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武田薬品 AIやデジタル技術を活用した製造DXで「予測型工場」実現 医薬品の品質・安定供給を強化

公開日時 2024/09/06 06:00
武田薬品は、AIを活用したビッグデータ解析やデジタル技術を活用した製造DXの推進により、医薬品の品質と安定供給に向けた取り組みを強化している。同社はデータアナリティクスによる「予測型工場」を実現することで、原薬の収量改善や製造設備故障の未然防止などに効果をあげている。武田薬品グローバルマニュファクチャリング&サプライ/グローバルクオリティデータデジタル&テクノロジーヘッド-ジャパンの石丸宏氏は9月5日に開いた製造DX記者発表会で、「我々はデータを集めて、マシンラーニング(機械学習)やAIを使うことで、未来を予測し、必要のない障害を迅速に回避できれば、患者さんにいち早く迅速に高品質なお薬が提供できる。そのような予測型工場を目指す」と強調した。

製造DXの取り組みは同社のグローバルプログラム「Factory of the future」に位置づけられるもの。医薬品製造の効率と安定性の向上、品質・コンプライアンス強化、付加価値の創造を促進させるプログラムで、「標準的なソリューション、標準的な働き方、ベストプラクティスに昇華させ、各工場の現場に適用させることを狙っている」(石丸氏)という。

柱の一つに、「デジタルと自動化」を掲げる。データサイエンスとデジタル技術への投資を加速させている。ロボットを活用した自動化やAI、機械学習やデジタルツインの活用、ビッグデータ解析などを活用することに加え、「データを統合し、誰もがデータが使えて分析できる環境を作り、予測できる力を身につける」ことに注力する。一方で、「あくまでもツールなので、従業員は創造的で革新的な、より価値の高い業務に移行することを推進することを狙いとしている」(石丸氏)と強調した。

◎光工場 予測モデルを通じて製品の収量を改善

成果も上がり始めている。山口県光工場では、温度や圧力などのパラメータをビッグデータとして多変量解析する。さらに、物理化学の理論モデルに基づくシミュレーションモデルを掛け合わせて、予測モデルを開発した。このモデルにより、2製品の収量を改善。ある製品では、原因として特定した冷却水バブル制御を最適化することで4%、異なる製品では原料投入速度を最適化することで1%収量が改善したという。

武田薬品のグローバルマニュファクチャリング&サプライジャパン戦略企画部データサイエンスグループヘッドの深川俊介氏は、「一度モデルができれば、色々な製造条件で結果がどうなるかという様々なデータセットを作ることができる。データセットと実測のデータを組み合わせることで、予測モデルを再構築することで幅広い製造条件で高い精度を持つ予測モデルの再構築にもつながる」と説明。「こういったモデルに、製造工程から出てくるリアルタイムのデータを接続して、タイムリーに現場の作業員の方々に、このような製造条件の設定にすればより高い収率が安定的に出せるという、レコメンデーションを出すような機能や、製造装置自体が自動的に最適な運転条件を維持してくれるようなことが実現できるよう目下頑張っている」と今後の展望についても語った。

従来は収量の悪化の因子を特定するためには、一つひとつのパラメータに対して検証する作業を行っていたため、時間がかかっていたが、特定する工数の削減にもつながった。深川氏は、「高品質でリアルタイムなデータは、非常に重要になる。今、現場で何が起きているかを把握し、改善機会を特定し、改善策の意思決定を行うということを迅速に回している」と説明。「統合データ基盤」を整備しており、MESやLIMS、品質イベント管理などのデータを横断的に利用できる仕組みを構築も進める。

◎スイス・ヌーシャテル工場 機械学習で原因を特定し改善 “セルフサービス分析”導入

スイスのヌーシャテル工場では、製造現場の技術者が機械学習モデルを作成し、原因特定して改善できる、“セルフサービス分析”を導入。調査工数が平均6分の1まで削減した。大阪工場・光工場では、製造設備の故障の予兆を察知するような取り組みも進める。

大阪工場では、蒸留水の使用量を監視し、改善機会を特定。蒸留水を年間45万リットル、都市ガスを年間7900㎥以上、従来比約27%の削減を実現した。深川氏は、「蒸留水が枯渇するようなこともなくなり、当初計画していた設備の追加投資も必要なくなった」とメリットを強調した。

◎無菌作業のトレーニングにVR・ARも活用

無菌作業のトレーニングにVR・ARも活用する。これまでは、文書による教育が中心だったが、現実に近い環境での実技トレーニングが可能になる。無菌室では菌が空中に舞わないよう、ゆっくり動くことが必要になるが、センサー技術により、実際のスピードを体感で知ることができる。OJTで4時間かかっていたことが30分間に短縮。トレーニング時間は過去2年間で1万時間以上削減するなど効果をあげた。当初は初期教育で活用していたが、現在はGMPトレーニングに組み込み、活用を進めるという。


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