日医・中川会長 オンライン診療原則解禁は「かかりつけ医を基軸とすべき」
公開日時 2020/10/15 04:52
日本医師会の中川俊男会長は10月14日、オンライン診療の恒久化について、「かかりつけ医やかかりつけ機能を基軸とすべき」と述べた。かかりつけ医機能については、患者が何でも相談でき、医師会活動に参画するなど、地域医療、保健、福祉を担う医師と位置付けた。中川会長は、「地域医療連携、地域包括ケアシステムの構築・充実を一層進めなければいけない。その中心が、かかりつけ医と、地域医師会によるかかりつけ医機能の推進活動だ。オンライン診療はその中で捉えていくいくべき」と強調した。菅政権が進めるデジタル社会の実現に日本医師会としても協力する姿勢を示したうえで、「かかりつけ医を基軸として、地域医療を担う医師、患者・国民の双方が真に納得できる仕組みづくりを目指し、議論に臨む」と述べ、細部について政府との調整に臨む姿勢を鮮明にした。
◎初診に慎重姿勢崩さず 利便性追求に反対「3大臣合意後も変わらない」
オンライン診療をめぐっては、河野河野行政改革・規制改革担当相、平井デジタル改革担当相、田村厚労相が「安全性と信頼性をベースに、オンライン診療について初診を含め原則解禁する」ことで合意した。日本医師会は、「解決困難な要因によって、医療機関へのアクセスが制限されている場合に、適切にオンライン診療で補完する」、「利便性のみを優先したオンライン診療は医療の質低下につながりかねない」とのスタンスを示しており、中川会長は、「3大臣合意後も変わらない」と強調した。
◎安全性・信頼性確保に「情報連携」の重要性指摘
今後、政府との調整が、安全性・信頼性をいかに担保するかに移る。中川会長は、安全性・利便性の担保を「必須条件」と強調。さらに、「有効性も担保される必要がある」と続けた。そのうえで、「初診で、初めての患者、医師、医療機関がいきなりオンライン診療というのは、患者にとっても非常に不安だというのは共通認識だ。かかりつけ機能・かかりつけ医機能を基軸として安全性・信頼性を担保するのが自然の流れになるのではないかと期待している」と述べた。
オンライン診療は、対面診療に比べて顔色や動作がわからないなど情報不足も指摘されるが、「オンライン診療の欠点をカバーするくらいの情報連携、信頼関係が大事なポイントだ」と述べた。「地域医療連携、地域包括ケアシステムでは情報連携が欠かせない」とも述べ、今後医療の世界でデジタル化が進むなかでの情報連携の必要性にも言及した。
◎若年層もオンライン診療活用見据え「かかりつけ医に健康相談を」
かかりつけ医については、日本医師会と四病院団体協議会が2013年に合同提言した「医療提供体制のあり方」を引き合いに、「なんでも相談できる上、最新の医療情報を熟知して、必要な時には専門医、専門医療機関を紹介でき、身近で頼りになる地域医療、保健、福祉を担う総合的な能力を有する医師」と説明した。地域での情報共有や学校保健など、医師会活動への参画にも言及し、地域に根差した医師である必要性を強調した。
若年層などではかかりつけ医を持たないことも指摘されているが、「近い将来、オンライン診療を受診する可能性があるのであれば、あらかじめかかりつけ医になりそうな医師に健康相談をしておいてはいいのではないか、と推奨したい」と述べた。日本医師会は、かかりつけ医によるオンライン健康相談を提案している。かかりつけ医が、患者だけでなく患者家族を含め、予防から一貫してかかわることで、健康寿命の延伸に貢献する姿を描いており、こうしたかかりつけ機能を発揮した場合の診療報酬上の評価も求めている。
◎ICT、デジタル技術を医療の質向上に応用する方向性「大いに支持」
菅政権がデジタル社会の実現に注力する。中川会長は、「日本医師会は、ICT、デジタル技術など技術革新の成果を医療の質向上に応用する方向を大いに支持する」、「平時、有事の双方で、良質かつ適切な医療が提供できるよう、日医としても医療のICT化を積極的に進めていく」と述べ、政府の方向性に協力する姿勢も強調した。