アステラス製薬 営業体制見直しで「特別転進支援制度」 勤続5年以上で約500人想定 24年3月末退職
公開日時 2023/08/01 19:50
アステラス製薬は8月1日、国内営業体制の見直しとして「特別転進支援制度」を導入し、アステラス労働組合と協議を開始したと発表した。対象は、勤続年数が24年3月末で満5年以上の国内営業に従事している社員で、約500人を想定する。23年12月に募集を開始し、24年3月末を退職日とする考え。労組と協議して最終的に決定する。同日の決算会見で、同社の岡村直樹代表取締役社長CEOは、「単純に人が減るというだけでなく、残った人たちはこれまでのようなMR活動ではない営業スタイル、営業のやり方、スキルを持った者たちの少数精鋭集団になっていくのが我々のゴールだ」と語った。
◎特別転進支援制度で国内営業は3割の人員減も
同社で国内営業に従事している社員は現在1650人(うちMRは1200人)。満5年以上の社員数は不明だが、単純計算すると、特別転進支援制度の実施により国内営業は30%以上(500人/1650人)の人員減となる。これに伴って、2023年度に、日本での営業体制の見直しを含め、グローバルでの組織改革に伴う一時費用を約200億円計上する予定といい、その大半が日本の費用という。
◎背景にはポートフォリオのシフトが 今後はオムニチャネル活用とデータ分析を重視
背景には、同社のポートフォリオのシフトしていることがある。2型糖尿病治療薬・スーグラに代表される生活習慣病治療薬から、抗がん剤、細胞治療などスペシャリティへとシフトしている。こうした中で、日本での中長期的な成長実現のため、改めて製品ポートフォリオの優先順位づけを実施し、営業体制の改革を決断した。「顧客ニーズに基づいたオムニチャネルの活用とデータ分析を強化した新たな営業体制」の構築に踏み切る。いわゆるMRの対面によるプロモーション活動に加え、デジタルなどのチャネルを活用し、顧客ニーズに合致した形へと変革を進める。
◎岡村社長「これまでのMR活動ではない精鋭集団」がゴール
岡村社長はこの日の決算会見で、「従来型の日本における地域ごとに支店や営業所を作り、そこにMRを配置し、成熟型の製品であっても頻繁にディテールする営業活動に適した製品から、そうではないポートフォリオにいま、変わりつつある」と説明。「どこでどうガラッと変えるのかっていうことはいつも問題なる。今でも、例えばスーグラはやはりMRがいないとダメでないかと言われると思うが、様々なことを考え、様々な前提を置いて考えたときに、最後まで引っ張って急に変えるのか、それとも製品が成熟したとはいえ、市場で使って頂いている間に、組織や、やり方を変えていくかを考えた」と説明した。
岡村社長はまた、25年度を最終年度とする「経営戦略2021」を引き合いに、「23年度をある意味ターニングポイントにしたいと考えている。今回、人数という意味でも減り、残った者たちがどういう形でこれから営業活動に携わっていくのか。どんなツール、どんな技術、どんなデジタルツールを使って、顧客の皆様とより効果的で効率的なインタラクションをしていくかということ。これは実は日本だけのことではなくてグローバルに今考えているところだが、とりわけこれまでの体制との差が大きいという意味では、日本の差が大きくて今回のような、施策につながった」と説明した。
そのうえで、「単純に人が減るというだけでなく、残った人たちはこれまでのようなMR活動ではない営業スタイル、営業のやり方、スキルを持った者たちの少数精鋭集団になっていくのが我々のゴールだ」と語った。
◎関係者からは「またやるのかとの思いもある」との声も
なお、同社は21年6月に「早期退職優遇制度」として、早期退職者を募っている。今回は、アステラス製薬で国内営業に従事している社員に限定して実施し、割増退職金や再就職支援といったパッケージを用意するが、より十分な支援を提供することから、“特別転進支援制度”として、対象を募集する。
会社側は8月1日にアステラス労働組合に特別転進支援制度の導入を申入れ、労組側は内容確認に入った。関係者によると、アステラス製薬で早期退職者募集を行う場合は、必ず労使協議を行い、労組として受け入れることを決議してから実施しているという。関係者のひとりは、「製品ラインナップが変化し、モダリティや対象疾患も変化していることから国内体制を見直すということだと捉えている」としたものの、「21年にも早期退職者を募集しており、またやるのかと思いもある。このように受け止める社員も少なくないのではないか」と話した。