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中医協薬価専門部会 業界求める“薬価下支え”実現に早くも暗雲 不採算品再算定品の仕切価引下げで

公開日時 2023/08/03 06:00
厚生労働省は8月2日の中医協薬価専門部会に、2022年度薬価調査における製造販売業者ごとの平均乖離率のデータを示し、乖離率が大きい企業が一定数存在することを示した。厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「単純な比較はできないが、品目ごとの価値とは別に販売時の製薬企業の姿勢も一定程度影響しているのではないか」と述べた。診療側の長島公之委員(日本医師会常任理事)は、「乖離率が大きければ、その分、その品目の薬価は引き下げられる。企業はそのルールを知った上で、引き下げているはずだ。現行制度の他に何かするということは考えにくい」と指摘した。不採算品再算定の仕切価を引下げている企業が存在するとのデータも示されており、疑問を投げかける声が相次いだ。製薬業界は不採算品再算定をはじめ、低薬価品目の薬価上の下支えを要望しているが、実現に向けて早くも暗雲が立ち込めている。

◎厚労省・安川薬剤管理官「販売時の製薬企業の姿勢も一定程度影響しているのでは」

厚労省が中医協に提示したのは、22年度薬価調査における製造販売業者ごとの平均乖離率のデータ。全製造販売業者の中央値となる乖離率を100として指数を計算したところ、乖離率が一番高い企業の指数は500を超えており、指数が200以上の企業は33社存在した。
なお、中央値の企業の平均乖離率が7.0%と仮定すると、指数が300であれば21.0%となる。厚生労働省保険局医療課の安川孝志薬剤管理官は、「単純な比較はできないが、品目ごとの価値とは別に販売時の製薬企業の姿勢も一定程度影響しているのではないか」と指摘した。

さらに、医療用医薬品の流通改善に関する懇談会(流改懇)の資料を引き合いに、製薬企業に調査した結果を提示した。23年度薬価改定では、臨時・特例的に全品目を対象に不採算品再算定が実施された。医療上必要性の高い品目が対象となっていることから、厚労省から、その趣旨に鑑み、適正な価格で流通するよう、通知が発出され、周知されている状況にある。しかし、製薬企業側が仕切価率を上昇させたのは187品目(25.6%)で、低下させた品目も60品目(8.2%)あった。

◎診療側・長島委員「企業はルールを知った上で、引き下げているはず」 新たな資料要求も

診療側の長島委員は、「乖離率の大きい企業があることが見てとれる。乖離率が大きければ、その分、その品目の薬価は引き下げられるが、企業はそのルールを知った上で、引き下げているはずだ。本日提示された資料だけでは現行の制度の他に何かするということは考えにくい」と述べた。不採算品再算定品目については、「過度な値引きの対象になっていないか」実態のわかる資料を求めた。

診療側の森昌平委員(日本薬剤師会副会長)は、「薬価の下支えが必要なものなどについてはしっかりと支えていくべきと考えますが、全てを対象とすることは現実的ではないため、メリハリをつけて対応をしていくことは必要と考える」との考えを示した。「そもそもの問題として、仕切価を下げた品目は、実勢価が下がるのは当然で、そのような品目まで薬価を下支えするのは本末転倒だと思うし、総価取引をなくすなどの流通改善を一層進めていくことは大前提だと考える」と述べた。

◎支払側・松本委員「かなりの値引きをしている業者があり、正直驚いた」

支払側の松本委員は、「かなりの値引きをしている業者があり、正直驚いたというのが素直な感想だ。こうした状況については詳細に分析必要がある」と指摘。さらに不採算品再算定品目で仕切価率を下げた品目があることに触れ、「最終的には薬価調査の結果を踏まえて判断したらと思うが、このデータを見る限りでは、前回の薬価改定で行った結果がうまく反映されずに残念な結果になっていると言わざるを得ない」と断じた。

◎石牟禮専門委員「こういった事実があるのだというふうに私も理解をしたところ」

これに対し、専門委員の石牟禮武志氏(塩野義製薬)は、「これは企業が真摯に調査に協力して回答した結果と認識しているので、こういった事実があるのだというふうに私も理解をしたところだ。一方で仕切価を引き上げたりしている品目もある。現行の要件では不採算品再算定の適用のハードルが高いという課題もあるので、必要性の高い品目につきましては柔軟に不採算品再算定が適用される仕組についても、引き続きご検討いただきたい」と述べた。

◎村井専門委員 メーカーの設定する仕切価率のバラつき「自然なものと受け取っている」

専門委員の村井泰介氏(バイタルケーエスケー・ホールディングス)は、「後発品と言っても、同種同効品が多く、非常に競合の多い品目から、安定確保医薬品、あるいは不採算品目あるいは最近の供給制限のかかっている品目など、その実相は多様だ。薬価改定後の仕切価率の対応については、メーカーの設定する仕切価率がある程度このようにバラつくことは、私はむしろ長期収載品あるいは後発品の実相を現しているものというふうに、自然なものであると受け取っている」と述べた。そのうえで、仕切価率が下がっている品目について、流通改善ガイドラインを踏まえて一部企業が対応したケースではないかと説明。自社では、「不採算品差算定で薬価が上がった商品のうち仕切価が実際に下がったという品目は、1品目しか見つけることができなかった。しかも1円下がったというだけで、実際はほぼ据え置きという状態だった」として、「事務局にはこの資料そのものがどのような出典であったのかご調整いただきたい」と指摘した。

◎品目数の適正化 「まだ改善の余地がある」診療側・長島委員 生産終了も一考

後発品の安定供給に向けて、品目数の適正化が焦点となるなかで、診療側の長島委員は、「先発品に対して10品目以上の後発品が一定数存在しており、まだ改善の余地があると考える。収載時薬価については、さらに適切な価格付けが考えられるのではないか」と指摘した。

診療側の森委員は、「長年使用された医薬品の中で、新薬の開発や治療方針の変化等で、ほんの少量のみ生産されている医薬品もある。そのような医薬品の中で、医療現場の判断で代替できる製品があるというものは、生産終了とすることで、製薬企業にとっての負担軽減ももちろんだが、空いた生産ラインを使用して他の薬を製造すること、また緊急時のためのライン確保ができるではないかと考える。医療現場や関係団体、企業とも協力しつつ、後発品の品目数などのあり方も含め、何かしらの対応ができないか検討していくことも一つでは」と述べた。

◎診療側・森委員「安定供給確保する企業の医薬品を優先的に評価するのもひとつの視点」

一方で、安定供給を行う企業の薬価上の評価も論点となるなかで、診療側の森委員は、「薬価の下支え制度においてメリハリをつける際に、安定供給の確保ができる企業が供給している医薬品を優先的に評価していくことも一つの視点」との考えも示した。

このほか、製薬業界側が銘柄別の収載を求めていることについては慎重論もあった。診療側の森委員は、「価格帯を集約させていったのは多くの企業が参入し、そのために多品目となり、そのことを国民にどう説明するのかということがあって価格帯を集約したというふうに理解している。価格帯を増やす方向の見直しは慎重に検討すべき」と釘を刺した。

専門委員の石牟禮氏は、「安定供給の継続を志向する品目が他の品目の影響を受けて引き下げられる可能性がある。以前の生活習慣病薬のように一度に多数の品目が収載される成分というのは、現状限られてきていると認識している。一部銘柄別収載を導入するという方法も一考していただければ」と訴えた。

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