【MixOnline】パンくずリスト
【MixOnline】記事詳細

モデルナ 湘南アイパークにmRNA原薬工場を建設 製造開始は「2~3年以内」 デュアルユース設備に

公開日時 2024/10/18 04:52
米モデルナのステファン・バンセルCEOは10月17日、神奈川県の湘南ヘルスイノベーションパーク(湘南アイパーク)で記者会見し、湘南アイパークにmRNA原薬工場(以下、新工場)を建設し、「2~3年以内」に製造を開始する計画を明らかにした。新工場はデュアルユース設備を持ち、平時はバイオ医薬品を、有事は必要なワクチンを製造する。また、無細胞DNA合成と増幅技術に強みを持つmRNA医薬品の研究開発支援を行うモデルナ・エンザイマティクス(旧オリシロ・ジェノミクス、本社:東京都江東区)も湘南アイパークに2025年に移転させる。これによりmRNA医薬品の研究開発から生産までを湘南アイパーク内で展開できるようにする。

バンセルCEOは会見で、「(湘南アイパークで)我々の持つテクノロジースキルと、様々な日本のサイエンティスト、各国の方々と協業させていただくことを楽しみにしている。日本の自治体、政府関係者と協業できることも大変ありがたいこと」とコメントした。そして、「様々な素晴らしいバイオテクノロジーのエコシステムを提供させていただく一助になりたいと思っている」と述べた。

新工場の生産能力に関しては、「柔軟性を持った工場になる」、「私たちは需要を満たすことができると考えている」と話すにとどめ、具体的な生産量は言及しなかった。ただ、19年までは1年かけて商業生産した製品がなかった中で、コロナ禍に入って新型コロナワクチン・スパイクバックスを10万未満のドーズを生産し、21年にはその1万倍の10億ドーズを生産した経験を紹介。「(モデルナが持つ技術により)迅速にスケールアップできる。迅速なリードタイムで生産できる」と自信をみせた。

◎経産省のワクチン生産体制強化のための製造拠点等整備事業の一環で工場建設

今回の新工場の建設は、経済産業省の「ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業」の一環で、同省からの補助金を受ける予定。新工場はデュアルユース設備を有する国内製造拠点となる。同事業は、コロナ禍の際に新型コロナワクチンを全量輸入した経験を踏まえた、政府のワクチン開発・生産体制強化戦略に基づくもの。モデルナは23年9月、同事業の2次公募に採択されていた。

◎インフルエンザと新型コロナの混合ワクチン「mRNA-1083」 27年上市を目指して開発中

バンセルCEOは日本での事業戦略も披露した。日本でも、呼吸器系に対するmRNAワクチン、サイトメガロウイルス(CMV)やノロウイルスに対するmRNAワクチン、がん対するmRNA治療薬、メチルマロン酸血症(MMA)やプロピオン酸血症(PA)といった希少疾患に対するmRNA治療薬――を開発中だと説明した。「今後3年間、モデルナには“私たちのミッション”達成のチャンスがある」と述べ、“mRNA医薬で人々に最大の可能性を”というミッションを日本でも達成していくとした。

モデルナ・ジャパンによると、これらの国内開発パイプラインのうち、呼吸器系ワクチンに位置付けているインフルエンザワクチンと次世代新型コロナワクチンによる混合ワクチン「mRNA-1083」(開発コード)は第3相臨床試験(P3)段階にあり、「27年の上市を目指して開発中」と説明した。呼吸器系ワクチンには5月に承認申請したRSウイルス感染症予防ワクチン「mRNA-1345」もあり、承認された場合、田辺三菱製薬とコ・プロモーションする予定になっている。モデルナ・ジャパンは、mRNA-1345は将来的には湘南アイパークの新工場で生産することになると説明した。

◎NSCLCに対するmRNA治療薬も国内P3に

CMVワクチンやノロウイルスワクチンはいずれもP3を実施中。がんに対するmRNA治療薬は、非小細胞肺がん(NSCLC)に対するmRNA治療薬のことで、「個別化ネオアンチゲン療法(INT)により、がん患者さんの治療に大きく貢献」できるとしている。このがん治療薬もP3段階にある。

◎経産省・下田課長 湘南のモデルナが米国ボストンなどへの「ゲートウェイになり得る」

この日の会見では、経済産業省や厚生労働省の官僚を交えたパネルディスカッションが行われた。経産省の下田裕和・生物化学産業課長は、モデルナが湘南アイパークに拠点を設ける意義として、▽スタートアップエコシステムの充実、▽部素材やバイオタンクなどの生産設備の海外依存から国内企業への転換といったサプライチェーンの充実、▽医薬品・ワクチンを国内生産できる能力を持つことによる経済安全保障の確保――を列挙した。

さらに、ライフサイエンス領域で世界最大のエコシステムを形成している米国ボストンを挙げながら、「ボストンのエコシステムとつながるにはやはり人づて、人脈、ヒトです」と強調。ボストンに日本からも人材を派遣して人脈作りから始める必要がある中で、「モデルナが湘南に来てくれた」とし、「まずはモデルナとつながって、そこから米国や海外に行くという、(モデルナが)ゲートウェイになり得るという点は非常に大きい。湘南アイパークの地を通じて世界とつながることができる」との認識も示した。

◎厚労省・水谷課長 日本の創薬エコシステムの加速、「モデルナが起爆剤になると期待」

厚労省の水谷忠由・医政局医薬産業振興・医療情報企画課長は、日本の創薬エコシステムに触れ、「(アカデミアなどによる)研究を研究だけで終わらせることなく、医薬品やワクチンに実用化し、それが我々の健康や生命を守るということにつながるように、みんなで知恵をしぼることが大事だ」と強調した。そして、「このような取り組みが世界とつながることになれば、新しい形で創薬の地として日本を位置付けることができる。モデルナの今回の取り組みが起爆剤になると期待している」と述べ、モデルナグループの湘南アイパークへの入居が日本の創薬エコシステム構築の加速につながることに期待を寄せた。

また、24年度薬価制度改革でイノベーション評価を充実させたことを紹介しながら、「イノベーション評価に重点を置いた改革の流れを続け、加速させるためには、こうした改革によってイノベーションへの投資が進んでいることが目に見えること(が大事)。製薬企業にはぜひこうした動きを見せてほしいと言っている」と改めて指摘した。
プリントCSS用

 

【MixOnline】コンテンツ注意書き
【MixOnline】関連ファイル
関連ファイル

関連するファイルはありません。

【MixOnline】キーワードバナー
【MixOnline】記事評価

この記事はいかがでしたか?

読者レビュー(2)

1 2 3 4 5
悪い 良い
プリント用ロゴ
【MixOnline】誘導記事

一緒に読みたい関連トピックス

記事はありません。
ボタン追加
バナー

広告

バナー(バーター枠)

広告

【MixOnline】アクセスランキングバナー
【MixOnline】ダウンロードランキングバナー
記事評価ランキングバナー