厚労省 添付文書改訂を指示 キイトルーダに「中毒性表皮壊死融解症」を追記
公開日時 2020/04/01 04:51
厚生労働省医薬・生活衛生局は3月31日、重大な副作用などが判明した医療用医薬品の添付文書を改訂するよう、日本製薬団体連合会に医薬安全対策課長通知で指示した。改訂指示があったのは抗精神病薬等15成分のほか、G-CSF製剤ジーラスタ、がん免疫療法薬キイトルーダ、抗ウイルス薬のアシクロビル(一般名)及びバラシクロビル(同)、帯状疱疹用薬アメナリーフ、抗インフルエンザウイルス薬ゾフルーザ――の計21成分。このうちキイトルーダは、中毒性表皮壊死融解症との因果関係が否定できない症例が7例あり、うち因果関係が否定できない死亡が1例あったことから、中毒性表皮壊死融解症を添付文書の「重大な副作用」に追記することになった。
添付文書の改訂指示があった医薬品は次の通り。カッコ内は販売名、承認取得者。
▽抗精神病薬等15成分
1)スピペロン(スピロピタン錠、サンノーバ)
2)スルトプリド塩酸塩(バルネチール錠・同細粒、共和薬品 など)
3)スルピリド(アビリット錠/大日本住友製薬 など、ドグマチール錠・同細粒・同カプセル・同筋注/アステラス製薬)
4)チミペロン(トロペロン錠・同細粒・同注、アルフレッサファーマ など)
5)ネモナプリド(エミレース錠、LTLファーマ)
6)ハロペリドール(セレネース錠・同細粒・同内服液・同注、大日本住友製薬 など)
7)ハロペリドールデカン酸エステル(ネオペリドール注/ジョンソン・エンド・ジョンソン、ハロマンス注/ヤンセンファーマ)
8)ピパンペロン塩酸塩(プロピタン錠・同散、サンノーバ)
9)ピモジド(オーラップ錠・同細粒、アステラス製薬)
10)フルフェナジンデカン酸エステル(フルデカシン筋注、田辺三菱製薬)
11)ブロナンセリン(ロナセン錠・同散・同テープ、大日本住友製薬 など)
12)ブロムペリドール(インプロメン錠・同細粒、ヤンセンファーマ など)
13)ペロスピロン塩酸塩水和物(ルーラン錠、大日本住友製薬 など)
14)モサプラミン塩酸塩(クレミン錠・同顆粒、田辺三菱製薬)
15)アクラトニウムナパジシル酸塩(アボビスカプセル、富士フイルム富山化学)
1)~14)薬効分類:117 精神神経用剤
上記に加え、3)薬効分類:232 消化性潰瘍用剤
15)薬効分類:123 自律神経剤
指示概要:
1)4)5)8) 「禁忌」の項の「パーキンソン病のある患者」に対する注意喚起に、「レビー小体型認知症」を追記する。
2)6)7)10)12)14)15) 「禁忌」の項の「パーキンソン病の患者」に対する注意喚起に、「レビー小体型認知症」を追記する。
11)13) 「慎重投与/特定の背景を有する患者に関する注意」の項の「パーキンソン病のある患者」に対する注意喚起に、「レビー小体型認知症」を追記する。
3) 「慎重投与/特定の背景を有する患者に関する注意」の項の「パーキンソン病の患者」に対する注意喚起に、「レビー小体型認知症」を追記する。
9) 「禁忌」の項の「うつ病・パーキンソン病の患者」に対する注意喚起を「うつ病の患者」及び「パーキンソン病の患者」に分け、「パーキンソン病の患者」に対する注意喚起に「レビー小体型認知症」を追記する。
過去3年間の国内報告数のうち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例は0例。
改訂理由:「認知症を伴うパーキンソン病」はパーキンソン病の病態の一部だが、近年、「認知症を伴うパーキンソン病」と「レビー小体型認知症」の病態の類似性が示されている。パーキンソン病の患者への投与について「禁忌」又は「慎重投与/特定の背景を有する患者に関する注意」の項で注意喚起されているこれら医薬品において、「レビー小体型認知症」についても明確に注意喚起を行うことが適切と考え、専門委員の意見も踏まえ、改訂が適切と判断した。
▽ペグフィルグラスチム(遺伝子組換え)(ジーラスタ皮下注、協和キリン)
薬効分類:339 その他の血液・体液用薬
指示概要:「その他の注意」の項に、国内の医療情報データベースを用いた疫学調査において、同剤の投与後に血小板減少のリスクが増加した旨を追記する。
過去3年間の国内報告数のうち、医薬品と血小板減少関連症例(事象)との因果関係が否定できない症例は1例。医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例0例。
改訂理由:抗がん剤投与終了後の翌日以降に使用されるため、抗がん剤による造血障害の影響は排除できず、血小板減少との因果関係を評価することは困難であるが、血小板減少関連の症例集積及びMID-NETを用いた血小板数減少に関する調査の結果に鑑み、専門委員の意見も踏まえ、血小板減少を「その他の注意」の項で注意喚起することが適切と判断した。
▽ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)(キイトルーダ点滴静注、MSD)
薬効分類:429 その他の腫瘍用薬
指示概要:「重大な副作用」の「皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑」の項に、「中毒性表皮壊死融解症」を追記する。
過去3年間の国内報告数のうち、医薬品と中毒性表皮壊死融解症(事象)との因果関係が否定できない症例は7例。うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例1例。
改訂理由:国内症例が集積したことから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。
▽アシクロビル(経口剤及び注射剤)(ゾビラックス錠・同顆粒・同点滴静注用、グラクソ・スミスクライン など)
▽バラシクロビル塩酸塩(バルトレックス錠・同顆粒、グラクソ・スミスクライン など)
薬効分類:625 抗ウイルス剤
指示概要:「重大な副作用」の「急性腎不全/急性腎障害」の項に、「尿細管間質性腎炎」を追記する。
過去3年間の国内報告数のうち、医薬品と尿細管間質性腎炎(事象)との因果関係が否定できない症例は、バラシクロビルで3例。うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例0例。
改訂理由:バラシクロビルの国内症例が集積したこと、バラシクロビルはアシクロビルのプロドラッグであることから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。
▽アメナメビル(アメナリーフ錠、マルホ)
薬効分類:625 抗ウイルス剤
指示概要:「重大な副作用」の項を新設し、「多形紅斑」を追記する。
過去3年間の国内報告数のうち、医薬品と多形紅斑関連症例(事象)との因果関係が否定できない症例は5例。うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例0例。
改訂理由:「多形紅斑」について、因果関係が否定できない国内症例が複数集積したことから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。なお、「中毒性表皮壊死融解症」及び「皮膚粘膜眼症候群」についても、国内症例が集積したことから、「多形紅斑」とともに「重大な副作用」の項に追記することを検討したが、専門委員の意見及び因果関係が否定できない症例の集積が乏しいことを踏まえ、現時点では追記しないことが適切と判断した。
▽バロキサビル マルボキシル(ゾフルーザ錠・同顆粒、塩野義製薬)
薬効分類:625 抗ウイルス剤
指示概要:「重大な副作用」の項に「虚血性大腸炎」を追記する。
過去3年間の国内報告数のうち、医薬品と虚血性大腸炎(事象)との因果関係が否定できない症例は8例。うち、医薬品と事象による死亡との因果関係が否定できない症例0例。
改訂理由:国内症例が集積したことから、専門委員の意見も踏まえ、改訂することが適切と判断した。