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厚労省 プレシジョン・メディシンにアクセル 遺伝子パネル検査19年度にも保険適用へ

公開日時 2018/08/03 03:50

厚生労働省は8月1日、プレシジョン・メディシン実現に向けて、遺伝子パネル検査の19年度の保険適用を目指す方針を示した。今年に入り、高度な医療を提供するがんゲノム医療中核病院や、がんゲノム医療連携病院の指定、さらに情報を集約する「がんゲノム情報管理センター(C-CAT)」の立ち上げなど体制整備も進めてきた。こうしたなかで、遺伝子パネルを早期に実用化することで、ゲノム情報を集約化し、プレシジョン・メディシン(個別化医療)の実現、さらにその先に革新的新薬の開発も描く。欧米に比べてがんゲノム医療推進についての遅れが指摘されるなかで、オールジャパン体制でがんゲノムを推進する。同日、初会合を開いたがんゲノム医療推進コンソーシアム運営会議で報告された。

がんゲノム医療推進に向けて、カギを握るのが「遺伝子パネル検査」だ。肺がん治療薬・イレッサがEGFR遺伝子変異の有無に応じた投与で治療効果を向上させたことに象徴されるように、がん治療は遺伝子変異に応じた治療薬選択が潮流となっている。ただ、これまでは一度に調べられるのはひとつの遺伝子異常のみで、コストと時間がかかっていた。これに対し、次世代シークエンサーなど遺伝子パネル検査は1度に複数の遺伝子を調べることができるメリットがある。

一方で、がんゲノム検査の結果解釈には専門的な知見が必要になることや、適切な患者を選択し、遺伝子結果を患者に説明する遺伝子カウンセラーが必要なことなどから、がんゲノム医療中核拠点病院など一定の要件を満たす医療機関での実施を求めた。これにより、入力するデータの質の高さも担保でき、集積するデータベースの精度向上も期待できる。がんゲノム医療中核拠点病院は今年2月、全国11か所を指定し、体制整備に着手した。さらに、中核拠点病院と連携するがんゲノム医療連携病院100か所を指定した。将来的には、この中間的な位置づけとして、遺伝子パネル検査の解釈が自施設で完結できるがんゲノム医療拠点病院を指定することで、裾野を広げ、全国どこでもがんゲノム医療を受けられる体制整備を目指す。

6月には中核拠点病院から得られたゲノム情報、臨床情報を集約化・標準化するC-CATを国立がん研究センター内に設置した。保険診療下で行う遺伝子パネル検査によるゲノム情報や臨床情報はC-CATへの登録を義務付けることで、情報の集約化を進める。個々の患者に対するプレシジョン・メディシンの実現だけでなく、既存薬の適応拡大や新規治療・診断法の開発などにつなげることを視野に入れる。さらに患者数の少ない希少がんや、新たに発見された頻度の低い遺伝子変異などに対して、リアルワールドデータ(RWD)の利活用で承認を得る条件付き早期承認の活用により、医薬品の適応拡大を図る考え。


◎加藤厚労相「創薬や新たな研究も世界に先駆け推進を」


会議の冒頭で、加藤勝信厚労相は、「遺伝子パネル検査を保険のもとで提供できるようになれば、がんゲノム医療を広く国民に提供することができる上、多くの臨床情報やゲノム情報が集約され、創薬や新たな研究も世界に先駆けて推進されていくことを予想される。研究開発を推進し、さらなるゲノム医療の発展を目指していきたい」と述べた。

日本製薬工業協会(製薬協)の中山治会長は、「ゲノム情報は、薬をつくる上で大切な基盤。新薬の開発をめぐり、各国が競争状態にあるなかで、早く国をあげてプラットフォームをつくってほしい」と訴えた。

このほか、委員からは、患者への説明のあり方や、情報の共有化の範囲、それに情報セキュリティの構築などへの意見があがった。
 

【訂正】下線部に誤りがありました。訂正いたします。(8月3日15時54分)

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