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協和キリン・宮本社長 低分子創薬研究の縮小「グローバル化、ビジョン見据え決断」 造血幹細胞遺伝子に集中投資

公開日時 2024/08/05 04:50
協和キリンの宮本昌志代表取締役社長CEOは8月2日、2024年12月期第2四半期決算説明会で、「グローバル化を進め、2030年のビジョン実現に向けた研究体制へ移行するため、リソース配分を見直して、自社における低分子創薬研究の縮小を決定した」と述べた。造血幹細胞遺伝子治療など「革新的モダリティ」に集中的に投資を行う方針。宮本社長は、「転換期」にあると明言し、人員についても「社員のキャリア開発の選択肢を広げ、社外への転進を希望する社員に対しては転進に向けた最大限の支援を行って希望退職者の募集を行うことを決定した」ことも説明した。

2030年に向けたビジョンで「日本発のグローバル・スペシャリティファーマ」を掲げる同社だが、戦略「Story for Vision 2030」では重点領域に骨・ミネラル、血液がん・難治性血液疾患、希少疾患を据えるほか、革新的モダリティの強化、研究組織のグローバル化、研究組織の再編を打ち出している。低分子創薬研究の縮小も、ビジョン実現に向けた一環に位置付ける。再編に伴い、研究本部と生産本部CMC研究センター、一部の品質本部グローバルCMC品質 ユニットを対象とする希望退職制度を期間限定で導入するとしている。

◎山下CMO 低分子医薬は「我々自身もアドバンテージ見いだせない」


山下武美取締役専務執行役員CMOは、「我々は、よりフォーカスした領域でハイレベルな研究をしていく、あるいはアンメットメディカルニーズに応えることができる研究、あるいはそういったモダリティにより集中していこうということ」と説明。「低分子医薬を全く否定しているわけではないが、いわゆる低分子をスクリーニングして、ケミストリーで低分子の創薬をやることに関しては、我々自身もアドバンテージがなかなか見いだせない。そこを縮減し、より将来アンメットメディカルニーズに応えられるようなモダリティにフォーカスしていく。それに応じてリソースもシフトして、強みをつくっていきたい」と述べた。

宮本社長は、「すでに低分子のリソースは相当低い状況にある。次のモダリティに使えるものは残すが、いわゆる伝統的な、例えばハイスループットシステムでスクリーニングし、メディシナルケミストリーで磨くようなところはかなり減らしてしまおうということ」と説明した。一方で、これまでリソース配分が低かった造血幹細胞遺伝子治療については、「よりリソースを振り向ける必要がある」と強調し、「施策により、アロケーションを変えるということだ」と説明した。

◎中国での自販体制から撤退 APACでの事業再編進める

説明会では、2030年ビジョンに向けた戦略に基づき、同社はAPACでの事業再編も進めることにも言及した。中国では、現地法人(孫会社)の全持分を香港・WinHealth社に譲渡し、特許切れ製品5品目やグローバル2製品(Crysvita、Poteligeo)の販売はライセンス契約を結ぶ。中国以外のAPACリージョン6か国・地域(韓国、台湾、シンガポール、マレーシア、タイ、香港/マカオ)では、特許切れ製品7品目の販売についてライセンス契約を結んだDKSH Holdingが担う。グローバル2製品は韓国、台湾、オーストラリアでは協和キリンが自社販売を続けるが、その他の4か国・地域ではDKSH社にライセンスを付与する。

APAC事業再編について、宮本社長は「APACで働く5、600人の雇用と、今ある薬をこれからもお届けしていくための総合的な判断。製品や事業をいかに維持、発展させるかを考えると、地場のパートナーに任せるのがベストだ」と強調した。また、国ごとに異なる事業方針になった理由として「保険償還制度やヘルスケアの仕組みを見た上で方法を決めた」と述べた。業績への影響は、売上が減少する一方で販売費なども減ることで「これまでと大きく変わらないと予想している」(宮本社長)とした。

◎2024年上半期は前年比16.9%増の増収増益 通期業績は売上高、コア営業利益を上方修正

2024年12月期第2四半期業績は、売上高が前年同期比16.9%増の2329億7400万円、コア営業利益が同17.8%増の441億3600万円の増収増益だった。X染色体連鎖性低リン血症治療薬Crysvita(国内製品名:クリースビータ)と血液がん治療薬Poteligeo(国内製品名ポテリジオ)のグローバル戦略品が売上を牽引した。為替影響を考慮して2024年通期予想は売上高(4730億円→4920億円)、コア営業利益(850億円→920億円)上方修正したことも発表した。

海外売上でみると、Crysvita(国内製品名:クリースビータ)は、北米での市場浸透とEMEAでの上市国や適応の拡大で前年同期比38%増の855億円に伸長。Poteligeo(国内販売名ポテリジオ)も北米、EMEA(欧州・中東・アフリカ)で市場浸透を進め、45%増の181億円と伸びた。また、Orchard社の異染性白質ジストロフィー(MLD)治療薬Libmeldy/Lenmeldyは14億円だった。

国内市場では、最主力品の持続型G-CSF製剤ジーラスタにバイオシミラーが参入し、前年同期比30%減の105億円となったが、「想定の範囲内」(宮本社長)としている。

【連結業績(前年同期比) 24年予想(前期比)】
売上収益 2329億7400万円(16.9 %増) 4920億円(11.3%増)
コア営業利益 441億3600万円(17.8%増) 920億円(4.9%減)
親会社所有者帰属四半期利益 377億7700万円(74.5%増) 680億円(16.2%減)

【国内主要製品売上(前年同期実績)24年予想、億円】
クリースビータ 54(48)129
ポテリジオ 10(9)19
ネスプ 14(15)28
ネスプAG 56(69)117
ダーブロック 57(42)122
フォゼベル 17(-)33
レグパラ 5(8)9
オルケディア 49(50)117
ロカルトロール 12(14)28
オングリザ 17(22)30
コニール 6(7)12
ジーラスタ 105(150)205
フェントス 15(16)30
リツキシマブBS 38(44)79
ロミプレート 65(57)132
アレロック 27(31)36
パタノール 10(15)13
ドボベット 39(39)71
ルミセフ 13(13)26
ノウリアスト 34(37)71
ハルロピ 22(21)52
デパケン 13(14)24

【海外主要製品売上(前年同期実績)24年予想、億円】
Crysvita 855(619)1878
うち北米 587(460)
EMEA 254(153)
アジア/オセアニア 13(6)
Poteligeo 181(125)348 
うち北米 141(94)
EMEA 39(31)
アジア/オセアニア 1(-)
Libmeldy/Lenmeldy 14(-)49
Nourianz 35(35)91
Nesp 57(44)107
Regpara 24(19)39
Neulasta/Peglasta 24(28)48
Gran 37(32)72

技術収入 243(184)490
うち、ベンラリズマブ ロイヤルティ 144(116)―
 
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