自・公両党が全世代型で意見集約 応能負担を明記へ 高齢者負担割合「明記すべきでない」
公開日時 2019/12/11 04:52
全世代型社会保障改革をめぐり自民・公明の両党は12月10日、それぞれ党内の意見取りまとめに向けた議論を行った。自民党は社会保障の「支え手」を確保する観点から、年齢でなく負担能力(所得と資産)に応じた「応能負担」の考え方を取り入れる方針を固めた。争点の高齢者の窓口負担2割引き上げについては、党内から根強い慎重論があることから、今後の調整を岸田文雄政調会長に一任した。一方、公明党も同様に、高齢者の負担増については、国民から納得を得る議論が必要とし、拙速な議論に警鐘を鳴らす意見があがっている。与党内からは、ともに高齢者の負担割合を与党案に明記することに抵抗感が示されている。政府・与党調整の過程で中間報告に数値(負担率)を明記できるかどうかも最終決着の争点となりそうだ。
◎年齢でなく、負担能力で「支え手」増やす
この日の自民党「人生100年時代戦略本部」(本部長:岸田文雄政調会長)では、提言案の取りまとめが行われた。提言案では、人生100年時代に突入するなかで、「年齢」による画一的な取り扱いを見直すことを明記した。「給付は高齢者中心、負担は現役世代という従来の構造」を見直し、「年齢ではなく、負担能力(所得と資産)に応じて全世代型社会保障制度を支える」とした。あわせて、「必要な財源確保を図る」必要性も明記。「中長期的に受益と負担のバランスを確保する努力を継続していかなければならない」とした。
◎厚労省 高額療養費を考慮した後期高齢者2割負担の粗い試算公表
厚労省はこの日の戦略本部に、「高額療養費を考慮したうえで、後期高齢者窓口負担割合2割と仮定した場合」の機械的な粗い計算結果を提示した。関節症(ひざの痛みなど)や高血圧性疾患の外来受診時では窓口負担が倍になるが、骨折や悪性新生物による入院などでは窓口負担は変化しないなどとのデータを示した。議論では、後期高齢者2割負担に対し、一部容認論を唱える意見もあったが、それをかき消すほど、慎重論を唱える意見が複数の出席議員からあがった。また、出席議員からは、戦略本部の取りまとめについて、高齢者の負担割合を明記すべきでないとの認識も示されるなど、当初想定した2020年6月の骨太方針に向けて十分な議論を行うべきとの声が相次いだ。
また、プライマリケア医をはじめとした医療提供体制を構築などによる医療の質向上と同時に社会保障改革の議論をすべきとの声もあがった。この日、議論はまとまらず、岸田政調会長に政府との調整が一任されることとなった。また、受診時定額負担については、明記に賛成する声は少なかった。
◎公明党・石田政務調査会長 後期高齢者2割負担「慎重姿勢を堅持している」
一方、公明党の石田祝稔政務調査会長は同日、政調全体会議後のブリーフで、公明党として後期高齢者2割負担について慎重な姿勢を「堅持している」と強調した。また、受診時定額負担については意見があがらなかったと説明した。今後の議論は石田政務調査会長に一任され、来週にも政府との調整に臨む姿勢を示した。
◎年末予算編成は大詰め 相次ぐ官邸訪問
この日は、日本医師会の横倉義武会長が総理官邸に菅義偉官房長官を訪問したほか、厚労省の加藤勝信厚労相、鈴木俊彦事務次官、濱谷浩樹保険局長が安倍首相と会うなど、年末の予算編成に向けた動きが活発化している。議論は、いよいよ佳境を迎える。