日薬連 「医薬品供給調整スキーム」策定 新型コロナで中国からの原薬供給不安に備え
公開日時 2020/02/10 04:52
中国・武漢市を中心に新型コロナウイルスに関連した肺炎が拡大するなか、日本製薬団体連合会(日薬連)は2月7日、「医療用医薬品の供給調整スキーム」を策定し、関連団体に通知した。原薬は先発品、後発品ともに中国で製造されているケースが多く、新型コロナウイルスの蔓延が長期化することで工場の稼働などへの影響も懸念されている。製薬各社は以前から安定供給に向けて原薬のダブルソース化などの対応を進めてきたが、緊急時に備え、手順を決めた。具体的には、「市場シェア(数量ベース)30%以上の医薬品について、1か月以上の欠品が見込まれる事案」を供給不安に位置づけ、「供給調整チーム」を発足。厚労省と密に連携し、代替薬の在庫や出荷調整などの対応を取ることで、安定供給を継続させたい考えだ。
◎代替薬などの企業で供給調整チーム結成 経済課と密に連絡も
通知では、日薬連傘下団体に加盟する製造販売業者に「供給調整チーム」について、供給調整チームリーダーや、代替薬を検討する人、増産・在庫調整を検討する人などの担当者をあらかじめ決めることを求めた。一方で、日薬連には、日薬連の品質委員会委員長やGEロードマップ対応プロジェクトリーダー、流通問題連絡会座長、日本ジェネリック製薬協会流通適正化委員長らで構成する「医薬品供給調整スキームタスクフォース」を置き、スキームの着実な運営や厚労省医政局経済課との連携を担う。
市場シェア30%以上で1か月以上の欠品が見込まれる“供給不安”が発生した際に、当該製造販売業者は直ちに、経済課に連絡。経済課と相談し、医薬品の供給調整が必要だと判断した場合、日薬連に報告する。日薬連の医薬品供給調整スキームタスクフォースの招集を受け、「供給調整チーム」を発足させる。供給調整チームは、供給不安が発生した製造販売業者の提出する同一成分薬、代替薬のリストに基づき、複数企業で結成する。供給調整チームリーダーには、供給不安が発生した製造販売業者が就く。また、経済課にもチームへの参画を求めるとしている。
供給調整チームでは、①当該医薬品、同一成分薬、代替薬の在庫の評価(卸在庫含む)、②出荷調整の検討と調整後の積み上げ在庫の評価、③増産の検討-などを検討する。卸在庫の調整などの対応が必要な場合は経済課を通じ、日本医薬品卸売業連合会(卸連)に協力を要請する。
◎十分な供給実現できない場合は厚労省から医療機関に通知発出も
このスキームで直ちに十分な供給が実現する場合を除き、経済課から医療関係団体などに通知を発出する。当該医薬品の適正使用に加え、治療の中断や手術の延期などの重大事案の発生が懸念される場合は厚労省に連絡するよう促す。経済課は供給調整に必要な情報を供給調整チームと情報共有する。供給調整チームは、供給調整に対応する製造販売業者などを調整し、卸と連携し、医療機関への供給調整を実施するとしている。
◎厚労省 事務連絡で在庫状況や製造見通し確認求める 「安全供給に万全を期す」
今回の対応は、厚労省医政局経済課が日薬連など関連団体宛に、4日付で事務連絡「新型コロナウイルスに関連した感染症発生に伴う医薬品原料等の確保について」を発出したことを受けたもの。事務連絡では、「医療用医薬品の安定供給に万全を期す」ため、中国で製造される医薬品の原料・原薬について、在庫状況や今後の製造の見通しなどの確認を求めるとともに、必要に応じて、別の製造ルートの確保等に努めることを求めていた。
日薬連は2014年に「ジェネリック医薬品供給ガイドライン」を策定。19年には、「医療用医薬品の安定供給に関する自己点検の実施について」を発出し、原薬の安定調達や、医薬品の医療上の必要性についてのチェックリストを示した。19年には、抗菌薬・セファゾリンで供給が不安定になった問題なども表面化した。ジェネリックメーカー各社が原薬の製造国開示に踏み切ったほか、ダブルソース化に取り組むなど、安定供給に向けた対応が進められている。