GE薬協 次世代産業ビジョンを公表 変革する社会構造に対応する産業に転換
公開日時 2019/09/30 03:52
日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)は9月27日、「次世代産業ビジョン」を公表した。ビジョンでは、“国民の医療を守る社会保障制度の持続性に貢献する”を掲げ、次世代のジェネリック産業の姿を描いた。健康長寿社会を実現するために、後発品80%時代に医薬品供給のインフラとなるだけでなく、国民の「健康・医療・介護」で存在感を発揮。高齢化や人口減少社会をのり超えた日本の未来に貢献することを社会に「約束」した。これまで培った製剤・生産技術を活用し、IT企業などとのオープンイノベーションを推進し、保険の枠を超えたソリューションにも取り組むことも盛り込んだ。変革する社会構造に対応する産業に転換する決意をビジョンに滲ませた。
◎保険医療の枠を超えたソリューション実現も明記
苦みやマスキング技術、口腔内崩壊錠など、培った製剤・生産技術を活かし、ICチップやセンサーを搭載、侵襲性の低い検査を可能にする“溶けない錠剤・カプセル剤”を開発する―。ビジョンで描いたのは、社会構造の変化を捉え、医療だけでなく、未病のケアや予防も含め、国民の健康寿命の延伸に貢献するジェネリック産業の姿だ。そのために、人工知能(AI)や3Dプリンティング技術など、革新的技術と融合し、新たな価値を生み出す方向性を示した。
超高齢社会が到来し、医療現場が地域包括ケアシステムに動き、介護や生活のウエイトが高まるなかで、提供するサービスも、従来の「保険医療の枠を超えたソリューション」実現に意欲を示した。「今までの価値観を改め、医療だけでなく、国民の健康・介護にどのように貢献できるのかを考えていかなければならない」ことも明記。IT企業などと連携したオープンイノベーションの実現や、ICTを活用した次世代ヘルスケアシステム構築に積極的に参画する姿勢も鮮明にした。
リアルワールドデータ(RWD)を利活用し、ドラッグリポジショニングに取り組む姿も描いた。新たな投与経路や剤型の提供により、患者の治療選択肢を増やすとともに、医療・介護従事者、患者家族などの負担軽減に貢献する考えも示した。
◎特許満了医薬品として社会インフラに
もう一つ見逃せないのが、“特許満了医薬品”として、社会インフラとして世界に貢献することも明記した点だ。2018年度薬価制度抜本改革で、長期収載品G1品目の撤退ルールが盛り込まれたことで、ジェネリックメーカーには情報収集・提供などで、これまで以上の責任が求められる時代に突入する。
後発品80%時代は、後発品が医薬品の総量全体の半数以上を担うことを意味する。長期収載品と後発品の垣根が低くなることも想定されるなかで、改めて、インフラとして貢献する考えを明確にした。こうした医薬品の製造、流通などのインフラを、内閣官房の「アジア健康構想」などを通じて海外展開する意欲も示した。
一方で、こうした“明るい未来”を実現するためには、「揺るぎない安定供給体制」、「高度な品質管理体制」、「品質・安全性情報の提供」が重要と指摘。さらに、これを支えるガバナンスやコンプライアンス、リスクマネジメントを土台とした。情報発信については、各社によるものだけでなく、客観的な医薬品情報を共同利用することなどもビジョンに盛り込んだ。
◎2030年の未来の姿からバックキャスト
こうした姿を描くために、GE薬協政策実務委員会は、骨太方針や未来投資戦略などを紐解き、“ある日の夕子さん”と題し、2030年の社会の姿を描いた。遠隔診断された疾患の発症予測がスマホに送られてくる。再生医療による治療や、3Dプリンターを活用したテーラーメード医療が実現する。車に乗るだけで血圧や心拍数、血糖値などバイタルを自動でとり、必要に応じてドローンが薬を届けに来る―。こうした具体的な姿からバックキャストを行い、検討の必要性があると洗い出した5項目をビジョンとして定めた。
◎田中実務委員長「明るい未来を迎えるには具体策を」
同日開いた会見で、政策実務委員会の田中俊幸委員長は、「ビジョンは、一言で言えば、ポスト80%時代がいかに明るいものか示したものだ。ただ、明るい未来を迎えられる企業はビジョンに対して具体的に取り組んだ企業だけだ」と熱く語った。
これまでジェネリック産業は、薬剤費適正化の名の下に国策として進められてきた後発品使用促進に後押しされて成長してきた。2020年9月に後発品80%目標達成時期が迫るなかで、こうした流れも一区切りを迎えることになる。
後発品の数量シェアは伸長しているものの、製造される錠数の伸びは頭打ちも近く、「量が伸び続けることはない」(田中委員長)と見通す。さらに、今後は、薬価毎年改定の対象となる“乖離の大きな品目”として後発品がターゲットになることも想定される。骨太方針策定なども踏まえて、80%目標達成後の次なる制度提案を行うためにも、「ビジョンがないと根本的な話ができないだろうと考えた」と話す。国が2040年を見据えた社会保障政策を打ち出すなかで、「将来私たちはこうしたいということをアピールする絶好のタイミングだと考えた」とも語った。後発品80%目標達成を待たずに、2017年の策定から2年で改訂に至った。
ビジョンは、①国民の「健康・医療・介護」において存在感を発揮、②グローバル化/ボーダレス化への果敢な挑戦、③地域包括ケアシステムの実現に寄与、④ICTを活用した次世代ヘルスケアシステム構築への参画、⑤SDGsの達成に寄与―の5項目からなる。