自民党・甘利議員 東京に世界的イノベーション発信拠点「スタートアップ・キャンパス」設置構想を披露
公開日時 2022/07/13 04:50
自民党の甘利明衆議院議員は7月12日、FRONTEO主催「AI Innovation Forum 2022」で講演し、世界的なイノベーションの発信拠点となる「スタートアップ・キャンパス」を東京に設置する構想を披露した。この構想は岸田政権の“新しい資本主義”に掲げる成長戦略の一つに位置づけられるもの。DXやAIで最先端を走る欧米系の大学や研究機関のサテライトを設けるほか、世界中のベンチャーキャピタル(VC)を呼び寄せる考えだ。甘利氏は、「(この構想は)岸田政権の大政策にこれからなっていく。私は党側の中心として支えたい」と意気込んだ。
「岸田総理の新しい資本主義はアベノミクスの発展系だ」-。甘利氏は講演冒頭でこう強調した。成長と分配はアベノミクスでも取り入れられ、「分配は成長の果実を皆で分配する」という観点で理解されてきたと説明した。一方で岸田首相が掲げる新しい資本主義では、「分配そのものが成長のエンジンになる。つまり分配はいわば投資ということだ」と甘利氏は言い切る。投資という面で岸田首相は、①ヒト、②科学技術・イノベーション、③DX、④スタートアップ-の4つを提示している。甘利氏は、「人件費はコストでなく投資である。つまり生産性やモチベーションをあげていくことは、コストでカットするものでない」と述べながら、その大前提として、「哲学をかえてもらわないといけない」と聴衆に呼び掛けた。
◎「GAFAは軍事研究から派生」 軍と民の研究に境目がなくなっている
イノベーションへの投資の観点からは大学改革の取り組みを紹介。国立大学86校に対する運営費交付金(年間1兆1000億円規模)の配分比率が事前に決まっているなど、運用そのものが硬直化していると指摘。「これでは下剋上が起きない。とても日本の研究開発力が伸びるはずがない」と述べた。その上で、大学ごとの研究テーマ、論文、知財、予算などを可視化したプラットフォーム「e-CSTI」を構築し、科学技術の政策立案などに運用を開始したと説明した。また、「GAFAは軍事研究から派生している」と述べ、「軍事研究は、軍と民の研究に境目がなくなっている。米国で言えば国防総省の研究が世界を変えることに大きく資する」と指摘し、「学術会議は、まず戦後の固定概念を払拭して欲しい」とも強調した。
◎世界中にGAFA予備軍が 日本にもイノベーションが湧き出るエコシステム創設を
新しい資本主義における投資にはスタートアップも含まれる。甘利氏は、「スタートアップは非常に大事で、まさに世界中にGAFA予備軍ができている」と指摘。ヒト・モノ・カネの集まる東京に国際的なスタートアップ・キャンパスを構築したいと明かした。スタートアップ・キャンパスの代表格には、米ニューヨークの「NewLab」、仏パリの「STATION F」、カナダ・トロントの「MaRS」などがある。いずれも科学者や起業家、投資家が集まり、イノベーションの発信拠点として機能している。
甘利氏は、「世界中の最先端の大学のサテライトキャンパスを日本に引っ張ってくる。そうすれば世界のベンチャーキャピタル(VC)もついてくる」と強調。「日本は悲しいかなVCが育っていない。むしろBC(ブローカーキャピタル)ではないかと思う」と指摘し、日本のVC育成に役立てたい考えを滲ませた。甘利氏はまた、「長崎の出島のように、公用語は英語とし、別次元空間としたい。そこから社会変革を起こし、世界を変えるようなイノベーションが湧き出るエコシステムを構築したい。そして新しい資本主義の具体像が見える形を作っていきたい」と期待感を表明した。