カナグルの2型糖尿病合併CKDの効能追加など7製品審議へ 6月2日の薬食審・第一部会で
公開日時 2022/05/19 18:10
厚生労働省は6月2日に薬食審医薬品第一部会を開催し、SGLT2阻害薬・カナグル錠の「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」の効能追加など、新薬7製品について承認の可否を審議する。このほか、サノフィの寒冷凝集素症治療薬・エジャイモ点滴静注(一般名:スチムリマブ(遺伝子組換え)、BioMarin社が申請した骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症の治療薬ボックスゾゴ皮下注用(同ボソリチド(遺伝子組換え))などが審議される。
【審議予定品目】(カッコ内は一般名、申請企業名)
▽エジャイモ点滴静注1.1g(スチムリマブ(遺伝子組換え)、サノフィ):「寒冷凝集素症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
C1s(免疫系における補体の古典経路活性化の第1段階にあるC1複合体に含まれるセリンプロテアーゼ)を標的としたヒト化モノクローナル抗体。補体の古典経路の活性化は、寒冷凝集素症(CAD) における溶血の中核となる機構で、阻害することで CAD の疾患プロセスを阻止できる可能性がある。
CADは重篤な慢性希少血液疾患で、補体経路とよばれる体の免疫系の一部が自己の正常な赤血球を誤って破壊する。慢性的な貧血や消耗性疲労があり、溶血性発作や生活の質(QOL)の低下がみられる。また、血栓塞栓症や若年死のリスクが上昇するという。
▽カナグル錠100mg(カナグリフロジン水和物、田辺三菱製薬):「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」を対象疾患とする新効能医薬品。
SGLT2阻害薬。同じクラスのフォシーガは「慢性腎臓病(CKD)」の適応を有するが、カナグルは2型糖尿病患者のCKDに関して審議する。
CKDは何らかの原因によって腎臓の機能が低下する状態で、国内患者数は成人の8人に1人、約1330万人と推定されている。2型糖尿病はCKDの発症、進展の大きなリスク因子で、2型糖尿病を伴うCKDの対策は、患者のQOLや医療経済的な観点からも重要な課題になっている。
▽ボックスゾゴ皮下注用(ボソリチド(遺伝子組換え)、BioMarin Pharmaceutical Japan):「骨端線閉鎖を伴わない軟骨無形成症」を対象疾患とする新有効成分含有医薬品。希少疾病用医薬品。
C型ナトリウム利尿ペプチド類縁体。軟骨無形成症患者では、線維芽細胞増殖因子受容体3型遺伝子(FGFR3)の機能獲得変異によって、骨組織の形成に欠かせない軟骨内骨化が負の調節を受ける。同剤はC型ナトリウム利尿ペプチド(CNP)類縁体で、FGFR3シグナル伝達を下方制御して正の調節を行った結果として、軟骨内骨化を促進する。
▽エパデールEMカプセル2g(イコサペント酸エチル、持田製薬):「高脂血症」を対象疾患とする新剤形医薬品。
高純度EPA製剤。イコサペント酸エチルに乳化剤を含めて消化管で吸収されやすく工夫したもので、1日1回投与で用いる。主成分は同社が製造販売するエパデールと同じだが、エパデールは高脂血症に対して1日2回または3回投与で用いる。
▽イグザレルト錠2.5mg(リバーロキサバン、バイエル薬品):「下肢血行再建術施行後の末梢動脈疾患患者における血栓・塞栓形成の抑制」を対象疾患とする新効能・新用量・剤形追加に係る医薬品。
選択的直接作用型第Xa因子阻害薬。今回の追加適応に合わせて、2.5mg錠を追加する。現在は成人の▽非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症抑制、▽静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症及び肺血栓塞栓症)の治療及び再発抑制――、小児の静脈血栓塞栓症の治療及び再発抑制を効能・効果としている。
▽リツキサン点滴静注100mg、同500mg(リツキシマブ(遺伝子組換え)、全薬工業):「視神経脊髄炎スペクトラム障害(視神経脊髄炎を含む)の再発予防」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。希少疾病用医薬品。
抗CD20モノクローナル抗体。視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)は、視神経と脊髄の炎症性病変を特徴とする中枢神経系の自己免疫疾患で、国の指定難病の一つ。国内の患者数は約4300人で、約9割を女性が占めるとされる。永続的な神経障害により、生涯にわたり著しい生活の質の低下が生じるといわれている。患者の多くは症状を繰り返す再発経過をたどり、神経の損傷や障害が蓄積され、視覚障害や運動機能障害、疼痛などが現れるほか、症状の発生が致死的な結果となる場合もある。
▽ベオビュ硝子体内注射用キット120mg/mL(ブロルシズマブ(遺伝子組換え)、ノバルティスファーマ):「糖尿病黄斑浮腫」を対象疾患とする新効能・新用量医薬品。
眼科用VEGF阻害薬。糖尿病黄斑浮腫(DME)は糖尿病患者によくみられる微小血管の合併症で、視力を低下させ、最終的に失明に至る可能性がある。DMEは先進国における成人の失明原因の第1位で、1型糖尿病患者の12%、2型糖尿病患者の28%が罹患しているとされる。
糖尿病に伴う高血糖により、眼の中の細い血管を傷つけられ、滲出液が生じる場合がある。この損傷により、血管内皮増殖因子(VEGF)が過剰に産生される。VEGFは血管の成長を促す蛋白質で、DME患者のVEGF濃度が上昇すると、漏出性のある異常な血管の増殖が誘発される。黄斑部における滲出液の蓄積(浮腫)は疾患活動性の重要なマーカーであり、視力喪失の原因になり得る。