最適人員数を検討した結果と説明しているが、フォシーガの2型糖尿病適応などの特許切れが近いことも理由のひとつとみる向きがある。

【連結業績 (前年同期比) 24年度予想(前年同期比)】
売上高2403億3900万円(7.1%減) 4850億円(3.5%減)←修正前4500億円
営業利益558億8100万円(42.4%減) 820億円(48.7%減)←修正前1220億円
親会社帰属純利益416億4100万円(44.1%減) 580億円(54.7%減)←修正前910億円

【国内主要製品売上高(前年同期実績) 24年度予想、億円】
オプジーボ 626(750) 1250 
フォシーガ 437(359) 890←修正前830
オレンシア 135(130) 270
グラクティブ 96(108) 185
ベレキシブル 52(50) 100 
カイプロリス 46(46) 95
パーサヒブ 42(41) 85
オンジェンティス 38(31) 75
*仕切価ベース

ロイヤルティ・その他 770(988) 1520←修正前1460
*BMSからオプジーボに係るロイヤルティ収入が24年度上期564 億円(23 年度上期474億円)――、メルクからキイトルーダに係るロイヤルティ収入が同128億円(256億円)――がそれぞれ含まれる。
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