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流改懇 流通改善ガイドライン強化へ検討開始 “カテゴリー別”の議論本格化 クローバックの検討求める声も

公開日時 2023/06/27 05:00
厚労省の「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」は6月26日、「医療用医薬品の流通改善に向けて流通関係者が遵守すべきガイドライン」の強化に向けて検討に入った。オーファンドラッグの増加や後発品の浸透など、カテゴリーチェンジが起きるなかで、医薬品特性に応じた取引体系とする必要性を指摘する声が複数上がった。安定確保医薬品やオーファンドラッグなど医療上必要性の高い医薬品も総価取引とされるなかで、“カテゴリー別”で議論する必要性が指摘された。眞鍋雅信委員(日本医薬品卸売業連合会理事)は、「調整弁に使ってはいけないような医薬品については、流通改善ガイドラインに明示し、ルール順守は全員で遵守していかなければならない」と主張した。

「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が取りまとめた報告書では、「総価取引を改善するための措置として、医療上必要性の高い医薬品については、過度な価格競争により医薬品の価値が損なわれ、結果として安定供給に支障を生じさせるおそれがあるため、当該医薬品を従来の取引とは別枠とするなど、流通改善に関する懇談会等で検討の上、流通改善ガイドラインを改訂して対処していくことが必要」と提言されており、この日もこうした提言を踏まえた議論がなされた。

◎一次売差マイナス縮小も仕切価率上昇 製薬協・森委員「現行制度の中で精いっぱいやっている」

厚労省はこの日の流改懇談に22年度の取引状況について一次売差マイナスが続いているものの、仕切価率と納入価率の差は2.7ポイントで前年度の3.3ポイントから縮小傾向であることを報告した。仕切価率は0.4ポイント増の95.7%、納入価率は1.0ポイント増の93.0%だった。

仕切価率が上昇傾向であることについて森英寿委員(日本製薬工業協会流通適正化委員会委員長)は、「新薬創出等加算品、特許品の売上のウエイトが上がっている」ことが要因と説明。「制度を変えずに仕切り価が上がっているとか下がっているというだけで議論するのは非常にバランスが欠けている。新薬創出等加算品、特許品は開発費を特許期間中に回収して次の投資に向けないといけない。そのために、そういう仕切価を敷いている。我々としては、現行制度の中で精いっぱいやっている。特許を有する医薬品の薬価、仕切価は日本市場の魅力、ドラッグ・ロス、ラグ、創薬力強化にもつながってくると考えている。その中で特許期間中における医薬品の薬価をシンプルに維持する制度が必要ではないか」と主張した。

この声をきっかけにカテゴリー別の議論を求める声が集中。「患者、治療の立場から入ったカテゴリーを作っていかないと、流通そのものについて議論がしづらくなってしまった」(宮川政昭委員・日本医師会常任理事)などの声があがった。

◎卸連 オーファンドラッグ、安定確保医薬品、不採算品再算定など「別途に議論を始めるべき」

厚労省はこの日、医薬品卸を対象としたアンケート調査を提示した。総価取引だが、除外品目があるケースでは、いずれの販売先も新薬創出等加算品目が最も多く、特許品が次いだ。総価から除外すべき品目を尋ねたところ、トップ3は、オーファンドラッグ、安定確保医薬品(カテゴリーA)、不採算品再算定だった。一方で、安定確保医薬品や最低薬価品目であっても、総価取引が行われており、価格の調整弁としていることが指摘されている状況にある。

折本健次委員(日本医薬品卸売業連合会理事)は、安定確保医薬品(カテゴリーA)、最低薬価、基礎的医薬品、不採算品再算定について、「これらの分類を何とかしないと、流通上も医療機関・保険薬局にも大変な問題になる。基礎的医薬品というカテゴリーが該当するかどうかを含めて、議論しないとマズイのではないかと危機感を覚えている」と主張。2022年度の売上をベースに民間業者が実施した概算として、安定確保医薬品(カテゴリーA)、最低薬価、基礎的医薬品、不採算品再算定の対象品は6500億円、オーファンドラッグは1兆6000億円の市場とのデータを紹介し、「2兆円くらいのものを別途に議論を始めるべきではないかということを、卸連としては一つの提言としてご相談させていただきたい」と訴えた。

眞鍋委員は、「オーファンドラッグを含め安定確保医薬品、基礎的医薬品、不採算品再算定が価格の調整弁に使われていることは非常に憂慮すべきことだと我々も考えている。こういったカテゴリーの医薬品は制度も別にしていただきたいし、最低限ガイドラインのなかで総価取引とは別枠の切り離した交渉をすべきという指針を示していただくべき。そろそろカテゴリーに分けて制度論も含めて議論しないと、何十年同じことをやっているのかという話になる」と訴えた。

◎過度な薬価差議論に 小山委員「メガ調剤薬局にメスを」 原委員「200床以上の病院の課題も」

もう一つの課題が、購入主体別のカテゴリーの考え方だ。厚労省はこの日の流改懇に、医薬品卸45社を対象に価格交渉について実施したアンケート調査の結果を提示した。単品単価取引は、200床以上の病院では44.2%(このうち、価格代行業者を通じた取引は20.0%)、200床未満の病院・無床診療所は92.8%(同・3.2%)、20店舗以上の調剤チェーン薬局は21.4%(同・12.7%)、20店舗未満の調剤薬局チェーン又は個店は74.3%(同・17.6%)で、200床以上を有する病院や20店舗以上の調剤薬局チェーンの総価取引率が高い結果となった。

過度な薬価差の偏在も指摘されるところだが、小山信彌委員(日本私立医科大学協会参与)は、「メガ調剤薬局の値引き交渉が全体構造を大きく変えていることがある。そこにメスを入れないとこの問題はいけないのではないか」と問題意識を表明した。「バランスが崩れている」などとして、医療機関と薬局の差を強調した。

これに対し、原靖明委員(日本保険薬局協会医薬品流通・OTC検討委員会副委員長)は、「ガイドラインを守らないで薬価差を取りに行っているのか、それともガイドラインを守っててもそうなるのか非常に大きな問題だ」と述べ、ガイドラインを遵守する必要性を強調。「卸から見ると、大手チェーンと病院という話を聞く」と述べ、200床以上の大病院での薬価差をめぐる課題も指摘した。

厚労省は今後、詳細な調査を実施し、それを踏まえて議論を深める方針。検討会では、購入主体別をさらに詳細にわけた調査を求める声などがあがった。

◎クローバック提案に原委員 調剤報酬の大規模チェーンなどで基本料減算は「クローバックでは」

薬価差是正に向けて、クローバックや公定マージンの検討を求める声も製薬業界や医薬品卸からあがった。原委員は、調剤報酬では、同一グループの店舗数が300以上などに対して、薬価差を含む効率化を踏まえた調剤基本料の減算がすでに設けられていることを説明。「これはクローバックではないか」との認識を示した。「市場も薬価で下げるのにクローバックしているのにそのお金がどこにいっているかわからない。メーカーに返さないといけないということも考えないといけない」と指摘した。さらに、「鶏か卵かわからないが、薬価差は経営原資になっていて問題だということであれば、過度であれば問題だし、まったくなくなれば経営ができなくなる可能性もある。病院であれば診療報酬、薬局であれば調剤報酬という全体のバランスで考える必要があるのではないか」との考えを示した。

このほか、森委員(製薬協流通適正化委員会委員長)は「製品の価値が本当に正しく次の薬価改定に反映されるのかという懸念を持っている。目指すべき単品単価の交渉になっていく中でベンチマークを用いた単品単価交渉が当局の目指す単品単価交渉になっているのだろうか」と問題意識を示した。これに対し、信沢正和主席流通指導官は、「価格交渉代行や医療コンサルタントの中には、価格交渉だけを行っているというわけではなく、医療機関や薬局の経営効率化支援や人材育成などを行うなかで価格交渉を行うケースもある。一概に問題であるとは言えない状況だ。ただし、共同購入の仕組みを利用することについて医薬品の価値を無視した過大な値引き交渉を行っている場合にはガイドラインを遵守する必要があるので、必要に応じて指導していきたい」と述べた。
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