中医協・22年度診療報酬改定を答申 オンライン診療で患者の受診機会増に期待 営利追及への懸念も
公開日時 2022/02/10 05:30
中医協は2月9日、2022年度診療報酬改定を答申した。焦点の一つだった、オンライン診療については初診料を251点、再診料を73点とした。患者の利便性向上も期待されるなかで、支払側の間宮清委員(日本労働組合総連合会「患者本位の医療を確立する連絡会」委員)は同日の会見で、「患者の受診機会を増やすことは大事だ」とオンライン診療の普及に期待を寄せた。一方で、課題もある。日本医師会の中川俊男会長は、「日本医師会は、オンライン診療が営利追求の市場になることを認めない」と牽制した。地域医療提供体制への影響も懸念を示し、必要があれば、「期中であっても速やかに診療報酬要件の見直しを要請する」と強調した。
オンライン診療をめぐっては恒久化に向けた議論が進むなかで、初診の評価が焦点となった。診療報酬上の評価が対面よりも低い点数であることが普及の妨げとなっていることを指摘するなかで、経団連が対面診療と同等の水準とすることを求めるなど声があがっていた。22年度改定では、「初診料(情報通信機器を用いた場合)」を251点とした。診療・支払各側の意見の隔たりが大きく、公益裁定により、「対面診療の点数水準(288点)と、時限的・特例的な対応の点数水準(214点)の中間程度の水準」とすることが決められていた
(関連記事)。このほか、「再診料(情報通信機器を用いた場合)」、「外来診療料(情報通信機器を用いた場合)」はいずれも73点とした。一方で、要件として設定されていた、医療機関と患者との間の時間・距離要件、オンライン診療の実施割合の上限は撤廃された。
◎支払側・間宮委員 体力的、経済的、時間的負担の軽減も
支払側の間宮委員は、移動しないことで患者の体力的、経済的、時間的負担が軽減されるとの見方を示したうえで、「医療機関で広く対応していただけるのかどうか。ちょっと不安だと思う。ぜひ対応していっていただきたいし、国も後押ししていっていただきたい」と述べた。「患者の受診機会を増やすことは大事だ。問題があれば検査をしっかりしましょうと誘導すればいい話で、初診からオンライン診療できるようにしていくことが大事だ」と歓迎した。
支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「オンライン診療は患者にとっては利便性だけでなく、コロナ禍を経験し、感染リスクを軽減できるという安全性のメリットもあると考えている」と述べた。
◎距離要件撤廃に危機感露わに 地域医療への影響を懸念
診療側は、一貫してオンライン診療を対面診療の補完として位置づけることを求めてきた。日医の中川会長は、「オンライン診療は、対面診療と適切に組み合わせて行うことで、患者の安全性と利便性の両方を向上させることもできる」との見解を表明。患者の病態に合わせて活用すべきとの見方も示した。
一方で懸念を示したのが、“営利追及の市場”となることだ。中川会長は、「日医は、オンライン診療が営利追求の市場になることを認めず、心あるかかりつけ医の診療の助けになるよう、必要な軌道修正も見据えつつ、育てていきたい」との考えを示した。特に距離要件が撤廃されることに懸念を示し、日本全国をカバーするような事業者の参入に危機感を露わにした。「オンライン診療が営利となると、地域の先生方はすぐに気づく。この人になぜオンライン診療を行っているのか。それから特定の企業の後押しでオンライン診療を行っているなど、現場の医療提供体制に支障のないようにすることが必要だ」と述べた。
中医協診療側委員の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「例えば、東京にいて地方の患者ばかり選んで診ると、当然距離が離れているので、往診できなし、受診もできない。こうした患者や受診形態が横行すると、その患者をしっかり対面で診ていない先生に救急のみ診ていただくようなことになる。かかりつけ医として本来機能すべき役割が機能しなくなる」と指摘。「かかりつけ医機能を評価して、かかりつけ医をやってもうら日医の考え方や国の施策にも反する。これは地域の医療提供体制にも影響がでる。我々としては、しっかり見ていかないといけない」と述べた。
◎日医・中川会長「期中であっても速やかに診療報酬要件の見直し要請も」
そのうえで、中川会長は、「患者の安心・安全が損なわれたり、地域医療の秩序を混乱させるような事象が生じたりした場合には、期中であっても速やかに診療報酬要件の見直しを要請する」と強調した。