日本BI・デシュパンデ次期社長 「患者中心の社内カルチャー醸成」こそ製品価値を最大化する
公開日時 2022/06/03 04:53
日本ベーリンガーインゲルハイムの代表取締役会長兼社長に9月1日付で就任するシャシャンク・デシュパンデ氏は本誌取材に応じ、「医薬品でもサイエンスでもなく、患者さんだけにフォーカスして取り組むことが必要だ」と述べ、患者中心の社内カルチャー醸成に力を入れる考えを示した。今年4月には、「ペイシェントエンゲージメント部門」を立ち上げた。ペイシェント・セントリック(患者中心)の意識を全社に根付かせ、患者のインサイトを開発早期から生かすことで、製品価値を最大化し、患者や医療制度に貢献する姿を描く。日本市場については、「高齢化による医療費抑制の必要性があるにもかかわらず、日本の医療制度は非常に高いイノベ―ションへのコミットメントを持ち続け、いまだにイノベーションを評価している。薬価制度でも、真のイノベーションがあれば、評価しようという意思を感じている」と評価した。
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◎「ペイシェントエンゲージメント部門」を4月に社長直轄で立ち上げ
今年4月に、「ペイシェントエンゲージメント部門」を社長直轄の組織として立ち上げた。デシュパンデ氏は、「臨床開発の段階から、患者さんは我々に非常に深いインプットを与えてくれる」との考えを示す。臨床試験のプロトコルに被験者の主観的な指標である、患者アウトカム(PRO)も積極的に導入するだけでなく、患者向けの最適な資材のあり方や、患者にとって真に役立つデジタルソリューションの確立など、患者のインサイトを活かすことは多岐にわたる。このため、「ペイシェントントエンゲージメント部門が提供する価値は数百のチャンスに匹敵すると考えている」と話す。「ペイシェント・セントリックとは何か、を会社全体に啓発してくれることを願っている」とも強調した。
◎ペイシェント・セントリックとサイエンスは両立する
こうした考えを実現するために、デジタルソリューションの活用も視野に入れる。デシュパンデ氏は、「デジタルソリューションについては、我々の目ではなく、患者さんの目から見たときに、何が有効かをペイシェントントエンゲージメント部門が考えている。現在は、多くのデジタルソリューションが存在するが、どれが本当に価値あるものか考えなければならない」と話す。また、「我々としては医薬品を売り続けたい。そのなかでサポートできるものがあれば探していきたいと考えている」と述べた。
「我々も企業として、よりペイシェント・セントリックになる必要がある。ペイシェント・セントリックとサイエンスは相反するものではなく、両立するものだと考えている。我々の患者サポートにより、患者さんがより優れた医療上の選択をすることになれば、最終的には医療費の適正化につながり、医療制度の持続性に寄与することもできると考えている。一企業としても、患者さんのニーズに応え、より優れたソリューションを届けることで、医療に貢献できると考えている」と強調した。
◎日本の薬価制度「真のイノベーションがあれば評価しようという意思を感じる」
日本市場については、「日本の制度は非常にユニークだ。保険者が国であり、単一であること。承認された医薬品は原則60日以内に薬価収載される。この点がほかの国と大きく異なる点だ。特に、米国とは根本的に異なる。欧米は、市場が断片化しているところがあるが、日本の制度は安定しており、広く受け入れられていると感じている」と国民皆保険である魅力を強調。「高齢化による医療費抑制の必要性があるにもかかわらず、日本の医療制度は非常に高いイノベ―ションへのコミットメントを持ち続け、いまだにイノベーションを評価している。薬価制度でも、真のイノベーションがあれば、評価しようという意思を感じている」とも述べた。