塩野義製薬の手代木功社長は10月30日、2020年３月期（19年度）第２四半期（４～９月）の決算会見で、日本感染症学会や日本小児科学会が抗インフルエンザ薬ゾフルーザの小児等への慎重投与を打ち出したことについてコメントした。手代木社長は、一連の学会提言や指針について、「使用制限するということではないと受け止めている」と述べた。そのうえで「真摯にデータを集め、良いところと悪いところについて、きっちりデータのフィードバックさせていただきたい。その姿勢はどこの会社にも負けない」と強調した。なおゾフルーザは18年度国内実績で263億円を売り上げた大型品。これからシーズンを迎える2019年度下期だけで280億円の売上を見込んでいる。

ゾフルーザをめぐっては、日本感染症学会が12歳未満の子どもについて、「使用を慎重に検討すべき」とする提言をまとめるなど、耐性ウイルスの発生率が高い点を危惧する声が上がっている。19年春には、国立感染研究所の研究チームなどが服用した患者から変異したウイルスを確認したとの指摘もあった。一方で日本小児科学会も、同剤の使用経験の少なさや薬剤耐性ウイルスの出現が認められたことから、12歳未満の小児に対する同剤の積極的な投与は推奨しないとの見解を示していた。

これに対し塩野義製薬は同日、ゾフルーザを投与した患者におけるアミノ酸変異（I38変異）ウイルスの検出頻度に関するデータを公表した。A／H3N2型が検出された6歳未満の患者では、ゾフルーザを投与された患者のうち投与前にRT-PCR解析でインフルエンザウイルスが検出された患者（投与後にウイルスが検出されなくなった症例を含む）の44.4％（12／27例）から変異株を検出した。この結果から同社は、「6歳未満の小児やA／H３N2型での検出頻度が高い」と指摘。「引き続き継続してデータを収集し、医療機関や学会に情報提供を行う」とした。

◎国内はサインバルタとインチュニブが業績伸長要因に

この日は2020年3月期（19年度）第2四半期決算を発表した。売上高は対前年比4.4％減収の1609億円、営業利益は1.5％増収の582億円となった。このうち国内医療用医薬品売上高は対前年比4.9％増の524億円。内訳をみると、これまで業績を支えた高脂血症治療薬・クレストール、ARB・イルベタンはいずれも特許切れに伴う後発品の浸透で売上が前年同期を割り込んだものの、戦略品の抗うつ薬・サインバルタ（129億円）と、適応を成人にも拡大したADHD治療薬・インチュニブ（45億円）がともに業績の伸長に寄与した。製造受託は、主にロシュ社からのゾフルーザの受注増により、前年同期比75.7％増（43億円増）の101億円となった。

一方、ロイヤリティー収入は対前年比18.7％減の750億円となった。ヴィーヴ社によるテビケイ、トリーメク、ジャルカのグローバル販売の拡大により、同社からのロイヤリティー収入が前年同期比7.1％の増収となったものの、前年同期にゾフルーザのグローバル開発に伴うマイルストンをロシュ社から受領していたことが影響した。

手代木社長は、HIVフランチャイズに関するロイヤリティー収入への影響について、「今後2剤合剤が本格的に寄与していくだろう。20年度以降はHIVについては楽しみに感じている」と述べた。


【連結業績（前年同期比）　19年度予想（前年同期比）】　

売上高 1608億7700万円（4.4％減）　3670億円（0.9％増）←修正前3655億円
営業利益 581億6100万円（1.5％増）　1500億円（8.3％増）←修正前1470億円
純利益 516億1600万円（10.8％減）　1350億円（1.7％増）←修正前1330億円

【国内主要製品売上高（前年同期実績）　19年度予想、億円】
サインバルタ  129（119）293
インチュニブ　45（24）136
ゾフルーザ　０（4.6）280
ラピアクタ　0.１（0.1）26
ブライトポック3.1（2.3）22←修正前18
戦略品計　177（150）757

オキシコンチン類　32（38）64←修正前67
スインプロイク　11（7.2）23
アシテア　1.2（0.9）2.6←修正前2.7
ムルプレタ　0.7（0.8）2.3←修正前3.3
ピレスパ　34（29）70←修正前69
新製品計　256（226）919←修正前922

クレストール　46（52）95←修正前100
イルベタン類　22（31）46←修正前49
 
ロイヤリティー収入　750（922）1642←修正前1636
内、HIVフランチャイズ　611（571）1263←修正前1265
内、クレストール　111（109）218←修正前220
内、その他　28（242）161←修正前151