加藤勝信厚生労働相は12月11日、東京都内で講演し、直面する2020年度予算編成に向けた課題について語った。次期診療報酬改定については、医師の働き方改革に必要な財源を確保するとしながらも、「診療報酬でやるのか、基金を活用するのかで議論をしている」と述べ、この結果を踏まえて診療報酬本体の改定率について近々に結論を得るとの認識を表明した。政府の全世代型社会保障検討会議で争点となっている後期高齢者の窓口2割負担については、すでに「応能負担」の考え方に切り替えて議論していることを明らかにした。外来受診時定額負担の導入も「それほど考えていない」と強調。現在は400床以上の大病院で導入している初・再診時の選定療養拡大や、かかりつけ医機能の強化などで対応していく方針を明示した。

次期診療報酬改定について加藤厚労相は、医師の働き方改革とそれ以外の項目は切り分けて考える必要があると強調した。日本医師会は、「地域医療介護総合確保基金と医療情報化支援基金のさらなる積み増し」を求めている。加藤厚労相も、医師の働き方改革について基金の活用がすでに視野に入っているとしながらも、診療報酬本体との兼ね合いについても調整することになると見通した。働き方改革の財源を基金で賄う案については、すでに政府内でも議論の俎上にあがっているところ。ただ、地域間や、大病院と中小病院間で財源の配分に格差が生じることなどが指摘されている。このため地域医療の現場からは、200床未満の中小病院とかかりつけ医の連携を促進する観点から、診療報酬本体での対応を求める声もあがっている。基金の活用を含めて、今後の予算編成作業の最終調整に委ねられることになる。

一方で診療報酬本体の改定率について加藤厚労相は、「医療経済実態調査の結果を見る限り、一般病院はやや改善しているようだが、中身をみると、人件費比率が年々あがっている」と指摘。令和元年度の4～10月の数字をみると、「さらに人件費比率が高く、賃金の上昇が増えている」と述べ、何らかの手当が必要になると見通した。

◎受診時定額負担「考えていない」　大病院選定療養拡大とかかりつけ医機能強化で対応

加藤厚労相は講演で、全世代型社会保障をめぐる議論の経過を説明した。後期高齢者の負担のあり方について、「後期高齢者の窓口負担を原則1割から2割にするという話もあるが、そういう議論をしている訳ではない」と強調。「大事なことは、年齢が高い低いでなく、各自の負担能力や医療費の状況に応じた公平な負担をそれぞれにお願いすることにある」と述べ、応能負担をベースに国民から納得感が得られるような議論を行うことが望ましいと表明した。

外来受診時定額負担については、「ワンコインという議論もあったが、これもそれほど考えているのでない」と強調。3割負担を上限とすることは法律の附則にも明記されていると述べ、「この原則を超えると保険制度のあり様が大きく問われる。したがって、そうした議論ではない」と一蹴した。ただ一方で、「なんでもかんでも大病院の外来を受診するようなことがある」と指摘。そのことが大病院に勤務する医師の働き方にも影響を与えるとし、「まさにそこをどう整理するかだ」と問題意識を表明した。対応策として、紹介状を持たない患者が400床以上の大病院を受診する際に支払う大病院選定療養（初診時5000円、再診時2500円）の範囲を拡大することも一考とした。「この仕組みをベースに、かかりつけ医機能と大病院との機能分化をどう進めるかを議論するべきだと考えており、いまそういう観点に立って議論をしている。どこまで中間とりまとめにどうなるかが焦点となっている」と述べた。

◎中医協　病院受診時の選定療養の範囲拡大を了承　200床以上の地域医療支援病院

紹介状を持たずに大病院を受診する場合の患者の定額負担を拡大する方向性が同日の中医協で了承された。軽症患者には、まずは中小病院や診療所を受診してもらう仕組みを構築することで、大病院受診を抑える狙いがある。現行制度では特定機能病院及び400床以上の地域医療支援病院で初診時に5000円、再診で2500円を負担する。厚労省は、この日、対象範囲を「200床以上の地域医療支援病院」に拡大することを提案。診療・支払各側が了承した。400床以上の地域医療支援病院は420施設だが、対象拡大で250施設が加わり、全国670施設とほとんどの地域医療支援病院が対象となる。