米FDA ベータサラセミア初の遺伝子治療を承認
公開日時 2022/08/22 04:50
米FDA(食品医薬品局)は8月17日、米bluebird bio社のベータサラセミアに対する遺伝子治療Zynteglo(betibeglogene autotemcel、βA-T87Qグロブリン遺伝子をコード化した自家移植CD34陽性細胞)を承認した。同治療法の適応は、成人および小児において定期的な赤血球輸血を必要とするベータサラセミアである。同治療法は、ベータサラセミアに対する初の遺伝子治療となった。
同疾患は、遺伝性血液疾患で、ベータグロブリンサブユニットの変異により正常なヘモグロビンや赤血球の減少を招来、身体への十分な酸素供給が出来なくなる。低レベルの赤血球細胞は、眩暈、疲労、衰弱、骨異常や重篤な合併症を引き起こす。Zyntegloは、単回投与の1回限りの治療法である。同治療は、機能性ベータグロブリン(ヘモグロビン構成要素)を産生するよう遺伝子的に改変された患者の骨髄細胞を使用するカスタマイズされた治療法である。
同治療の副作用として、血小板減少や他の血球レベルの減少ほか、発熱性好中球減少症、嘔吐、発熱、脱毛、腹痛、筋骨格系の疼痛、頭痛、下痢などがある。また、臨床試験では見られなかったが、血液がん発現の可能性があるので、同治療後はがんの症候がないか少なくとも15年間は血液を監視する必要がある。
FDAは、同治療法について、小児希少疾患のバウチャー(優先審査の指定を他企業や他企業の製品に移転させることを可能として開発促進を図る制度)発行対象としたほか、優先審査、画期的新薬(BT)および希少疾病薬の指定を行った。
FDA医薬品評価研究センター(CDER)のPeter Marksセンター長は、「本日の承認は、ベータサラセミアで特に継続中の赤血球輸血を必要とする患者において重要な進歩である」と評価したうえで、「この重篤な疾患に伴う合併症の可能性を考慮すると、今回の承認は、限定された治療選択肢しかない患者にイノバティブな治療法の開発を支援するFDAの取り組みに焦点を絞ったものだ」とコメントした。
bluebird bio社のAndrew Obenshain最高経営責任者(CEO)は、同治療法がベータサラセミア患者における輸血の負担を軽減させると指摘したうえで、「10年以上の研究及び臨床開発で、臨床家、患者および家族の忍耐のおかげで、Zyntegloの承認は、遺伝子治療分野における重要な転機を記した。ベータサラセミア患者のための初の生体外レンチウイルスベクターの遺伝子治療が承認されたことによって、我々は、現在生涯の負担となっている疾患の治療パラダイムを変える可能性を持つ新時代の先駆けとなっている」と話した。