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自宅にいながらにして、診療から服薬指導、処方薬の受け取りまで可能になる―。アイン薬局稲沢店(愛知県稲沢市)では7月5日、りゅう市役所北内科・リハビリ科(愛知県岡崎市)のオンライン診療と連携し、1例目のオンライン服薬指導を行った。処方薬は服薬指導後、郵送で患者の手元に届く。オンライン診療とオンライン服薬指導が組み合わさることで一気通貫のモデルが構築される。高血圧などの生活習慣病、気管支喘息など慢性疾患で、働き盛りや子育て世代など、通院の時間を取るのが難しい患者の治療継続を後押しすることも期待される。対面での服薬指導を義務付けている医薬品医療機器等法(薬機法)は2019年にも改正が予定されており、裾野が大きく広がる可能性も秘めている。 「お薬は残っていますか?」、「服用後は忘れずにうがいをしてくださいね」-。気管支喘息患者に服薬指導を行うのは、カウンター越しではなく、タブレット端末の画面に映る薬剤師の姿だ。7月10日に、アインホールディングスが報道陣向けに公開したオンライン服薬指導のデモンストレーションの一コマだ。画面越しながら、患者の顔も大きく見え、会話もスムーズに進む。実際に一例目のオンライン服薬指導に従事した黒木麗薬局長は「普段の対面での服薬指導と同様にできた」と語る。 ◎薬情や患者向けパンフレットなどオンライン通じた提供も オンライン服薬指導は、処方医がオンライン診療後に、保険薬局や患者にFAXや郵送などで送付した“特定処方箋”に基づいて行われる。患者は薬剤師とあらかじめ決めた予約時間に、PCやスマホ、タブレット端末などからオンライン服薬指導を受ける仕組みだ。患者は予約時間に電話などで、かかりつけ薬剤師から暗証番号、もしくはテレビ会議につながるURLを取得。タブレット端末に入力すると、オンライン服薬指導を行う画面へと切り替わる。 この日のデモンストレーションでも、処方薬を掲げ、確認を行う薬剤師の姿と声が映った。さらに、薬情報提供書(薬情)や薬袋、患者向けパンフレットなども事前にスキャンしておくことで、タブレット端末を通じて提供することも可能だ。目の悪い高齢者にとってはタブレットの文字を拡大できるなどの長所もある。オンライン服薬指導が終わったあとには、情報は削除し、個人情報保護にも配慮する。服薬指導が終われば、処方薬が宅急便など民間業者を通じて配達される。 システムは、同社が以前から利用してきたテレビ会議システム「V-CUBE ミーティング」を活用。りゅう市役所北・内科が活用するメドレー社の提供する診療アプリ「CLINICS」と連携しているという。 ◎医療機関とは車で1時間 人的リソースの豊富さも決め手に 愛知県は新城市、北設楽郡設楽町・東栄町・豊根村、日間賀島・篠島(南知多町)、佐久島(西尾市)といった離島・へき地を特区に指定。オンライン服薬指導の実証に際しては、この地域への患者の居住が必要となる。医療機関には立地の制限はないが、保険薬局は名古屋市、豊橋市、岡崎市、豊田市を除く50市町村への立地を求めた。 オンライン服薬指導を行うアイン薬局稲沢店は、りゅう市役所北内科・リハビリ科とは車で1時間ほど距離が離れた、稲沢市民病院の門前に位置する。上記の実証の条件を満たすほか、薬剤師4人、医事スタッフ4人と経験豊富なスタッフが揃い、午後は比較的処方箋枚数が少ないなど、人的・時間的にリソースを割けることから、実施に至ったという。 アインホールディングス経営企画室の鈴木奈々絵次長は、オンライン服薬指導への参入について「始めてみなければわからないことがあるのではないか。特区で限られた患者についてだが、どのような服薬指導が求められているか探していきたい」と意気込みを語った。 りゅう市役所北内科・リハビリ科の小澤竜三理事長・院長は、高齢化が進むなかで、医療機関に足を運ぶのが難しい患者が増加してきていると指摘。「生活習慣病を持っていて、クリニックまで通院するのが難しいという患者への恩恵が大きいのではないか」との考えを示した。同院ではすでに自由診療を含むオンライン診療を行う患者が3人おり、「当院で普段通院している患者さんについて進めていきたい」と意欲を見せた。 オンライン診療のアプリなどを提供するメドレーの豊田剛一郎代表取締役医師は、オンライン診療は処方箋の原本送付が原則のため、「薬剤交付までのタイムラグが発生する」と指摘。「移動が困難な患者さんにとっては負担になっている」として、オンライン服薬指導の浸透に期待感をみせた。 すでにオンライン服薬指導について、患者からの問い合わせなどもある状況という。 オンライン服薬指導をめぐっては、規制改革推進会議の答申で重要事項に指定され、経済財政運営と改革の基本方針(骨太方針)でも、服薬指導を含めたオンライン医療全体の充実に向けた検討を進めることが明記されている。厚労省も実施に向けて、薬機法改正を視野に厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で検討が進められている。
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