医療用薬11製品 効能追加など承認取得 免疫療法薬バベンチオ、キイトルーダに腎細胞がん追加
公開日時 2019/12/23 04:52
医療用医薬品11製品が12月20日、効能追加などの承認を取得した。免疫チェックポイント阻害薬の抗PD-L1抗体バベンチオ(一般名:アベルマブ)や抗PD-1抗体キイトルーダ(ペムブロリズマブ)は、それぞれ腎細胞がんの効能を追加した。両剤とも、チロシンキナーゼ阻害薬のアキシチニブと併用して用いる。キイトルーダは頭頸部がんの効能も追加した。
また、厚労省の未承認薬・適応外薬検討会議の議論を経て開発要請されたボトックス注用(A型ボツリヌス毒素)に、既存治療で効果不十分な過活動膀胱・神経因性膀胱の効能を追加することも承認された。
■シムジアの乾癬適応 プロモーションはUCB単独
ペグヒト化TNFα阻害薬シムジア(セルトリズマブ ペゴル)は今回、乾癬の適応を追加した。同剤はUCBジャパンが製造販売元。UCBは既承認適応の「関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止含む)」でアステラス製薬とコ・プロモーションしているが、乾癬の適応はUCBの単独プロモーションで展開する。
承認された製品は以下のとおり(カッコ内は一般名、製造販売元)。
▽バベンチオ点滴静注200mg(アベルマブ(遺伝子組換え)、メルクバイオファーマ):「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」を追加する新効能・新用量医薬品。
がん免疫療法薬で、ヒト型抗ヒトPD-L1モノクローナル抗体。腎細胞がんの標準薬として広く普及しているチロシンキナーゼ阻害薬インライタ(一般名:アキシチニブ)と併用して用いる。この場合、アベルマブを1回10mg/kg(体重)を2週間間隔で1時間以上かけて点滴静注する。チロシンキナーゼ阻害薬と併用して用いる免疫チェックポイント阻害薬は今回が初めて。メルクバイオファーマとファイザーは同剤で戦略的提携関係にある。
▽キイトルーダ点滴静注20mg、同点滴静注100mg(ペムブロリズマブ(遺伝子組換え)、MSD):「根治切除不能又は転移性の腎細胞がん」と「再発又は遠隔転移を有する頭頸部がん」を追加する新効能・新用量医薬品。
がん免疫療法薬で、ヒト化抗ヒト PD-1 モノクローナル抗体。今回追加する腎細胞がん、頭頸部がんともに化学療法歴のない患者に用いる。
腎細胞がんの適応では、腎細胞がんの標準薬として広く普及しているチロシンキナーゼ阻害薬インライタ(一般名:アキシチニブ)と併用して用いる。チロシンキナーゼ阻害薬と併用して用いる免疫チェックポイント阻害薬は今回が初めて。頭頸部がんに対しては単独療法及び化学療法との併用療法の両方で承認された初の免疫チェックポイント阻害薬となる。
▽オフェブカプセル100mg、同カプセル150mg(ニンテダニブエタンスルホン酸塩、日本ベーリンガーインゲルハイム):「全身性強皮症に伴う間質性肺疾患」の効能・効果を追加する新効能医薬品。
低分子チロシンキナーゼ阻害薬で、血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)αβ及び線維芽細胞増殖因子受容体(FGFR)1,2,3及び血管内皮増殖因子受容体(VEGFR)を標的とする。
全身性強皮症に伴う間質性肺疾患(SSc-ILD)は、全身性強皮症の死因として最も多く、末期病変まで進行した場合には肺移植以外で機能回復は不可能であるため、早期に適切な治療介入を行うことが重要となる。現在SSc-ILDに使用されている薬剤は免疫抑制薬で、オフェブは抗線維化作用を有する初のSSc-ILD治療薬となる。
▽アドセトリス点滴静注用50mg(ブレンツキシマブベドチン(遺伝子組換え)、武田薬品):「末梢性T細胞リンパ腫」の効能・効果を追加し、「再発又は難治性の未分化大細胞リンパ腫」を削除する新効能・新用量医薬品。
微小管阻害薬結合抗CD30モノクローナル抗体。これまでの効能・効果は、「ホジキンリンパ腫」、「再発又は難治性の未分化大細胞リンパ腫」だったが、今回、再発又は難治性の未分化大細胞リンパ腫を含む「末梢性T細胞リンパ腫」との広い概念のリンパ腫に改める。未治療の患者にも使用できるようにするほか、既治療の患者(再発又は難治性の患者)では小児にも使えるようにする。
▽ダラザレックス点滴静注100mg、同点滴静注400mg(ダラツムマブ(遺伝子組換え)、ヤンセンファーマ):効能・効果の「多発性骨髄腫」の用法・用量を変更する新用量医薬品。
ヒト型抗CD38モノクローナル抗体。今回、造血幹細胞移植を伴う大量化学療法が非適応で未治療の多発性骨髄腫患者にダラザレックス、レナリドミド、デキサメタゾンの3剤併用療法(DRd)を可能とする。また、ダラザレックスは他の抗悪性腫瘍薬と併用して用いるが、併用薬の投与サイクルを考慮して、同剤をA法またはB法の2通りの投与間隔で点滴静注できるようにする。
A法は1週間間隔、2週間間隔及び4週間間間隔の順で投与する。B法は1週間間隔、3週間間隔及び4週間間隔の順で投与する。
▽オルケディア錠1mg、同錠2mg(エボカルセト、協和キリン):「副甲状腺がん並びに副甲状腺摘出手術または術後再発の原発性副甲状腺機能亢進症における高カルシウム血症」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
カルシウム受容体作動薬。原発性副甲状腺機能亢進症(PHPT)は、副甲状腺に発生する腫瘍などから副甲状腺ホルモン(PTH)が自律的に過剰分泌される疾患で、PTH の高値により血清カルシウム濃度が上昇する。第一選択は副甲状腺摘出術(PTx)だが、合併症などの問題でPTx不能なPHPTなどでは、高カルシウム血症のコントロールが難しいという問題があった。
▽ザバクサ配合点滴静注用(セフトロザン硫酸塩/タゾバクタムナトリウム、MSD):適応菌種に「セラチア属及びインフルエンザ菌」を、適応症に「敗血症及び肺炎」を追加する新効能・新用量医薬品。
β-ラクタマーゼ阻害剤タゾバクタム0.5gに新規のセフェム系薬セフトロザン1.0gを配合したもの。敗血症及び肺炎の新たな治療選択肢となる。これまでは血流感染を起こしやすく、重症化することがある尿路感染症や腹腔内感染症の治療に使われている。
▽シムジア皮下注200mgシリンジ、同皮下注200mgオートクリックス(セルトリズマブペゴル(遺伝子組換え)、ユーシービージャパン):「既存治療で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、膿疱性乾癬及び乾癬性紅皮症」の効能・効果を追加する新効能・新用量医薬品。
ペグヒト化抗ヒトTNFαモノクローナル抗体Fab断片製剤。TNFαとTNFα受容体との結合を阻害することによりTNFαの生物活性を中和する。既承認適応の「関節リウマチ(関節の構造的損傷の防止含む)」はアステラス製薬とコ・プロモーションしているが、乾癬の適応はUCBの単独プロモーションで展開する。
▽ボトックス注用50単位、同注用100単位(A型ボツリヌス毒素、グラクソ・スミスクライン):「既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない過活動膀胱における尿意切迫感、頻尿及び切迫性尿失禁、既存治療で効果不十分又は既存治療が適さない神経因性膀胱による尿失禁」を効能・効果とする新投与経路医薬品、および、「上肢痙縮」を効能・効果とする新用量医薬品。
今回承認された過活動膀胱・神経因性膀胱の適応は、日本排尿機能学会から開発要望が出され、厚労省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の議論を経て、厚労省から開発要請されたもの。脊椎損傷患者で排尿障害を発症するケースなどがあり、ボトックスを直接、膀胱に注射するなどして用いる。
上肢痙縮の追加承認により、筋注できる腕の範囲に新たに上腕二頭筋や上腕筋、腕橈骨筋が加わり、これに伴って用量が400単位に増量される。
▽献血ベニロン-I静注用500mg、同静注用1000mg、同静注用2500mg、同静注用5000mg(乾燥スルホ化人免疫グロブリン、KMバイオロジクス):「視神経炎の急性期(ステロイド剤が効果不十分な場合)」の効能・効果を追加する新効能・新用量医薬品。
急性期の視神経炎は、治療法としてステロイドパルス療法が第一選択薬となっている。同剤の今回の追加承認の取得により、ステロイド剤で効果不十分な場合の治療選択肢が増えることになる。免疫グロブリン製剤が今回の適応を取得するの初めて。
▽献血ヴェノグロブリンIH5%静注0.5g/10mL、同IH5%静注1g/20mL、同IH5%静注2.5g/50mL、同IH5%静注5g/100mL、同IH5%静注10g/200mL、同IH10%静注0.5g/5mL、同IH10%静注2.5g/25mL、同IH10%静注5g/50mL、同IH10%静注10g/100mL、同IH10%静注20g/200mL(ポリエチレングリコール処理人免疫グロブリン、日本血液製剤機構):「抗ドナー抗体陽性腎移植における術前脱感作」を効能・効果とする新効能・新用量医薬品。
血液中に欠乏しているガンマグロブリンを補うことで免疫力を高めたり、抗生物質と同時に使用することで感染治療の効果を高めたりする。厚労省の資料によると、ドナーに対する抗体陽性レシピエントを脱感作する方法で保険適用されているのは二重ろ過血漿交換療法しかなく、類薬もない。