大日本住友製薬の野村博社長は10月27日、2022年3月期第2四半期(21年4~9月)の決算会見で、アフターコロナ時代のMR活動について、「全面的にFace to Faceになるかといえばそのようなことはなく、オンラインも活用したハイブリッドの形になる」と述べた。医療関係者のニーズに応じて、リアルの活動とともに、コロナ禍で浸透したオンライン面談やネット講演会などの様々なタッチポイントを使うことになるとの見通しを示した。
◎「オンラインでMRを代替するのは難しい」
各社ともコロナ禍でMRの活動量が落ちた。MRの生産性や、今後のMRの適正人員数に対する考えも気になるところだ。
この点について野村社長は、約1年半のコロナ禍での活動経験から、「リアル面談がゼロというのは難しく、Face to Faceでの情報提供もしていかないといけない。オンラインだけでMRを代替するのは難しい」との認識を示した。そして、MRの適正人員数は、「コロナの影響というよりも、どれだけ効果的に情報提供できるか、情報提供すべき品目があるかで決まる」と述べ、ハイブリッド型の活動の成果や新薬数で適正人員数を検討していく構えを見せた。
◎オンラインMR 経験医師のリピートあるも、利用医師数は限定的
デジタルチャネルのみで情報活動する「オンラインMR」に関しては、「一度訪問された医師は、繰り返し活用いただけている」と手応えを語った。ただ、利用医師数はまだ限定的とし、オンラインMRの認知向上に取り組む考えを示した。オンラインMRの体制を拡充するかについては、「しっかり進めたい」と述べるにとどめた。
オンラインMRはいわゆるリモート選任MRのことで、事前予約のあった医師に対してオンライン会議システムなどを使って情報提供するもの。現在、抗精神病薬のラツーダとロナセンテープ、9月に発売した新規の2型糖尿病薬ツイミーグの3剤で展開している。
◎国内売上は1%減収 薬価改定影響大きく
同社の21年度上期の国内売上は766億円(前年同期比1.0%減)だった。21年4月の中間年改定で4%台半ばの改定影響を受け、35億円の減収影響が出たことが大きく響いた。ただ、数量ベースで伸ばし、結果、1.0%の減収にとどめた格好だ。コアセグメント利益は98億円(26.4%減)だった。売上総利益の減少に加え、ツイミーグの販売関連費用の増加などで販管費が増え、減益となった。
野村社長はツイミーグの営業活動について、新規機序ということから「医療関係者の安全性への懸念もあると思われる」とし、糖尿病の専門医を中心に情報提供していることを明らかにした。同剤の発売は日本が初めて。既存の経口血糖降下薬とは異なるテトラヒドロトリアジン構造を有する新クラスの経口血糖降下薬で、ミトコンドリアへの作用を介して、グルコース濃度依存的なインスリン分泌を促す膵作用と、肝臓・骨格筋での糖代謝を改善する膵外作用の2つのメカニズムにより血糖降下作用を示すと考えられている。
◎連結売上12%増 営業利益は横ばい
連結業績は売上2937億円(12.3%増)、営業利益476億円(0.1%増)だった。大日本住友製薬グループが開発中の4つの精神神経領域の新薬候補化合物について、大塚製薬と共同開発・販売提携することになり
(記事はこちら)、この契約一時金2億7000万ドル(297億円)が大日本住友の米国子会社サノビオン社に入ったことが大幅増収の理由となる。
売上総利益は前年同期比で261億円伸びたものの、販管費が309億円増えるなどし、営業利益は前年同期とほぼ横ばいとなった。販管費の増加は、米国での▽進行性前立腺がん治療薬オルゴビクス(一般名:レルゴリクス)▽過活動膀胱治療薬ジェムテサ(同ビベグロン)▽子宮筋腫治療薬マイフェンブリー(同レルゴリクス40mg、エストラジオール1.0mg、酢酸ノルエチンドロン0.5mgの配合剤)――の3剤の販売活動の本格化が主な理由となる。
【21年度上期の連結業績(前年同期比) 21年度予想(前年同期比)】
売上高 2937億3000万円(12.3%増) 5780億円(12.0%増)
営業利益 475億7200万円(0.1%増) 610億円(14.4%減)
親会社帰属純利益 364億5000万円(2.3%減) 410億円(27.1%減)
【21年度上期の国内主要製品売上高(前年同期実績) 21年度予想、億円】
エクア・エクメット 193(204) 374
トルリシティ* 172(168) 382
トレリーフ 84(83) 179
リプレガル 71(69) 138
メトグルコ 41(47) 69
ラツーダ 30(9) 67
ロナセンテープ 10(6) 25
アムロジン 29(33) 50
AG品 48(38)101
仕切価ベース
*は薬価ベースの数値