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紀平評価第一課長 ポスト2025に向け「薬剤師・薬局は提供する価値を自ら提案を」 ”地域、住民”を主語に

公開日時 2023/01/30 05:45
内閣府食品安全委員会の紀平哲也評価第一課長(前薬剤管理官)は1月28日、医薬品包装学公開セミナー、熊本大学薬学部卒後教育研修会で講演し、「受け身ではなく、地域包括ケアシステムのなかで薬剤師がどんな価値を提供するのか、自分たちから提案するような形を考えなければいけない」と述べた。厚労省が“対物から対人へ”を打ち出した「患者のための薬局ビジョン」がターゲットとした2025年が目前に迫るなかで、次の姿を考える新たなステージに入る。紀平課長は、「制度が変わるのを待ってそれを追いかける立場になるのか、制度を変えていく、提案する側になるかで今後の薬局の立ち位置はずいぶん変わってくる」と指摘。今後の姿を考えるうえで、薬局や薬剤師起点ではなく、「患者や地域住民を主語として考えなければならない」と強調し、薬剤師・薬局の主体的な取り組みを求めた。

◎環境変化大きく「普遍的なものは患者さん、地域住民に向き合う姿勢」

紀平課長は、これまでの薬局・薬剤師を取り巻く歴史をひも解き、50年前には地域住民の健康相談にのり、“町の科学者と呼ばれた時代から、医薬分業の進展に伴い、相談機能を失い、調剤偏重とも呼ばれる形へと変化してきたと説明した。さらに、薬剤師が扱う医薬品のモダリティや”調剤“の内容そのものも変化してきた。調剤機器の導入や、欧米で導入される箱出し調剤、デジタルを活用した服薬管理ツールなど、今後も変化が起きる可能性を指摘した。

そのうえで、「薬局で使えるツールは、どんどんどんどん変わっていく。そして、薬剤師の業務自身もどんどん変わっていくかもしれない。そのなかで、普遍的なものは何かと考えれば、患者さんに向き合う姿勢、その地域住民に対する姿勢だと思う。新しいツールに使われるのではなく、自分たちがどう使っていくかを提案できるようになっていかなければいけないのではないか」と指摘した。

◎25年目前に控え「もう一度次の薬局の姿を考え直さなければいけない時期」

薬局を取り巻く制度についても、「変わらないように見えて、実は10年、20年というスパンでずいぶん変わってくる。国の制度自身もこの四半世紀でずいぶん変わってきたところがある。逆に言えば、この先20年、30年先を考えれば、制度自身も変わっていく」と説明した。

厚労省は、2015年に「患者のための薬局ビジョン」で“対物から対人へ”を打ち出し、これに沿った施策を進めてきた。紀平課長は自身が薬剤管理官として携わった22年度改定に触れ、「薬剤師の業務を変えていくのではなく、薬剤師が業務に携わるときの意識を変えていかなければいけないのではないかということを込めた。薬剤師の意識とは、患者さんに向き合う姿勢そのものだと思っている」と表明。「薬を渡すということがメーンであれば”対物”という物の話になってしまうが、もっと患者さんに目を向けてくださいということ」と意図を語った。

一方で、ビジョン策定から8年が経過するなかで、オンライン資格確認やNDBの活用、電子処方箋、オンライン服薬指導など、当時はなかったツールが登場した。「もうすでに賞味期限が切れたということにもなるし、次に目指すものというのはこの延長線上ではなく、もう一度次の薬局の姿というものを考え直さなければいけない時期に来ている」と表明。「制度が変わるのを待ってそれを追いかけていく立場になるのか、制度を変えていく、提案する側になるのかということで、今後の薬局の立ち位置はずいぶん変わってくる」と強調し、自発的な取り組みを求めた。

◎地域ごとに必要とされている役割をブランディング 地域住民のニーズ把握も

紀平課長は、薬局が提供するサービスとして、医薬品を供給する“物販”と、“対人サービス”に大別できると説明。「地域や住民が何を必要としているのかを考えたうえで提供するこれが重要だろうと思う」と述べた。

薬局経営のマネジメントから、住民のニーズを分析するマーケティングに加え、ブランディングの重要性を強調。「その薬局でどういったサービスができるのかを住民に知っていただく、いかに訴求するかがブランディングだと思っている。全国一律で薬局は“こういうもの”というのではなく、地域ごとに必要とされているものがあって、それをその地域の方たちに伝えていくことが大事だろうと思っている」と述べた。そのためには、「例えば、構造や設備について住民の方たちがどういったものを望むのか、きちんと考えなければいけない」と強調。パーテーションを例に、「実際、衝立が立っているだけでプライバシーが確保できるかというのは実際に患者さんたちに聞いてみていただきたい」と指摘した。

健康サポート薬局についても、「地域の住民の方たちを見ながら考えていくものだというふうには思う」と表明。「物販をツールとして、住民へのサービスという形でいかに収益化できるかが今後の健康産業を考えるうえでも必要になってくるのではないか」と述べた。

一方で、「消費者目線で考えたときに、誰が何をどうどういう方法で提供してくれるのかというのは、おそらくこだわりはない」との見方を示した。「薬剤師からもらうことに価値があると受け取ってもらうためには、その価値をきちんと目の前の患者さんに示す必要があると思っている」と述べた。「物が届けばいいだけであれば薬局でなくていいということはずっと言われている。それに対して、薬局はどう答えを示すかということ。問われているのは国ではなく、薬局自身のはず」と強調した。また、人口構造や社会の変化、薬局を取り巻く環境変化も指摘し、「色々な変化していく環境に合わせていく、そして生き残っていくということが求められる」とも述べた。

◎健康にかかわる産業だからこそ「地域目線、利他目線を」

紀平課長は、「少なくとも産業論で考えたときに、医療保険の財政を考えれば、薬局は成長産業ではない。薬局として成長、市場全体を大きくしようとやっぱ一般消費者、住民の方たちをターゲットにする必要がある」と強調。トヨタ自動車が収益や規模拡大などの路線から転換し、地域や顧客を重視し、利他(自分以外の誰かのために)を重視した“町いちばんのクルマ屋”を目指していることを紹介。「薬局という健康にかかわる産業、会社であれば、よりこういった意識を強く持たなければいけないのでは」と強調した。




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