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AZの新型コロナ抗体薬・エバシェルド筋注を特例承認へ 薬食審・第二部会が了承

公開日時 2022/08/30 04:50
厚生労働省の薬食審・医薬品第二部会は8月29日、アストラゼネカ(AZ)の新型コロナ抗体薬・エバシェルド筋注セット(一般名:チキサゲビマブ/シルガビマブ)を特例承認することを了承した。適応症は「SARS-CoV-2による感染症及びその発症抑制」。新型コロナ発症後の治療目的のほか、濃厚接触者ではない者(感染源への曝露前)に対する発症抑制の目的でも使える。曝露前の発症抑制に用いる際の投与対象者は、▽ワクチン接種が推奨されない者▽ワクチン接種で十分な免疫応答が得られない可能性がある者――となるが、より具体的な投与対象者は日本感染症学会のガイドラインで示される予定。なお、同剤は曝露前の発症抑制に係る治療選択肢を提供する初めての薬剤となる。

厚労省は部会後の記者説明会で、エバシェルドの特例承認の時期について、「今後、速やかに薬事承認の手続きを進める」とコメントした。全世界で同剤の供給量が限られていることから国が必要量を購入・確保する方針で、同省はこの日、AZとの交渉により、15万人分を確保していることを明らかにした。流通方法は「調整中」とした。

エバシェルド(開発コード:AZD7442)は、新型コロナに感染して回復した患者により提供されたB細胞に由来する2種類の長時間作用型抗体(LAAB)であるチキサゲビマブ(遺伝子組換え)とシルガビマブ(遺伝子組換え)を併用するもの。同社が独自に有する半減期延長技術を適用し、1回の投与後少なくとも6カ月間、ウイルスからの保護が持続されることが示されている。

◎曝露前投与 オミクロン株BA.5にはチキサゲビマブ、シルガビマブそれぞれ300mg投与

エバシェルドの用法・用量は、新型コロナ発症後(治療目的)と曝露前の発症抑制で異なり、発症後は「チキサゲビマブ及びシルガビマブそれぞれ300mgを筋肉内注射する」となる。ただ、現在主流となっているオミクロン株BA.5系統に対しては、同剤の有効性が減弱する可能性があることから、「他の治療薬が使用できない場合」の治療選択肢と位置付ける。これは既承認の新型コロナ抗体薬・ロナプリーブ注射液などと同じ。

曝露前の発症抑制に対する用法・用量は、「チキサゲビマブ及びシルガビマブそれぞれ150mgを筋肉内注射する。なお、変異株の流行状況等に応じて、それぞれ300mgを筋肉内注射することもできる」となる。オミクロン株BA.5系統に対しては、「同様の対象者に使用可能な他の治療薬がないことから、慎重に投与を検討することとし、その際の用量は、それぞれ300mgとすることを基本とする」(厚労省)との使い方になる。

◎曝露前投与の主な対象 免疫不全症患者、抗がん剤の投与を受けた患者など

エバシェルドは、発症後及び曝露前の発症抑制のいずれも、成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児を対象とした薬剤として承認されるが、主な投与対象者は、発症後に関しては「重症化リスク因子を有する軽症~中等症Iの患者」となる。

曝露前の発症抑制の主な投与対象者は今後、日本感染症学会ガイドラインで示されるが、厚労省によると、免疫不全症の患者、抗がん剤の投与を受けた患者、臓器移植を受けた患者などでより詳細に示される。また、厚労省は、「感染症の予防の基本はワクチンによる予防であり、本剤はワクチンに置き換わるものではない。この点は十分に留意いただきたい」と述べ、エバシェルドの曝露前投与はあくまでワクチン接種が推奨されない者やワクチンでは十分な免疫応答が得られない可能性がある者に限られると強調した。

エバシェルドの臨床成績は、発症後では国際共同第3相試験において、投与後29日目までの重症化又は死亡に至った患者の割合が、エバシェルド群(チキサゲビマブ300mg/シルガビマブ300mg)4.4%(18/407例)、プラセボ群8.9%(37/415例)で、リスク減少率は50.5%となり、統計学的に有意な差が認められた(p値=0.010)。

曝露前の発症抑制では海外第3相試験において、投与後183日目までに新型コロナウイルス感染症の発症に至った被験者の割合は、エバシェルド群(チキサゲビマブ150mg/シルガビマブ150mg)0.2%(8/3441例)、プラセボ群1.0%(17/1731例)で、リスク減少率76.7%となり、統計学的に有意な差が認められた(p<0.001)。

◎コミナティ5~11歳用の追加免疫の一変承認も了承 「少なくとも5カ月経過した後」に

同部会ではこの日、ファイザーが製造販売する小児用新型コロナワクチン・コミナティ筋注5~11歳用について、5~11歳の追加免疫(3回目接種)に係る用法・用量追加の一変承認も了承した。早ければ30日中に正式承認される。追加免疫は、2回目接種から「少なくとも5カ月経過した後」に、1回0.2mLを筋肉内に接種する。

臨床試験は、2回目接種から少なくとも6カ月経過後に3回目を接種して有効性や安全性を評価した。ただ、添付文書には、「少なくとも5カ月経過した後に3回目の接種を行うことができる」と表記し、薬事承認する予定。

この理由について厚労省は、2回目から3回目までの接種間隔がコミナティの5~11歳用と12歳以上で異なると現場が混乱するリスクがあるためと説明。現在の12歳以上の「少なくとも5カ月経過した後」の追加免疫における安全性の実績があることも理由の一つに挙げた。

エバシェルド及びコミナティ5~11歳用以外の8月29日の薬食審・医薬品第二部会の審議・報告品目はこちら
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