国がん MASTER KEYプロジェクトで患者会と連携 個別化医療実現へ加速
公開日時 2018/08/24 03:50
国立がん研究センター(国がん)は8月23日、記者会見を開き、個別化医療の実現を加速する目的で、日本希少がん患者会ネットワーク(RCJ)と「MASTER KEYプロジェクト」での連携協定を締結したと発表した。希少がんは患者数が少なく、治療開発の取り組みが遅れている現状がある。患者会との連携で、患者の診療情報やがん遺伝子異常の情報、治療効果などを含む信頼性の高いデータベースの構築が期待できる。国立がん研究センター中央病院の西田俊朗院長は、協定を通じて患者データが集積することに期待感を示し、「診断や治療法が確立していない疾患に対し、新たな診断法を見つけ、治療薬を開発していきたい」と述べた。
「MASTER KEYプロジェクト」は、17年5月から国がんの中央病院で開始した産学共同プロジェクトだ。希少がんの患者の診療情報や遺伝子異常の情報などを含む網羅的なデータベースを構築し、新規治療の開発とゲノム医療を推進するとしている。
今回の連携は、全国の希少がん患者にプロジェクトの情報を正しく伝え、これまで十分に進んでいなかった希少がん研究を強力に推進することで、個別化ゲノム医療の実現を促進するのが狙い。具体的には、レジストリデータの蓄積により、希少がん疾患それぞれの特徴が明らかになることや、薬事承認を目指した治療開発に貢献できることがメリットだとしている。患者側にも、希少がんの診療経験が豊富な施設で、正確な病理診断や適切な治療を受ける機会が増えること、新しい薬による治療の機会が増えるなどのメリットがあるとしている。
協定では、定期的に連絡会を開催し、プロジェクトの進捗等の情報交換を行うことや、双方のセミナーや説明会に参加しあうことが盛り込まれた。
◎新たに京大附属病院も参加 西日本の拠点に期待
同日の会見では、「MASTER KEYプロジェクト」に新たに京都大学医学部附属病院が参加することも発表された。西日本の拠点となり、参加する患者の広がりに期待が寄せられる。
19年4月には、北海道と九州地方の2施設がさらに追加される見通しだが、現時点での参加施設は2施設と限りがあり、全国展開にはまだ時間がかかりそうだ。同病院では、研究として一定の精度を担保する必要があることが課題だとしている。
希少がんは、5大がんと比べ患者が少ないために、診療体制の整備や治療法の開発などで遅れがあるのが現状だ。患者人口でみると、全てのがん患者人口の20%にとどまっているものの、全がん死の35%を占め、予後が悪いとされている。若い患者が多いのも特徴で、世界的にも患者ネットワークが形成される動きが相次いでいる。国立がん研究センターと連携協定を締結するRCJは、17年8月に設立され、現時点(18年8月23日)で16の患者団体が参加している。