田辺三菱製薬は５月10日、2019年３月期の国内医療用医薬品の売上高は前年度比105億減（3.4％）の2987億円だったと発表した。同社の業績を支えた長期収載品のタリオンへの後発品浸透や、18年４月の薬価改定でG２品目となったメインテートなど、薬価改定が国内業績を直撃し、国内医療用医薬品売上高3000億円を下回った。薬価改定の影響だけで200億円の減収。一方で、多発性硬化症治療薬・ジレニアのロイヤリティーについては、ノバルティスと現在係争中。当期業績に一部のロイヤリティー収入を認定しなかったこともあり、20年３月期見通しの連結純利益は86.6％減（323億円）の50億円を見込む。

◎レミケードは前年度比58億円減の558億円

2019年３月期決算は、売上収益は前年度比90億円減（2.1％減）の4247億円。コア営業利益は227億円減（28.9％減）の558億円だった。国内医療用医薬品売上高は、トップ製品のレミケードが前年度比58億円減となるものの、588億円を売上げた。このほか、シンポニーが374億円（前年度比53億円増）、ステラーラが152億円（148億円増）など、３剤の炎症免疫領域治療薬が支えた。一方で、長期収載品となった抗アレルギー薬のタリオン（105億円減）、心不全治療薬のメインテート（52億円減）など、長期収載品の売上が業績に響いた。

◎20年3月期はカナグル、シンポニーで業績支える　「CREDENCE」試験を起爆剤に

20年３月期の国内医療用医薬品売上高は、消費増税改定があるものの、６億円の微減を見込む。なかでも、売上の伸長を見込むのが、SGLT２阻害薬・カナグルと、関節リウマチの適応でオートインジェクターの承認を見込むシンポニーだ。川上泰利執行役員営業本部長は、カナグルが「CREDENCE」試験で糖尿病性腎症患者において腎イベントの発症抑制効果が示されたことを紹介。「素晴らしい結果。これを起爆剤にカナグルの売上、糖尿病３剤（テネリア、カナリア）合計の売上をあげていく」と、腎領域を中心とした市場浸透に向けて意気込みをみせた。

来期も免疫療法治療薬・３剤による売上の牽引を見込む。シンポニーの新たな剤型追加を機に、「バイオで築いた新たな時代を作っていきたい」と川上営業本部長は話す。ただ、すでにバイオシミラーが上市されているレミケードは、地域フォーミュラリのターゲットにもなっており、各地域で策定が進めば、大きく影響を受ける可能性もあり、先行きは不透明だ。

◎ＭＲ生産性向上でデジタル重視　オムニチャネルへの進化を図る

営業体制については、「MRの生産性が叫ばれているがデジタルマーケティングを活用した取り組みを進めている」と強調。「オムニチャネルへと進化を図ったうえで、この体制を武器にしたうえで国内営業を強化する」と語った。

◎ジレニアの係争で三津家社長「全額支払われるべき」

係争中のジレニアについては、今後数年間減益が続く可能性がある。決算会見のなかで、三津家正之代表取締役社長は、「全額支払われるべき」と強調した。係争終結時にロイヤリティー収入は反映されることになる。

同社は米欧への研究開発投資を進める。21年～22年シーズンにインフルエンザワクチン、22年度にパーキンソン病治療薬の上市を見込む。23年度までに米国事業に3000億円投資するなど、米欧での研究開発費を確保する方針を維持する考えだ。

ジレニアの係争で今後の投資への影響も懸念されるが、販管費についても290億円の削減目標を変えない考えも示した。田原永三常務執行役員経理財務部担当は、「現時点では、290億ということで、（ジレニアのマイナス分と比べ）毀損している数字になっているが、これで進めたい」と述べた。国内の社員5000人の目標を２年前倒しで達成したことも説明。国内で圧縮した資金を海外の研究開発投資に充てる考えを示した。「引き続き適正な人数については、将来の事業の力強さ、回復をしていく流れで考えることは変わらない。MR数についても市場環境に応じた体制を敷く」と述べた。

【18年度連結業績（前年同期比）　19年度予想（前年同期比）】

売上高　4247億6700万円（2.1％減）　3760億円（11.5％減）
営業利益　503億300万円（34.9％減）　115億円（77.1％減）
親会社帰属純利益　373億7200万円（35.5％減）　50億円（86.6％減）

【18年度主要製品国内売上高（前年同期実績）　19年度予想、億円】

レミケード　588（646）531
シンポニー　374（321）430
テネリア　152（175）161
ステラーラ　152（３）216
レクサプロ　140（127）152
セレジスト　89（108）88
クレメジン　66（65）87
カナグル　67（56）109
タリオン　64（169）57
ルパフィン　34（４）78
メインテート　51（103）－
カナリア　74（18）76
ワクチン計　373（350）362
うち、インフルエンザ　102（99）107
うち、テトラビック　85（87）100
うち、水痘ワクチン　51（52）51
うち、ミールビック　68（50）－
うち、ジェービックV　55（52）－
田辺製薬販売取扱品　－（66）－
ロイヤリティ収入等　631（791）192
うち、ジレニア　ロイヤリティ　497（577）非開示
うち、インヴォカナ　ロイヤリティ　105（139） 非開示