厚労省・林経済課長 医療用医薬品の流通改善GL改訂に着手 年内にも流改懇開催へ
公開日時 2019/11/08 03:52
厚生労働省医政局経済課の林俊宏課長は11月7日、日本医薬品卸売業連合会(卸連)のセミナーで講演し、「医療用医薬品の流通改善ガイドライン(GL)」の改訂に着手する考えを示した。林課長は、「医薬品の価値に見合った価格形成」の重要性を指摘。真の意味での単品単価交渉・契約を推進する重要性を強調した。2021年度以降、薬価の中間年改定(毎年改定)が導入され、薬価調査も毎年実施される。林課長は、「価格形成がますます大事になる。薬価制度の見直しと、流通改善への取り組みの両輪でないとうまくいかない」と表明した。同省は、10月の消費増税改定における仕切価変更などの現状を調査する方針。これを踏まえて、「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」を開き、流通当事者の意見を聞いたうえで、さらなる流通適正化に取り組む姿勢を鮮明にした。
医薬品流通当事者の間で長年の懸案事項であった、一次売差マイナスは、2018年1月の流通改善GLの発出以降改善傾向にある。2018年度上期は仕切価率が上昇したものの、納入化率の水準上昇が上回り、一次売差マイナスが縮小した。19年4月には、薬価改定のない年であるにもかかわらず、割戻しや仕切価の見直しが進み、単品単価契約も増加した。
ただ、依然として課題も残る。川上取引(医薬品卸と製薬企業間)では、新薬創出等加算品が減少するなかで、仕切価率が上昇するリスクがある。一方で、川下取引(医薬品卸と医療機関、保険薬局間)では、いわゆる総価取引が横行していることも指摘されている。例えば、目標とする年間の総値引率に達するような価格引き下げを要求するケースや、取引品目の構成比率が上期と異なるにもかかわらず、上期の総値引率と同一の値引き水準となるスライドなど、医薬品の価値に見合わない、いわゆる“過大な値引き交渉”も懸念される。
◎医薬品の価値に見合った形で形成されているか課題
林課長は、「個々の医薬品の価値に見合った価格形成を市場でしていただき、それを公定価格として後から改定するのが、我が国の薬価の形。2年に1回の薬価調査で出る数字と、市場価値がイコールになっていないとおかしい」と説明した。そのうえで、単品単価交渉・契約の重要性を強調した。診療報酬に未妥結減算が導入されて以降、妥結率は上昇しているが、「契約の中身が真実の単品単価、医薬品の価値に見合った形で形成されているかが課題だ」と述べた。
◎仕切価と過大な値引き要求に問題意識表明
川上取引について林課長は、「仕切価の問題はなかなか改善が見られていない」との見解も示し、医薬品卸を対象とした調査に基づき、検証する考えを示した。一方、川下取引については、妥結率や単品単価率が上昇していることを踏まえ、「形は大規模な薬局や医療機関とはできているが、実態はどうか」と指摘。単品単価交渉についても、「すべてを実施するのは難しいと思うが、どの程度進んでいるかが、かなり気になるところ」と述べた。さらに、川下での過度な値引き交渉については、「一次的には、流通当事者ができるものはできる、できないものはできないと、しっかりと交渉していただくことが基本」としたうえで、「色々な事例を耳にすることも多いので、しっかりと健全な形でやられているかは気になるところだ」と問題意識を示した。
そのうえで、医薬品卸を対象に、10月に実施された消費増税改定での仕切価変更の現状を調査する考えを表明。この結果に基づいて、年内にも「医療用医薬品の流通の改善に関する懇談会」を開き、流通当事者の意見を踏まえ、流通改善ガイドライン改訂に向けて検証する構えを示した。
◎製薬協・中山会長「卸の持つ価格形成機能の発揮を」
日本製薬工業協会の中山讓治会長(第一三共会長)は同日の講演で、9月に一時的に妥結し、下期に総価的な値引きを要求する取引があることに触れ、「国民目線で見ると不明瞭であるし、私どもも何としても改善していただきたい」と訴えた。
中山会長は、流通改善ガイドライン発出以降、
乖離率も縮小基調にあるなど、流通改善が進んできたとの見方を示した。
そのうえで、医療機関やチェーン薬局の下期における総価的な値引きを牽制。製薬企業が価格交渉にできないとしたうえで、「メーカーによる情報提供に加え、医薬品卸の持つ価格形成機能を発揮していただくことが不可欠な構図」との見解を表明。そのうえで、「大変な労力であることはよく理解している。同時に個々の新薬が産まれる背景を感じていただき、製品価値の観点からも新薬を適正に育てていただきたい」と訴えた。