24年度予算編成で財務省 物価上昇率を超える診療所の1受診医療費に注目 長期収載品の自己負担見直しも
公開日時 2023/09/29 04:51
政府は2024年度予算編成に向けた議論を週明けから本格化させる。財務省主計局は9月27日の財政制度等審議会・財政制度分科会に「2024年度診療報酬改定に主な課題」と題する資料を提出した。主計局は、近年の物価上昇率を上回る「単価増」への対応に問題意識を表明。1例として「診療所の1受診あたり医療費が過去3年で+4.3%」との資料を示し、次期改定では医療経済実態調査の結果を見た上で、適正な単価の設定を求めた。一方、制度の持続可能性を確保する改革として、長期収載品等の自己負担の見直しや、OTC医薬品と同一の有効成分を含む医療用医薬品の保険給付の在り方の見直しなどに早くも言及した。
◎診療所の1受診当たり医療費「19年~22年は年率+4.3%」 物価上昇率を超えた水準
主計局は27日の財政制度分科会に「診療所における1受診当たりの医療費の推移」をデータとして提示した。1受診あたりの医療費(医科診療所・入院外)は、2000年~2010年が年率+1.1%、2010年~2019年が年率+1.4%だったのに対し、2019年~2022年は年率+4.3%に跳ね上がっている。主計局は、「1受診当たりの医療費は、ほぼ一貫して増加している」とする一方で、2019年~2022年の+4.3%については、「近年の物価上昇率を超えた水準で急増している」と指摘。「診療所の収益率は構造的に病院より高く、報酬単価や分配の在り方などの見直しが必要」との見解を提示し、次期24年度改定に向けた課題に掲げた。
◎長期収載品を含む薬剤の自己負担の引き上げも改革メニューに
制度の持続可能性を確保していくための医療制度改革については、公定価格の適正化として、メリハリの利いた診療報酬・薬価改定の実現を求めた。一方、高度・高額な医療技術や医薬品への対応について、「高額療養費制度によって自己負担は抑制され、大きなリスク(高額)ほど保険給付のウエイトが大きくなる」と指摘。薬剤の自己負担の引き上げなど、保険給付範囲の在り方の見直しが求められるとした。
具体的には、薬剤の自己負担の引き上げとして、①長期収載品等の自己負担の見直し、②OTC医薬品と同一の有効成分を含む医療用医薬品の保険給付の在り方の見直し、③薬剤費の一定額までの全額患者自己負担、④・医薬品の有用性に応じた保険給付率設定-などを明示した。
主計局はまた、「薬価制度におけるメリハリ付けの必要性」と題する資料を提示。薬剤費10兆4000億円(約1万9400品目)のうち、新薬創出等加算品の対象の3.4兆円(約600品目・構成比32%)は「イノベーションの適切な評価」とする。一方で、長期収載品の対象約1.9兆円(約1700品目・構成比18%)については、「自己負担の在り方の見直し」と明記した。