GSK・張家本部長 オンライン診療、PHR、ePROなどサービス統合 製品を超えた「価値」の提供目指す
公開日時 2021/04/09 04:51
グラクソ・スミスクライン(GSK)のガバメントアフェアーズ&マーケットアクセス本部の張家銘本部長は4月8日、インテグリティ・ヘルスケア主催のWebセミナーで、ICTを活用した疾患管理・最適治療への貢献をテーマに講演した。同社は今年2月に長崎地域医療連携ネットワークシステム協議会「あじさいネット」、インテグリティ・ヘルスケアと包括連携協定を締結し、パイロットスタディを開始したところ。気管支喘息、COPD、全身性エリテマトーデス(SLE)の3疾患を対象とし、ICT基盤を活用した疾患の診断・治療・管理の最適化を検討する。張家本部長は、「ステークホルダーの知見と最先端のテクノロジーを終結することで、製薬企業として、より良い治療が提供できる環境づくりに貢献したい」と意欲を示した。
長崎県の地域医療連携ネットワーク「あじさいネット」を活用したパイロットでは、気管支喘息、COPD、SLEの各疾患について、疾患の治療、管理、支援を目的に、オンライン診療、EHR、PHR、ePROなどの既存サービスを統合させた新たなサービス基盤の検討に着手した。このうちオンライン診療については、インテグリティ・ヘルスケアの疾患管理システム「YaDoc(ヤードック)」が用いられている。
張家本部長は、「対象の3疾患は共有して適切な治療の継続と長期的な疾患管理が求められる。一方で、様々な要因で、医薬品が適切な頻度、適切な方法で使用されずに症状が悪化するケースもある」と指摘。ICT基盤の有効な活用で薬剤のアドヒアランスを向上させたいと意欲を示した。また、いずれの疾患とも新型コロナ感染症のハイリスクグループに分類されると述べ、「オンライン診療を活用することで、患者はオンラインで診療から医薬品の処方せんの配送手続きに至る手続きを完了できる。その結果、通院負担の軽減が図られ、アドヒアランスの向上と感染リスクの経験にもつながる可能性がある」と述べ、期待感を表明した。
さらに医師や薬剤師など医療従事者のメリットにも触れ、「地域医療連携NWやePROを活用することで、患者の症状把握や地域連携がよりしやすくなる。結果的により質の高い疾患の診察、治療、管理がしやすくなる」と期待感を示した。
◎GSKのICT基盤活用事例を報告
張家本部長は、ICT基盤を活用したGSKの取り組みを紹介した。英国・サルフォードでは地域の医療機関75施設と薬局128店舗を1つの電子利用記録システムでつなぎ、COPD患者のリアルワールドエビデンスを創出する取り組みを行っている。2802人の患者が参加して、日常診療に近い環境での医薬品の有効性・安全性の理解向上にむけたデータの集積が進んでいるとした。
◎ePROプラットフォーム活用で臨床研究も実施
一方、日本国内での取り組みでは、沖縄県、慶應義塾大学とGSKが包括的連携契約を締結し、COPDの早期診断支援システムの確立に向けた共同研究を18年9月から実施していると報告。早期診断支援システムについては、インテグリティ・ヘルスケアと共同でePROを活用した妥当性評価の研究を17年5月に行ったほか、COPDの増悪予防を目的としたePROプラットフォーム(YaDoc)の活用に関する臨床研究も19年9月から実施しているとした。
張家本部長はこうした取り組みを行う意義について、「いま日本はかつてないほどの変化を遂げている。今後もますます加速するだろう。こうした環境変化を機会に捉え、自社の強みと外部ステークホルダーの強みをうまく融合させながら、引き続き患者や社会に多くの価値を提供したい」と強調した。