不採算品再算定 24年度改定も臨時・特例対応継続も乖離率大きな品目は除外へ 乖離率9%超品目は14%
公開日時 2023/12/14 06:31
厚生労働省は12月13日の中医協薬価専門部会に、不採算品再算定について2024年度薬価改定でも臨時・特例的に製薬企業から希望のあった全品目に適用することを提案した。一方で、23年度薬価改定で不採算品再算定が適用された品目のうち、乖離率が9%超と全品目の平均乖離率(6%)を大きく超えた品目が全体の14.0%だったとのデータを示した。診療・支払各側から乖離率の大きい品目については、不採算品再算定を適用除外とすべきとの声が相次いだ。支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「前回の特例対応のベースとなった22年度薬価調査の平均乖離率7%を超えるものについて除外することが妥当」との考えを示した。
◎24年度改定でも不採算品再算定の臨時・特例的な対応継続を提案
不採算品再算定は、「当該既収載品と組成、剤形区分及び規格が同一である類似薬がある場合には、全ての類似薬について該当する場合に限る」とのルールがあり、算定取得の一つのハードルとなっている。医薬品の供給不足が続く中で、23年度改定では、この要件を満たさなくても、製薬企業が不採算だと手あげした全品目に臨時・特例的に不採算品再算定を適用。328成分、1100品目の薬価が引き上げられた。
一方で、今年10月でも限定出荷・供給停止は医薬品全体の24%にのぼるなど、供給不安が継続している状況にある。原材料価格の高騰が続く中で、厚労省は「現在企業の希望を整理する段階だが、前回より企業からの希望が多くなっている状況」と説明。このため、厚労省は、「不採算品再算定の対象にならなかった品目の製造販売が継続できなくなってしまうと、安定供給にさらに支障がでることも否定できない」として、24年度改定でも23年度改定に続き、企業が希望した全品目を臨時・特例的に不採算品再算定を適用することを提案した。
◎不採算品再算定適用品目の乖離率12.0%超の品目は6.0%、9.0~12.0%は8.0%
厚労省は、薬価調査の結果、23年度改定で不採算品再算定が適用された1100品目の平均乖離率は3.3%とのデータを示した。全医薬品の平均乖離率である6.0%未満の品目は65.0%を占めた。医療上の必要性が高い品目が多く、適正な価格での流通が求められる中で、大半の品目が平均乖離率以下、または平均乖離率に近い値となった。ただし、平均乖離率を大きく超えた乖離率9.0%超の品目も全体の14.0%あったとのデータを示した。なお、乖離率が12.0%超の品目は6.0%、9.0~12.0%は8.0%、6.0~9.0%は20.9%だった。
◎支払側・松本委員「平均乖離率7%超は除外が妥当」 診療・支払各側から除外求める声
乖離状況を踏まえた、不採算品再算定の適用除外が論点となる中で、乖離率が大きい品目について、不採算品再算定を適用すべきではないとの声が診療・支払各側から相次いだ。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「乖離率が大きい品目を適用対象から除外することは適切」と述べた。
診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、臨時・特例的な不採算品再算定の適用に理解を示したうえで、「せっかく不採算品再算定を適用したとしても、すぐに安売りされてしまうのであれば意味がない。乖離率9%を超えるような品目はさすがに行き過ぎではないか。平均乖離率を大きく超えた品目については、不採算品再算定の対象から除外することに異論はない」と述べた。また、「総価取引などの流通上の課題も指摘されているので、その是正に向けた対応が必要」との考えも示した。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「原則、ルールを超えた対応はすべきではないというのが基本的な認識だ。しかし、現行ルールに限った運用では、安定供給にさらに支障が出ることが否定できないことや、23年度に特例対応した品目の平均乖離率は3.3%と、全体平均のおおむね半分程度になっており、薬価差が縮小する中でも、特に手堅く販売をしているという実態を考慮することも一定程度は理解できる」と述べた。そのうえで、「仮に特例対応を再度実施する場合には、前回の特例対応のベースとなった22年度薬価調査の平均乖離率7%を超えるものについて除外することが妥当」との考えを示した。
さらに、「物価高の影響があるとしても、こうした特例対応を繰り返せば、最低薬価の問題と同様に、値引きをしても薬価が戻るという悪循環に陥る懸念がある」として、「そもそもの原因が一種の制度疲労にあるということなら、医薬品流通の課題や調整幅の取り扱いを含め、薬価改定ルールの根本的な見直しについて議論すべき」との考えも示した。
◎石牟禮専門委員「メーカーの意図とも異なる取引が行われる事例もある」
業界代表の石牟禮武志専門委員(塩野義製薬渉外部長)は、「現下の原材料等の高騰が続いていることを踏まえ、薬価の下支えである不採算品再算定については確実に適用していただきたい」とう要望。乖離率の状況については、「メーカーの意図とも異なる取引が行われる事例もあると認識している。そのような状況も勘案いただき、安定供給に尽力する企業の品目について不採算品再算定が適用されるようご配慮いただきたきたい」と訴えた。