AZ 再発・難治性CLL治療薬カルケンスで血液腫瘍領域に参入 専任MR配置
公開日時 2021/03/12 04:51
アストラゼネカ(AZ)のオンコロジー事業本部の森田慎一郎事業本部長は3月11日のオンラインメディアセミナーで、再発・難治性CLL治療薬カルケンスの上市で血液腫瘍領域に参入すると表明した。乳がん、前立腺がん、肺がん、卵巣がんに続くもの。血液腫瘍領域の第1号となる
カルケンス錠(一般名:アカラブルチニブ)は、1月に承認を取得。再発又は難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)を適応とする選択的ブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害薬だ。
森田事業本部長は、血液腫瘍の専任MRを配置し、丁寧な情報提供・収集活動をしていくと強調した。
AZは1981年に乳がん治療薬ノルバデックス(同タモキシフェン)を発売したことを皮切りに、日本でのオンコロジービジネスを始めた。2020年の薬価ベースの国内売上のうち、オンコロジー領域製品の売上は52%を占める。森田氏は、「(カルケンスで)ようやく血液腫瘍領域に参入できる。会社としても嬉しく思っており、今回の参入は非常に大きなイベント」と話した。
コロナ禍の中での新規参入となるが、森田氏は、「血液腫瘍は当社に経験がない。まず血液腫瘍を診ている先生方にリーチしないといけないが、ここが非常にチャレンジとなっている」と明かした。コロナ禍の中で初見の医師と接点を持つことの難しさを示した格好だ。ただ、「再発・難治性CLLの治療の選択肢になり得るカルケンスをしっかり紹介していくことに今は注力している」とし、「患者数が非常に少ない疾患のため、1例ずつ、先生が診ている患者さんに当社製品を使う機会があるのかどうか、丁寧に情報提供していく」と述べた。
カルケンスはBTKへの選択性が高いことから毒性が少ないとの見方もあるが、森田氏は、「毒性が少ないといったことに関係なく、しっかり副作用関係の情報提供をし、副作用報告を収集しながら、丁寧に活動していく」と強調した。新たに設けた血液腫瘍のMRのほか、肺がん担当MR、肺がん以外(乳がん、卵巣がん、前立腺がん)の担当MRのそれぞれの人数は非開示とした。
カルケンスは第二世代の選択的BTK阻害薬。BTKはB細胞に発現するB細胞受容体(BCR)の下流シグナル伝達分子で、BTKシグナル伝達はB細胞の生存や増殖に大きく関わる。カルケンスはBTKと共有結合することでBTKを不活化し、B細胞性腫瘍の増殖及び生存シグナルを阻害する。CLLなどのB細胞リンパ腫の起源は成熟B細胞で、特にCLLではBCRシグナル伝達経路が常に活性化されていることが知られている。国内のCLL患者数は推計約2000人。このうちカルケンスが適応となる再発・難治例は400~500人程度とされる。
■CLLのファーストライン適応 日本でも開発中
カルケンスのCLLに対するファーストライン適応は欧米で承認されている。同社研究開発本部の青木克益・血液・早期開発オンコロジー領域統括部長は、欧米での試験デザインをもとに日本でもファーストライン適応で開発中と説明した。開発スケジュールは非開示としたものの、「良好な結果が得られれば、日本でも申請する」と話した。
■がん研有明病院の丸山部長 CLLは「適切な病状評価と治療選択が重要」
がん研有明病院血液腫瘍科の丸山大部長はこの日、「CLLのアンメットニーズと課題解決に向けての展望」と題して講演した。「CLLは緩徐進行性の低悪性度腫瘍であり、適切な病状評価と治療選択が重要」と指摘し、「アカラブルチニブは再発・難治性CLL/SLLに新たに承認されたBTK阻害薬であり、1日も早い臨床導入が期待される」と述べた。
アカラブルチニブの特長のひとつとしてBTKへの選択性が高いことを紹介。「一般的な観点」として、「(標的への選択性が低いことによる)オフターゲットの影響により、求めていない有害事象を引き起こす。アカラブルチニブは選択性が高いので、オフターゲットでの有害事象は少ないと思う」との見方を示した。ただし、使用経験が多くなると一定頻度で有害事象も出ることから、「十分に注意しながら、毒性マネジメントをしながら、患者さんを治療していくことが必要だ」とも強調した。
第一世代のBTK阻害薬イブルチニブ(製品名:イムブルビカ)とアカラブルチニブとの使いわけについては、一例としてイブルチニブが奏効しつつも毒性で中止せざるを得なくなった症例や、イブルチニブでの治療から間隔があいて治療を再開する症例を挙げた。
■新型コロナで肺がん検診率下がる 状態悪い患者が増えると「ものすごく危惧」
このほか、この日のセミナーでAZの森田氏が、新型コロナによって肺がんの検診率が下がっていると指摘した上で、「今後、進行がんで非常に状態の悪い患者さんが増えるのではないかと、ものすごく危惧している」と話す場面があった。
森田氏によると、特に肺がんの新規患者が減少しているといい、「これは明らかに新型コロナの影響が出ている。肺がんの検診率が下がっている。偶発的に見つかる肺がん患者が減っているということもある」と述べ、過度な受診控えによるリスクの拡大に懸念を示した。