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アステラス製薬・志鷹CScO AI創薬・ASP5502がP1入り ヒット化合物発見からわずか7か月で完了

公開日時 2024/10/25 04:51

アステラス製薬の志鷹義嗣専務担当役員研究担当CScOは10月24日のメディア・グループ取材で、AI創薬技術を活用して創出したSTING阻害剤・ASP5502が第1相臨床試験入りしたと明らかにした。同剤は、「研究者×AI×ロボット技術」による初の新薬候補化合物。志鷹CScOは、「自社平均で2年を要した最適化研究を、わずか7か月で完了させた。AI創薬が研究開発期間の短縮に繋がる好事例だと考えている」と強調した。AI創薬の可能性について、「低分子創薬だけではなく、私達は他のモダリティ開発への拡張を始めている」と述べ、タンパク質分解誘導剤や抗体研究における活用事例を目指す方針を明らかにした。

同社は、2020年からAI活用やデータの理解を支援するシステム構築を行ってきた。志鷹CScOはAI創薬の原点を振り返りながら、「このプラットフォームが使われるきっかけは、研究者が行う化合物ごとの実験結果の一覧表の作成に自動化の機能を導入したことが始まり」と指摘。続けて、「研究者が何度も行う煩雑で手間のかかる作業を自動化したことで、研究者自身がプラットフォームに搭載したAIを自然に利用するようになった」と述べ、「単にAIを入れただけでは、研究者は使わないということを示した」と皮肉を込めながら、明かしてくれた。

◎現在稼働している「AI統合プラットフォーム

現在稼働している同社の「AI統合プラットフォーム」には、ADMET(吸収、分布、代謝、排泄、毒性)予測、薬理活性予測、Off-Target予測、化合物構造生成、化合物デザイン、化合物推薦、データ解析・可視化、実験結果の一覧表作成、予測精度解析―などの機能が集積されている。研究者が“知識”、“経験”、“カン”を基に化合物をデザインすると、長年にわたり自社実験データを蓄積し、学習したAIが予測レポートを作成。研究者がAIの予測結果を参考にデザインを修正し、再予測するという循環を回しながら、最終的なヒット化合物を探し当てる。

◎ヒット化合物や医薬品候補物質の効果を自動検証するロボット技術を活用

さらに、ヒット化合物や医薬品候補物質の効果を自動的に検証するロボット技術の活用により成功確率を大幅に向上されるという。つくば研究センターには「Mahol-A-Ba」(匠の腕)と呼ばれる細胞培養の熟練研究者の技を自動化したロボットが休日・夜間を問わず稼働している。薬効評価、多検体処理、画像撮像の解析には「匠の眼」と呼ばれる技術が導入されており、海外を含む外部研究機関からネットワークを通じて研究者がアクセスできるなど、ヒット化合物の創出から臨床試験入りまでのリードタイムを大幅に短縮する可能性を秘めている。

◎ASP5502の創製 約6万化合物をAIが設計 約20個の候補物質を選択

今回のSTING阻害剤・ASP5502の創製は、研究者によるAIへの設計方針のインプットで、約6万化合物をAIが設計する。この候補物質からAI予測スコアやAIが予測できない項目(合成可能性等)を考慮して約20個の候補物質を選択。ロボット合成によりASP5502を特定し、このほど第1相臨床試験入りすることになった。志鷹CScOは、「ヒット化合物の発見から約7か月という短期間で見出された」と強調し、「化合物構造を生成するAIは、これまでに蓄積された研究者の構造変化に関するノウハウが組み込まれており、医薬品らしい化合物が生成され、非常に多くの化合物の構造を検討することができた」と語ってくれた。

◎志鷹CScO「他のモダリティ開発でもAI×ロボット技術の活用を拡大させたい」

今後の展望について志鷹CScOは、「他のモダリティ開発でもAI×ロボット技術の活用を拡大させたい」と意気込みながら、A3082/A4396(KRAS G12D分解)に続くタンパク質分解誘導剤の応用を視野に入れた。また、AIによる新規抗体デザイン、薬物複合体の組み合わせの最適化などにも応用できると期待する。

その上で、AI創薬能力の強化へ向けた取り組みとして、AI、ロボット、実験の自動化に関する知識とスキルを持つ研究者の採用を進める方針を明言。さらに、デジタルスキルを持つ社員の裾野を広げる活動(デジタルX)も全社的に実施する方針を明らかにした。

◎角山デジタルX リサーチXヘッド「AIを使って創薬デザインのできる研究者」採用へ

グループ取材に参加した同社の角山和久デジタルX リサーチXヘッドは、社員向けの「デジタルリスキリングブートキャンプ」(ABC4DC)を行っているとしたうえで、「デジタルリテラシーや初歩的な技術を身に着けてもらうことを目指すもの。いまは第1期として行っているが、今後行う第2期のプログラムからは少し実践的なものになると思う」と述べた。一方で、「我々が求めているのはAIを作れる人材、AIを使って創薬デザインのできる研究者であるため、そこにはまだだいぶ距離がある」と語り、専門職の採用にも注力する方針を明かしてくれた。




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