台頭する新興バイオ医薬品企業 多くが日本市場に足場を持たず 「新たなドラッグラグ」発生の要因に
公開日時 2022/05/19 04:51
米国FDAに薬事申請(2021年)された新規有効成分のうち53%が新興バイオ医薬品企業(EBP・Emerging Biopharma)の製品である一方、その多くが日本市場への足場を持たず、欧米や中国に比べて市場導入が遅れがちであることが分かった。いわゆる「新たなドラッグラグ」に位置づけられるもの。IQVIAジャパン臨床開発事業本部の花村伸幸臨床開発統括部長は5月18日のメディアセミナーで、「海外のEBPが日本で新薬開発しやすい環境を整えるほか、日本発のEBPを排出するための施策を早急に行う必要がある」と強調した。
◎2021年にはEBPがR&Dパイプライン全体の65%までシェア拡大
新興バイオ医薬品企業(EBP)とは、売上規模が500億円未満のアカデミアやベンチャー派生の企業が多い。近年は、がんや中枢神経領域でのバイオ医薬品開発などで注目されている。その実力も2021年にはR&Dパイプライン全体の65%までシェアを拡大するに至った。逆に、大手製薬企業のパイプラインは2001年の49%から、21年には24%まで縮小している。もう一つ深刻なのは、国や地域別で見た時に、EBPが創出したパイプラインのシェアが米国46%、欧州20%、中国17%、韓国6%であるのに対し、日本はわずか2%に止まっている点だ。
地域別にみると米国のEBPの動きが活発だ。企業セグメント別のR&Dパイクラインの割合をみると、大手製薬企業のシェア31%に対し、EBPは62%を占める。一方で欧州では大手製薬企業の41%に対し、EBPが47%を占めている。最も成長が著しいのは中国で、すでにEBPが全体の83%を占めている。いかにEBPが欧米・中国市場の医薬品開発をリードしているかが分かるところだ。
◎国内開発を支援する国内治験管理人や薬事コンサルテーション
一方で、大手製薬企業と異なり、海外のEBPの多くは日本法人を持たず、医薬品開発の足場も持っていない。日本市場へのアクセスの遅れがすでに発生しており、これが「新たなドラッグラグ」を生んでいるのだ。このため欧米や中国のEBPの日本国内での新薬開発を支援するための国内治験管理人や薬事コンサルテーションなどの業務が求められるという訳だ。
IQVIAの花村伸幸臨床開発統括部長は、「もちろん日本の製薬企業とEBPが提携して、日本で開発することも考えられるが、世界のトレンドでは、単独でCROが国内治験管理人となって新薬開発するケースが増えている。トレンドとしてはそちらが増えていくのではないかと思う」と述べた。またグローバルプラットフォームを活用することで、EBPのグローバル展開を支援することもできる。さらに花村部長は、日本国内でEBPが育っていないことを指摘。国内から独自のEBPを排出できるような環境整備の必要性を訴えた。