三菱ケミカルHD 新中計策定でヘルスケアは22年度4500億円に 田辺三菱・上野社長は海外成長に意欲
公開日時 2021/02/26 04:52
三菱ケミカルホールディングスの越智仁代表取締役社長は2月25日、2021年度から22年度までの新中期経営計画「APTSIS25」Step1を発表した。「医療進化」を成長事業領域の柱の一つに位置づけ、20年度の4000億円から22年度に4500億円、25年度に5000億円超まで成長する姿を描いた。同日の会見で、田辺三菱製薬の上野裕明代表取締役社長は、日本市場を「マザーマーケットとして現状のレベルは維持したい」と述べたうえで、米国を中心とした「海外を大きな成長の源泉として、HD全体のヘルスケアの目標である5000億円達成に大きく貢献していきたい」と意欲をみせた。
◎三菱ケミカルHD・越智社長 ヘルスケア分野は「早急な再構築が必要」
20年度までの中期経営計画を振り返った越智社長は、ジレニアの契約規定による仲裁申し立てでロイヤリティを非計上とするなど、ヘルスケア分野の特殊要因が、HDの当期利益を下押ししたと説明した。
越智社長はヘルスケア分野について、米国でラジカヴァの上市を達成したものの、想定よりも浸透が進まなかったことや、VLPインフルエンザワクチンの開発遅延があったことを説明。これらの要因が「収益回復を遅らせている」との見方を示した。そのうえで、田辺三菱製薬の100%子会社化に伴って、「新たな施策を取り入れ、早急な再構築が必要だ」と指摘した。特に今回の“反省点”として、海外企業などへの「ガバナンス関係の見直しも必要だ」と口にした。
◎プレシジョン・メディシンに研究開発費を集中投資 25年度以上の上市拡大へ
新中計ではヘルスケア分野でも飛躍を描く。柱の一つとなるのが、プレシジョン・メディシンを実現する品目の上市だ。プレシジョン・メディシンに研究開発費を集中的に投資し、25年度以降に上市品の拡大を目指す。ゲノム・オミックスデータの利活用などで、患者層を特定したうえで、有効な治療法を提供することを視野に入れる。同社が強みを有する中枢神経領域や免疫炎症領域に、遺伝子治療薬や核酸医薬、RNA標的低分子など新たなモダリティをかけ合わせることで、革新的新薬を生み出したい考えだ。
田辺三菱製薬の上野社長は、「これまで薬が効かなかった難病に対しても創薬のチャンスが拡がっていくと考えている。アンメットニーズも高いと認識している。それなりに保険償還もできるだろうという認識の下、取り組みを今後注力していく」と述べた。
◎ワクチン事業 25年度に1000億円超の成長目指す
新型コロナの感染拡大で、予防医療の重要性が高まるなかで、25年度にはワクチン事業で1000億円超を目指すことも明らかにした。国内では、BIKENグループとの協業を拡大し、生産性向上に向けた基盤強化を図る。北米では新型コロナワクチン(MT-2766)が今夏には第3相臨床試験を終え、21年中に上市予定だ。
また、生命科学インスティテュートが注力するMuse細胞を用いた再生医療等製品については、2021年度中に申請し、22年度の承認を目指す。現在、治験が進められている急性心筋梗塞や脳梗塞などの適応に加え、ALS(筋萎縮性側索硬化症)の臨床試験も開始する予定。米国でも21年度中の治験開始に向けて規制当局と協議に入っているとした。
◎グループ企業のシナジーも データ活用で医・食のトータルヘルスケアビジネスも
グループ企業のノウハウや技術基盤を融合させることで、成長事業領域を拡大することにも意欲を示した。従来事業の加速に加え、健康維持から治療まで新たなヘルスケア事業創出を目指す。田辺三菱と三菱ケミカル、三菱ケミカルホールディングスで、マイクロバイオームを活用したプロジェクトもスタートした。マイクロバイオームデータやデータ解析技術など共通する技術を用いることで、基盤を構築。データを活用して、創薬などの医療や、食素材、さらには健康に関する情報提供などのサービスなど、“トータルへルスケアビジネス”の展開も視野に入れる。
なお、新中期経営計画「APTSIS25」は、新型コロナの影響などで、不透明な状況が続くことを踏まえ、Step1(2021~22年度)の2年間と、Step2(23~25年度)にわけて策定する。Step2は22年度に策定する予定としている。