FIRM・畠新会長 革新的治療普及に向けた産業化実現に意欲
公開日時 2019/07/03 03:50
再生医療イノベーションフォーラム(FIRM)の畠賢一郎代表理事会長(J-TEC代表取締役会長執行役員)は7月2日、会長就任後初の会見に臨み、「革新的な治療の普及のために再生医療の産業化を実現する」というビジョン実現に意欲をみせた。再生医療等製品の上市も相次ぐが、「産業化の途上」との見解を表明。規制の整備も進むが、運用面については企業だけでなく、日本再生医療学会などアカデミアと意見を集約し、積極的な情報発信を行う構えも示した。再生医療等製品が高額との指摘もあるなかで、業界団体としてもコスト低減などについて議論を深める考えだ。畠代表理事会長はこうした取り組みを通じて、規制当局だけでなく、医師をはじめとしたアカデミア、患者などのステークホルダーに理解を深めてもらい、再生医療の“文化”を根付かせることがその第一歩との考えを示した。
◎企業側の知見標準化目指す 他家細胞についての議論も
再生医療等製品をめぐる法整備が進むなかで、畠代表理事会長はこの状況を「
これから製品がどんどん上市されるのではないかという期待感がある」と評価した。そのうえで、運用面については、細胞の品質管理をはじめ、「企業側の経験を通じた意見や、アカデミアの意見をまとめてメッセージとして発信する必要がある」との考えを示した。こうした知見を承認審査の過程に反映してもらえるよう、“専門性の高い精鋭集団”を目指し、「積極的に情報発信し、行政当局と議論する体制を整える」考えだ。そのためには、開発に携わる企業が増えるとともに、規制当局側も承認審査に携わる人財が増えることが重要との考えも示した。「どう増やしていくかがFIRMの課題。健やかな未来に貢献したい」と語った。
優先課題の一つには、「適切な価格設定、コスト低減などによりビジネスモデルが確立している」ことも掲げた。産業化に向けては他家細胞の活用も必須との見方もあるなかで、「自家細胞でないと治療できないものもある。ビジネスモデルから言えば、他家細胞と自家細胞では扱いは全く異なる。医療の観点だけでなく産業からも議論していきたい」と述べた。また、「プライバシーや対価などはきちっと議論できているとは思えない。学会や行政の意見をいただきながら解決していきたい」とも述べた。自由診療と組み合わせた保険外併用療養の可能性については、「保険医療は非常に重要な役割を担っている。コストを下げる、適切な作り方をするということを守ることがまずは大事」との考えを表明。そのうえで、「経済的な概念が入るので自由診療があるということを片隅に置く」とも述べた。
畠代表理事会長は、6月19日付で会長に就任。広島大学歯学部を卒業後、名古屋大学大学院医学系研究科博士課程を修了。J-TECの会長に加え、富士フィルムR&D統括本部バイオサイエンス&エンジニアリング研究所副所長も務めている。現在も大阪大学大学院医学系研究科招聘教授のほか、日本再生医療学会でも理事を務める。畠代表理事会長は、「再生医療は多様性があるなかで、企業の範囲を超え、学会とのアライアンスや医療現場との連携を多様性に対する担い手になりたい。製品を創るだけでなく、医療文化を創ることをFIRMのミッションを置いている。多様なものを広げていく担い手になりたい」と意欲を語った。