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22年度診療報酬改定 診療側・城守委員「プラス改定しかあり得ない」 支払側は水準の戻りを指摘

公開日時 2021/12/06 04:51
中医協総会は12月3日、医療経済実態調査の結果について、診療・支払各側から見解を聴取した。診療側の城守国斗委員(日本医師会常任理事)は、「地域医療と医療従事者、そして国民の安全を守るためには適切な財源が必要だ。今回の診療報酬改定ではプラス改定しかありえない」との見解を示した。一方、支払側の松本真人委員(健康保険組合連合会理事)は、「今後コロナの状況は流動的だが、今回の調査結果を見る限り、補助金をある程度外しても、十分戻っている」として、コロナ前の水準に戻りつつある実態を指摘した。

医療経済実態調査によると、2020年度の一般病院の医業・介護損益差額は▲6.9%。20年改定前の19年度の▲3.1%から大幅に悪化したものの、新型コロナ関連の補助金を含めると、0.4%の黒字に転じていた。また、今回の調査では6月の単月調査を実施。2021年6月の損益差額は一般病院で▲4.7%で、20年6月の▲6.6%より回復傾向を示したが、コロナ以前の19年6月▲2.3%の水準までは戻らなかった(関連記事)。

診療側の城守委員は、新型コロナ関連の補助金を除くと、診療報酬の特例措置を含めても、損益差額率が大きく悪化したと指摘。補助金を含んだ場合でも、損益差額率は一般病院でほぼプラスマイナスゼロ、一般診療所では19年度よりも縮小したと説明した。6月の単月調査については季節要因の影響を受けることや、賞与等確定していない値について前年度実績の1/2の値を用いているとして、精度が低いと指摘。「およそ架空の数値で構成されたものであり、医療機関の実態を表すものではない」との見解を表明。病院では赤字が継続しており、一般診療所では19年6月を上回ったが、給与費をはじめとする医療・介護費用を削減したことが影響しているとの見方を示した。

◎診療側・有澤委員「小規模薬局の経営基盤は脆弱」 地域の医薬品供給への支障を懸念

保険薬局では、新型コロナ関連の補助金を含めた損益差額率はおおむね+0.2%程度。診療側の有澤賢二委員(日本薬剤師会常務理事)は、補助金を含めないと、法人では▲0.2%とのデータを提示。新型コロナの感染拡大の影響を受け、保険調剤の収益は大幅に減少し、損益差額率は悪化傾向で、補助金を含めても元の水準には戻らないと説明した。特に、店舗数が20店舗以下の中小薬局の経営の厳しさを指摘。「小規模薬局の経営基盤は脆弱だ。今後の地域の医薬品供給にも支障をきたす」と危機感を露わにした。

◎診療側・城守委員 コロナ禍で人材の重要性再認識 適切な財源を
 
診療側の城守委員は、「コロナ禍において、医療現場は感染リスクや風評被害に耐えながら必死で新型コロナに立ち向かってきたが、それにこたえる手当てが十分ではないことが改めて明らかになった。今般の新型コロナ感染症への対応で改めて人材の重要性が認識されたところだ。医療現場で働く医療従事者の働き方改革と処遇改善を推進することが必要だが、医療機関などは給与費を抑制して何とか経営を維持しようとしているのが実態であろうと思う」と説明。「地域医療と医療従事者、そして国民の安全を守るためには適切な財源が必要だ。今回の診療報酬改定ではプラス改定しかありえない」と強調した。

◎支払側 チェーン薬局、敷地内、賃貸借関係のある薬局で利益率の高さ指摘 

一方、支払側の松本委員は、医療経済実態調査の結果から、補助金を含めれば一般病院全体は1.2%の黒字、国公立を除くと2.8%の黒字で、「2013年度以降最も高い水準」であることを指摘した。特に、国公立病院を除く一般病院では300床以上で利益率が高い傾向が認められた。一般診療所については個人では28.8%、医療法人では4.2%の黒字だったと説明。優勝無償にかかわらず黒字で、補助金を含まずとも黒字だったと指摘した。

保険薬局は全体で6.7%の黒字。特に同一グループ20店舗以上の保険薬局では利益率が高く、9.5%の黒字だったと指摘。調査回答数も、年々同一グループ20店舗以上の調査回答数が増加しているとした。また、調剤基本料別にみると、調剤基本料3-ロ(同一グループ薬局による処方せん受付回数が月40万回超で、処方せん集中率85%超、もしくは医療機関との間で不動産の賃貸借取引がある)で9.0%と最も高い利益率だった。立地別では敷地内が13.6%、500以上の大病院前が7.0%で高い水準だった。また、特定の保険医療機関との賃貸借関係がある薬局のほうが、ない薬局よりも高い利益率だった。

◎支払側・松本委員 コロナ影響「適正な規模の補助金が出ていた」

松本委員は、「新型コロナ対応に尽力した医療機関に対し、政府、厚労省はその影響度を十分に見極め、適正な規模の補助金が出ていた」との見解を表明。「今後コロナの状況は流動的だが、今回の調査結果を見る限り、補助金をある程度外しても、十分戻っている」との見方を示した。
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