PhRMA 「患者中心の医療」実現で投資への理解求める 薬剤費削減はアクセスを阻害
公開日時 2020/02/20 04:51
米国研究製薬工業協会(PhRMA)のクリス・フウリガン在日執行委員会委員長(ヤンセンファーマ代表取締役社長)は2月19日、都内で会見に臨み、薬価財源について「患者さんへの必要不可欠な投資として捉えるべき。少子高齢化で医療費の削減が求められるなか、新しい医薬品は投資に資する重要なソリューションだ」と述べた。薬剤費の削減が結果的に、国内での革新的新薬へのアクセスを阻害する可能性を指摘。患者を含めたステークホルダーが集結するプラットフォームの構築で、「患者中心の制度の中で患者にとって最も良いアクセス、結果を出したい」と述べ、投資への理解を求めた。2021年度から導入される薬価毎年改定(中間年改定)については、後発品や長期収載品など「収載価格と市場価格が大きいものに留めるべき」と主張した。
フウリガン委員長は、社会保障費の圧縮のうち、薬価改定などによる削減が75%(5096億円)に当たるとのデータを示した。さらに、2016年度以降過去3回の薬価制度改革で56項目が見直されたことに触れ、「予見性や透明性が失われることで新たな薬を導入する能力が損なわれる」と指摘し、「薬価を引き下げることが医療費を引き下げる方法ではなく持続可能性がない」と訴えた。
一方で、PhRMA加盟各社が抗がん剤や希少疾病用医薬品などの革新的新薬を通じ、患者や患者家族に「生きる望みをもたらしている」と説明。
「患者さんの存在ありきで、医薬品産業も存在する」として、患者中心の医療に製薬企業が貢献していることを強調した。そのうえで、現在の薬価についての政策決定のプロセスで患者がステークホルダーになっていないことに問題を投げかけた。
◎フウリガン委員長「患者は重要なリソース」 薬価も「患者がシステムデザインを」
同日開かれたパネルディスカッションでは、患者団体の代表を交え、患者中心の医療についてディスカッションを行った。フウリガン委員長は、「医療ステークホルダーにとって患者さんは重要なリソースだ」との見解を表明。医療制度を利用する利用者であり、治療の対象者であり、政府にとっては納税者であると続けた。こうした存在である患者にとって、「持続可能な形で社会保障の価値を享受できる医療制度でなければならない」との見解を示した。そのうえで、「薬価決定に関しても、どういう薬を望むか。患者がシステムをデザインできることが必要だ。患者の声がさらに聞こえるようにしないといけない」と述べた。
法政大経済学部の小黒一正教授は、薬価制度改革による社会保障費の圧縮では「限界がある」と指摘。経済物価動向に応じたマクロスライド方式を導入するなどして、「診療報酬本体に切り込む必要がある」と述べた。
なお、PhRMAの2020年の活動方針は、薬価制度に加え、費用対効果評価、臨床開発/薬事、予防接種制度が柱となっている。臨床開発では、先駆け審査指定制度や条件付き早期承認制度の指定品目数や承認品目数を欧米並みに増やすことなどを求める考えも示した。