日医・松本会長 健康保険証の24年秋廃止「可能かどうか非常に懸念している」
公開日時 2022/10/20 04:50
日本医師会の松本吉郎会長は10月19日の定例会見で、2024年秋に健康保険証を廃止する政府方針について、「マイナンバーカードがあまり普及していない現在の状況を考えると、2年後の廃止が可能かどうか、非常に懸念している」との見解を示した。「保険料を支払っているにもかかわらず、保険証の廃止によって、医療機関に適切な時期に適切な状態で受診できないことがもし起こるとすると、やはり国民の方にとって非常に困る。医療現場の混乱も招く」と強調し、丁寧な対応と国民への説明を政府に求めた。
松本会長は、地域医師会からは、すべての人にマイナンバーが行きわたり、活用できる状況となるか、懸念の声が寄せられていると説明。「健康上の理由や認知症の方、役所になかなか足を運べない方などの問題は非常に大きいと考えている」と述べた。それに加え、取得後も高齢者や操作に慣れていない人が情報を入力することのハードルも指摘。マイナンバーカードへの切り替えは「慎重に進めるべきではないか」と強調した。
◎災害、システム障害、通信障害時の対応など「受診できない、確認できない」を懸念
運用上の課題も指摘した。コロナ禍で患者の導線も重要になるなかでカードリーダーの設置場所が難しいと指摘。さらに、災害時や、システム障害、通信障害が起きた際の対応などに懸念を示し、「逆に患者さんの負担が増えることや、受診ができない、確認ができないことも十分に考えられる。非常に大きな課題を抱えていると私たちは認識している」と述べた。松本会長は、「国民の皆さまにしっかりご理解いただくこと、国民の皆さまや医療現場に混乱が起きないような、懇切丁寧な議論がこれからさらに重要になってくる」との認識を示した。
23年度から原則義務化となるオンライン資格確認についても、懸念の声が各地域の医療機関や地域医師会から届いていると説明。高齢の医師で職員がいないような状況の診療所ではオンライン資格確認が義務化されることで、「結局のところ診療ができなくなるから医療機関を廃止せざるを得ない。その地域が無医村状態になってしまうことを懸念する声がたくさん寄せられている」と話した。都内のビル診でも、通信回線の問題などで導入にハードルがあるケースもあると説明。原則義務化の例外として、現在紙レセプトでの請求が認められている医療機関・薬局が定められているが、「しっかりと例外指定をもう一度ご検討いただくよう厚労省に強く求めていく」と述べた。