自民党創薬力強化PT・橋本座長 “創薬”を国の戦略に 骨太方針を見据えて提言へ 政府に司令塔機能を
公開日時 2023/02/14 04:52
自民党社会保障制度調査会の「創薬力の強化育成に関するプロジェクトチーム(PT)」の橋本岳座長は2月13日の会合で、「政府の成長戦略に“創薬”という言葉が入るよう努力していきたい」と意欲をみせた。医薬品分野の輸入超過が膨らむなかで、創薬力を政治の責任として国の成長戦略としてより一層強力に位置づける必要性を強調する。PTでは骨太方針の取りまとめを見据えて提言を取りまとめ、首相官邸に要望する方針。橋本座長は、政府に創薬の司令塔機能を有してもらうことの必要性を強調し、こうした内容を提言に盛り込む考えも示した。
橋本座長はPTの冒頭挨拶で、岸田首相の施政方針演説で、日本発の早期アルツハイマー病治療薬・レカネマブを米FDAが迅速承認したことに言及されたことに触れ、その後に続く言葉として“創薬”というキーワードがなかったことに「大変ガックリした」と語った。そのうえで、岸田政権の戦略の一つとして創薬に注力してもらうための環境整備や支援体制の必要性を強調。「そして、それが実際に動かされていくような体制が取れるようにというのも一つの目標にしていきたい」と語った。
会合後の記者ブリーフで橋本座長は、「一昨年(2021年)、我々が最初に出した提言で、創薬のエコシステムをちゃんと作るための司令塔を政府に作ってほしいとしたが、これがまだ実現できていない。実現したいという方針そのものは言い続けていかないといけないと思っている」と改めて表明。「司令塔を作ってほしいということに対し、有識者検討会から提言をしてもらうというのは一つのあり方かもしれないと受け止めている。まずはそこから始め、どこが足りないとこをどうするとかという話は専門的な人たちに考えてもらうのが一番いいと思っている」と自身の考えを述べた。
PTの提言は、厚労省の「医薬品の迅速・安定供給実現に向けた総合対策に関する有識者検討会」が行う4月の取りまとめを見据え、「有識者検討会が答申を出す前に、こちらも何かしらを出して有識者検討会に打ち込んでいく」と述べ、このタイミングで、PTとしても中間とりまとめなども検討する姿勢を示した。あわせて、「我々の提言を総理のレベルまで持っていけるようまとめ、政調も通して骨太に向けて出していけるように頑張っていきたいというのが目標だ。それに向けて取り組んでいきたい」と強調。政府の体制構築に言及する必要性を指摘し、今後の政府・与党調整に意欲をみせた。
◎田村憲久社会保障制度調査会長 医薬品の輸入超過に危機感
冒頭で挨拶した田村憲久社会保障制度調査会長は、医薬品分野の輸入超過が続いている現状に危機感を露わにした。田村社会保障制度調査会長は、「日本の経済成長を考えたときに、創薬でどう稼いでいくのだ」と問題意識を表明。3兆円を超える輸入超過の現状に触れ、「少し前までならば何とか耐えられたかもしれないが、いまの日本の貿易収支を考えると、もう耐えられないところに来ている。さらなる円安等々の傾向が出てくると、さらに大変なことが起こるだろう」と危機感を露わにした。そのうえで、「我が国として、創薬を成長戦略の中にもっと強力にしっかりと位置付けていかないといけない」と強調した。
会合後、田村社会保障制度調査会長は、内資系企業の創薬力が低下していることについて、企業規模やリスクテイクできないなどの課題を指摘したうえで、それ以上にビジネスに臨む姿勢の重要性を強調。ファイザーが独・ビオンテックとパートナーシップを組むことでいち早くワクチンを世界に届けたことに触れ、内資系企業にもこうしたチャレンジをしてほしいとエールを送った。
◎中外製薬・永山名誉会長からヒアリング 「創薬インキュベーション機構」創設を
同日のPTでは、中外製薬の名誉会長である永山治氏からヒアリングを行った。永山名誉会長は、「創薬産業」を国の基幹産業として捉え、巨額の貿易赤字を含めた国力強化に資するイノベーション創出産業に発展させる必要性を強調。創薬力の国際競争力を高めて世界の優秀な人材を惹きつけて呼び込み、アジアのリーダーとして世界の医療に大きく貢献する新薬の創出国となる姿を描いた。
そのために、医療・創薬に専門性を有するメンバー主導で、AMEDや医療基盤研などの資源や民間の力を最大限に活用するための国家戦略を策定。戦略遂行のカギとして有望な創薬スタートアップの創出・育成に特化し、アカデミアのアイデアを創薬プロセスにつなげるための支援をハンズオンで行う「創薬インキュベーション機構」の創設を提言した。
英国では、医学・薬学研究で世界をリードすることを具現化した世界最先端の研究拠点「フランシス・クリック研究所」がある。グラクソ・スミスクライン(GSK)とアストラゼネカは資金提供とともに、基礎研究段階から研究所と企業の研究者がともに考えるオープンサイエンスの仕組みを構築しており、こうしたモデルを参考にする必要性を指摘した。
PTでは今後、有識者検討会の進捗について厚労省からの報告を受け、議論を深める方針。