RSウイルス感染症予防薬・ベイフォータスなど新薬9製品承認へ 薬食審・第二部会が了承
公開日時 2024/03/05 04:50
厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は3月4日、アストラゼネカ(AZ)の幅広い乳幼児を対象としたRSウイルス感染症予防薬・ベイフォータス筋注(一般名:ニルセビマブ)など、新薬9製品の承認の可否を審議し、承認を了承した。
この中には、AZのホルモン受容体陽性乳がんに対するファーストインクラスのAKT阻害剤・トルカプ錠(カピバセルチブ)や、アステラス製薬の胃がんに対するファーストインクラスの抗Claudin 18.2抗体・ビロイ点滴静注用(ゾルベツキシマブ)が含まれる。
◎緊急承認の経口新型コロナ治療薬・ゾコーバの本承認も了承
2022年11月に緊急承認された塩野義製薬の経口新型コロナ治療薬・ゾコーバ錠の本承認も了承された。いずれも3月中に正式承認される見通し。
【審議品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽ベイフォータス筋注50mgシリンジ、同筋注100mgシリンジ(ニルセビマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「①生後初回又は2回目のRSウイルス感染流行期の重篤なRS ウイルス感染症のリスクを有する新生児、乳児及び幼児における、RSウイルス感染による下気道疾患の発症抑制、②生後初回のRSウイルス感染流行期の①以外のすべての新生児及び乳児におけるRSウイルス感染による下気道疾患の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
RSウイルス感染症の発症を抑制する医薬品として、抗RSウイルス抗体・シナジス筋注液が承認されているものの、投与対象者が早産児や先天性心疾患、免疫不全症等を有する新生児及び乳幼児等に限定されている。ベイフォータスは、生後初回のRSウイルス感染流行期の幅広い乳幼児に予防効果を示すようにデザインされた抗RSウイルス抗体。
ベイフォータスの用法・用量は「生後初回のRSウイルス感染流行期には、通常、体重5kg未満の新生児及び乳児は50mg、体重5kg以上の新生児及び乳児は100mgを1回、筋肉内注射する。生後2回目のRSウイルス感染流行期には、通常、200mgを1回、筋肉内注射する」。
海外では、22年10月に欧州で、23年7月に米国で承認されている。なお、国内では、新生児及び乳児におけるRSウイルス感染症予防ワクチンとして24年1月にアブリスボ筋注用が承認されている。
▽ゾコーバ錠125mg(エンシトレルビルフマル酸、塩野義製薬):「SARS-CoV-2による感染症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間について、この日の部会で小児開発を考慮して2年延長し10年とすることが了承された。
SARS-CoV-2の3CLプロテアーゼ阻害剤。22年11月に緊急承認されており、塩野義製薬は、1年と設定された緊急承認期限内の23年6月に本承認に向けて改めて承認申請を行った。
第二部会事後ブリーフィングで厚労省の担当者は「緊急承認の時点では主要評価項目と一部の副次評価項目のみが提出されていたので、今回はそれ以外のものが提出された。審査の結果、基本的には用法・用量など緊急承認時点の内容を引き継いでおり、大きな変更はない」と説明した。
海外では、23年12月時点で承認されている国・地域はない。
▽タイコバック水性懸濁筋注0.5mL、同小児用水性懸濁筋注0.25mL(組織培養不活化ダニ媒介性脳炎ワクチン、ファイザー):「ダニ媒介性脳炎の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
ダニ媒介性脳炎の発症予防ワクチン。欧米を中心に広く承認されており、厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議において医療上の必要性が高いと評価され、同省がファイザーに開発要請を行った経緯がある。
対象疾患のダニ媒介性脳炎は、重度の急性臨床経過をたどり、罹患期間が極めて長い急性ウイルス性疾患。ファイザーの承認申請時資料によると、国内では、これまでに北海道で5例報告されているが、感染の確定診断用の検査キットが利用できない等の理由から、実態はまだ十分に把握されていないという。
▽プレベナー20水性懸濁注(肺炎球菌莢膜ポリサッカライド-CRM197結合体、ファイザー):「小児における肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、8、9V、10A、11A、12F、14、15B、18C、19A、19F、22F、23F及び33F)による侵襲性感染症の予防」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
対象疾患である侵襲性肺炎球菌感染症は、肺炎球菌により引き起こされる疾患群であり、菌血症、敗血症、髄膜炎などが含まれる。現在の定期接種ワクチンである13価肺炎球菌結合型ワクチン・プレベナー13水性懸濁注に7血清型(8、10A、11A、12F、15B/C、22F、33F)を加えたことにより、さらに広範な血清型による侵襲性肺炎球菌感染症を予防することが期待されている。
用法・用量は「・初回免疫:通常、1回0.5 mLずつを3回、いずれも27 日間以上の間隔で皮下又は筋肉内に注射する。・追加免疫:通常、3回目接種から60日間以上の間隔をおいて、0.5 mLを1回皮下又は筋肉内に注射する」。
23年10月時点で欧米を含む海外で承認されている。なお、国内では、小児(健康小児)に対する肺炎球菌ワクチンとして、15価のバクニュバンス水性懸濁注シリンジが23年6月に承認されている。
▽ミチーガ皮下注用30mgバイアル(ネモリズマブ(遺伝子組換え)、マルホ):「既存治療で効果不十分な下記疾患、アトピー性皮膚炎に伴うそう痒、結節性痒疹」を効能・効果とし、小児用量を追加する新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。再審査期間は、シリンジ製剤の残余(30年3月27日まで)。
抗IL-31受容体A抗体。22年3月に「アトピー性皮膚炎に伴うそう痒」の効能・効果で承認されており、成人及び13歳以上の小児に対する用法・用量が設定されている。小児用量の追加は「通常、6歳以上13歳未満の小児には1回30mgを4週間の間隔で皮下投与する」。
新効能となる結節性痒疹は、慢性痒疹の一病型であり、そう痒を伴う暗褐色で角化性の硬いドーム状又はいぼ状の結節性皮膚病変が四肢を主体に分布する難治性の皮膚疾患。その用法・用量は「通常、成人及び13歳以上の小児には初回に60 mgを皮下投与し、以降1回30 mg を4週間の間隔で皮下投与する」。
海外では、24年1月時点で承認されている国・地域はない。
▽サルグマリン吸入用250µg(サルグラモスチム(遺伝子組換え)、ノーベルファーマ):「自己免疫性肺胞蛋白症」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
対象疾患である自己免疫性肺胞蛋白症は、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子に対する自己抗体の過剰な産生により肺胞内に不溶性の物質が蓄積することで、呼吸不全が引き起こされる指定難病。2018年の特定医療費受給者証所持者数は148人となっている。
「海外では注射用の製剤として使用されているが、今回の適応について吸入療法に用いるというものでは承認されている国はない」(同省)という。
▽トルカプ錠160mg、同錠200mg(カピバセルチブ、アストラゼネカ):「内分泌療法後に増悪したPIK3CA、AKT1又はPTEN遺伝子変異を有するホルモン受容体陽性かつHER2 陰性の手術不能又は再発乳がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
ファーストインクラスのAKT阻害剤。対象疾患であるHR陽性乳がんは、最も一般的な乳がんのサブタイプであり、乳がんの65%以上がHR陽性かつHER2低発現または陰性と考えられている。また、PIK3CA、AKT1およびPTENの変異は頻繁に起こり、HR陽性進行乳がん患者の最大50%に認められるという。
用法・用量は「フルベストラントとの併用において、通常、成人には1回400mgを1日2回、4日間連続して経口投与し、その後3日間休薬する。これを1サイクルとして投与を繰り返す。なお、患者の状態により適宜減量する」。
海外では、23年11月に米国で承認されている。
▽ビロイ点滴静注用100mg(ゾルベツキシマブ(遺伝子組換え)、アステラス製薬):「CLDN18.2陽性の治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。再審査期間は8年。
ファーストインクラスの抗Claudin 18.2抗体。承認申請は、第3相SPOTLIGHT試験(mFOLFOX6療法との併用療法)およびGLOW試験(CAPOX療法との併用療法)の結果に基づき行われた。両試験において、スクリーニングされた患者の約38%が、免疫組織化学染色において腫瘍細胞の75%以上で中等度から強度の染色強度を示し、Claudin 18.2陽性と判定された。
用法・用量は「他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人には初回は800mg/m2(体表面積)を、2回目以降は600mg/m2(体表面積)を3週間間隔又は400mg/m2(体表面積)を2週間間隔で2時間以上かけて点滴静注する」。
アステラス製薬は24年1月に、米国での承認審査に関して、FDAからゾルベツキシマブの医薬品製造受託機関の施設を査察した結果、未解決の指摘事項があるため、審査終了目標日(24年1月12日)までに承認できない旨の審査完了報告通知を受領したことを発表している。第二部会事後ブリーフィングで厚労省担当者は「PMDAの評価においては、その点も認識した上で、品質について問題ないという評価をしている」と述べた。
海外では、23年10月時点で承認されている国・地域はない。
▽エルレフィオ皮下注44mg、同皮下注76mg(エルラナタマブ(遺伝子組換え)、ファイザー):「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」を効能・効果とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。再審査期間は10年。
抗BCMA/CD3二重特異性抗体製剤。皮下投与であり、静脈内投与よりも高い利便性を有している。承認申請は、国際共同第2相MagnetisMM-3試験の結果等に基づく。同試験には、プロテアソーム阻害剤、免疫調節薬および抗CD38抗体の少なくとも3クラスの治療薬を含む多くの前治療歴がある患者が参加した。
用法・用量は「通常、成人には、1日目に12mg、4日目に32mgを1回皮下投与する。8日目以降は1回76mgを1週間間隔で皮下投与する。なお、24週間以上投与し、奏効が認められている場合は、投与間隔を2週間間隔とすること」。
海外では、欧米で承認されている。
【報告品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
報告品目は医薬品医療機器総合機構(PMDA)の審査段階で承認して差し支えないとされ、部会では審議せず、報告のみでよいと判断されたもの。
▽アブリスボ筋注用(RSV-A融合前Fタンパク質・RSV-B融合前Fタンパク質、ファイザー):「60歳以上の者におけるRSウイルスによる感染症の予防」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。再審査期間は残余(32年1月17日まで)。
24年1月に「妊婦への能動免疫による新生児及び乳児におけるRSウイルスを原因とする下気道疾患の予防」の効能・効果で承認されている。60歳以上に対する用法・用量は「抗原製剤を専用溶解用液全量で溶解後、1回0.5mLを筋肉内に接種する」。
なお、国内では60歳以上のRSウイルス感染症予防ワクチンとして、23年9月にアレックスビー筋注用が承認されている。
▽キイトルーダ点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
抗PD-1抗体。承認申請は、国際共同第3相KEYNOTE-859試験(化学療法(フッ化ピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤)との併用療法での1次治療)の結果に基づく。用法・用量は「他の抗悪性腫瘍剤との併用において、通常、成人には、1回200mgを3週間間隔又は400mgを6週間間隔で30分間かけて点滴静注する」。
▽フェソロデックス筋注250mg(フルベストラント、アストラゼネカ):「乳がん」を効能・効果とする新用量医薬品。
同日の第二部会を通過したアストラゼネカのトルカプ錠との併用に関するもの。
▽5FU注250mg、同注1000mg(フルオロウラシル、協和キリン):「治癒切除不能な進行・再発の胃がん」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
同日の第二部会を通過したMSDのキイトルーダ(胃がん)との併用に関するもの。
▽シナジス筋注液50mg、同筋注液100 mg(パリビズマブ(遺伝子組換え)、アストラゼネカ):「RSウイルス感染流行初期において、24カ月齢以下の肺低形成、気道狭窄、先天性食道閉鎖症、先天代謝異常症又は神経筋疾患を伴う新生児、乳児および幼児におけるRSウイルス感染による重篤な下気道疾患の発症抑制」を効能・効果とする新効能医薬品。優先審査。
海外では、23年12月時点で欧米を含め承認されている。