サワイGHD・澤井会長 為替影響、原薬価格上昇を危惧 通期で原材料費と委託費高騰で約22億円の影響も
公開日時 2024/11/12 04:52
サワイグループホールディングスの澤井光郎代表取締役会長兼社長は11月11日、2025年3月期第2四半期決算説明会で、「現在に近づくほど、原薬の購入価格が上がっている」と物価高騰の影響を説明した。24年度通期では原材料費と委託費の高騰で約22億円の影響が出るとの予想も示した。2025年度薬価改定に向けて、年末の予算編成過程で議論が進むが、澤井会長は不採算品再算定の必要性などについて、「我々としては、しっかりと声として上げていきたい」とも述べた。10月から導入された長期収載品の選定療養の影響については、想定よりも上振れして進捗していることも明らかにした。
24年度決算では、原薬、添加剤、包装資材などの価格上昇、委託費の増加など物価・人件費の高騰が決算にも影響。原薬などで前期比約6億円増加したという。さらに、為替レートの上昇、物価高騰が続くなかで、24年度通期では原材料費と委託費の高騰で約22億円の影響が出るとの見通しも示した。澤井会長は、安定供給のための在庫確保として6か月分を基本としているとしたうえで、為替レートがこの半年間で大きく上昇したことの影響を指摘。「前年下期で製造したものを上期で売っている。上期よりも原価が高くなっている」と危機感を露わにした。
25年度薬価改定については骨太方針に「イノベーションの推進、安定供給確保の必要性、物価上昇など取り巻く環境の変化を踏まえ、国民皆保険の持続可能性を考慮しながら、その在り方について検討する」と記載されている。澤井会長はこれを引き合いに、「為替影響、原薬価格の上昇があり、骨太方針の記載にも合致する。我々としては、しっかりと声をあげていきたい」と述べた。
◎限定出荷品目97品目に減少 生産余力活かした品目集約の方針は継続
供給不足の解消に向けて、積極的に限定出荷の解除に取り組む姿勢も強調した。7月に限定出荷に積極的に取り組むことを決断し、115品目の解除を実現。限定出荷品目数は97品目(11月11日時点)まで減少した。澤井会長は、「第二九州工場新固形剤棟が稼働し、増産を着実に行うことで引き続き積極的な限定出荷の解除につなげる。引き続き、さらなる生産能力の拡充に向けて積極的な投資を行い、製造委託先を含めて、全社一丸となって増産体制を構築する」と述べた。
木村元彦専務執行役員(沢井製薬代表取締役社長)も、限定出荷の解除に積極的に取り組む姿勢を強調。「我々がまずやらないといけないのは、限定出荷をどこまで下げられるか、どれだけ増産できるかだ」と強調。限定出荷については、「黒字、赤字関係なく、在庫が貯まれば解除していっている」とも述べた。
供給不足解消に向け、同社は生産余力を活かし、赤字品目であっても他社から依頼のあった品目を増産する考えを示してきた。澤井会長は、「当社がやろうとしていたのは、既存品のなかでも赤字品目の集約」と説明。独禁法上に抵触しないよう、厚労省とも調整を進めてきた。一方で、「色々調べる中で、第二九州工場の赤字品目は他社が薬価削除手続きに入っている品目などで、ニーズがなかった」と説明した。今後、まずはサワイGHDの他の工場から第二九州上場へと品目を移管する考え。品目の移管が順調に進めば、他の工場で空いた生産余力を活かし、他社から依頼があれば赤字品目でも増産する方針を示した。
澤井会長は、「品目を集約することで、購入原薬の量が増える。原薬の価格交渉がボリュームディスカウントを要求することで、原価が下がる。赤字で不採算品再算定を申請するにしても、薬価を上げる金額が少なくて済むというメリットがある。医療上必要な赤字品目はだれかが作らないといけない。このスキームを我々としては進めていければと思っている」と述べた。
◎価格政策でプラス14億円の活動政策効果 単品単価交渉推進で
サワイグループHDの25年3月期第2四半期(中間期)決算は、売上収益が前年同期比0.5%増の878億7000万円、営業利益は7.9%増の117億5500万円、コア営業利益は0.8%増の125億7500万円。増収増益で着地したが、今年5月に公表した業績予想を下回った。沢井製薬の胃腸薬・テプレノンカプセルの不正をめぐり、昨年12月に行政処分を受けたことから、澤井会長は「営業が信頼回復に向けた活動に注力したことによる影響などから、期初の上期計画に対して未達となった」と述べた。
2024年度上期の売上では、酢酸亜鉛やアジルサルタンなど23年度以降に収載された品目の売上が伸びたほか、価格政策により、2014年度以前の既存品の売上が伸長した。木村専務(沢井製薬社長)は、不採算品再算定品目を含めた価格政策により、「卸さんもフラグを立てていただいて、今回薬価が上がったものについては単品単価で交渉していただいており、価格に反映している。上期ではプラス14億円ほどの活動政策の効果が出ている」と述べた。
◎選定療養導入の影響「予想よりも若干上振れ」 クリームや軟膏、テープ、公費負担ある製品で
下期は、「選定療養制度導入対象品目や、限定出荷解除品目を中心とした販売数量の増加、12月新製品などでのシェア獲得を目指した活動を行う」ことで、目標達成を目指す。
木村専務は、新規採用率が9月以降、11月第一週まで「予想よりも若干上振れしており、トレンドは維持されている」と述べた。クリームや軟膏、テープ、公費負担のある製品などで後発品への置き換えが進んでいるという。後発品から先発品に戻るケースもあることから、「楽観視はできず、注視する必要がある」とも述べた。今後は、公費負担のある製品や後発品の置換率が低い製品を中心に採用活動を進めていく考えで、「少しずつ動きも出てきている」と手応えを語った。
なお、同社の生産数量は、委託生産も含めて約82億錠。24年度年間計画は177億錠で、上期は生産計画を下回ったが、通期では計画通りの見込みとしている。