流通改善ガイドライン（GL）が４月に施行されて以降初めての厚労省の「医療用医薬品の流通改善に関する懇談会」（流改懇）が５月30日、東京都内で開かれ、４月時点の仕切価率は前年度と比べ、一部長期収載品を除いて変動なしか上昇だったとする同省の仕切価等緊急調査結果（暫定版）が報告された。メーカー側は、薬価制度改革や予定される毎年改定で事業環境は厳しくなり、最終原価は引き上げざるを得ない状況と説明し、同省は緊急調査結果から川下では厳しい交渉になるとの見方を示した。流通改善の課題である一次売差マイナスの解消に向け、卸には価格形成力、薬価差圧縮が迫られる格好となった。同省はGL下での取引実態の把握を進め、GLに沿った取り組みを促す方針を示した。

５月30日はGLに対する取り組みをテーマに会合が行われた。厚労省は、新薬メーカー16社、後発医薬品メーカー３社を対象に行った「仕切価設定等に関する緊急調査結果（暫定版）」を報告した。比較的規模の大きい企業を対象に、製品カテゴリー別に4月時点と前年度との仕切価率の変化を調べたもので、それによると▽新薬創出等加算品：「増６社」「変動なし10社」「減０社」▽特許品：「増４社」「変動なし12社」「減０社」　▽長期収載品：「増４社」「変動なし10社」「減３社」　▽後発医薬品：「増7社」「変動なし７社」「減０社」　▽その他（後発品がない製品等）：「増５社」「変動なし12社」「減０社」――だった。

同省は、仕切価率の増（上昇）も散見されることから「川下ではより厳しい状況での交渉が予測される」との見方を示し、一次売差マイナスの解消に向け、仕切価・割戻し等、納入価の水準の動向について、調査対象を拡大して実態把握を進め、GLに沿った取り組みを促す方針だと説明した。

日本医薬品卸売業連合会の取り組み状況について説明した中原岳志委員は、GL遵守に向け「不退転の覚悟で取り組む」とし、メーカー、医療機関・保険薬局にも協力を呼び掛けた。一次売差マイナスの解消には、「適切な一次仕切価の提示に基づく最終原価の設定が必要」とメーカー側に対して指摘。川下に対しては、単品単価契約を進めるための覚書締結の推進、医薬品価値、流通コストを無視した交渉の改善のほか、仕切価を踏まえた価格交渉を取引先の理解を得て進めると表明した。日本保険薬局協会の杉本年光委員は、取引卸の約６割と詳細な取引条件を記載した「覚書」を締結していると報告した。

日本製薬工業協会の立場からは長坂良治委員が説明し、単品単価契約を推進するため仕切価・割戻・アローアンスの早期提示、市場実勢価を踏まえた最終原価の設定と取引卸への速やかな連絡を行うことを促してきたことを強調。同委員は、薬価制度改革や予定される毎年改定で事業環境は厳しく「最終原価は引き上げざるを得ないと思っている」と述べ、卸側に理解を求めた。

それに対し医療機関側の小山信彌委員（日本私立医科大学協会）は、「（医療機関側は）早く妥結しないと減算されるペナルティがある。語弊があるかもしれないが、川上は守られている。病院は大変だということをお伝えしたい」と、最終原価が上昇せざるを得ないとするメーカー側を牽制した。

厚労省の武田俊彦医政局長は、「緊急調査結果がGLに沿った対応なのかメーカー側の見解を聞きたい」と発言。長坂委員は、「（上昇もあった）仕切価だけの状況を見ると、なっていないのかもしれないが、大事なのは最終原価であり、リベート・アローアンスを含め早期に（取引卸に）伝えるよう、製薬協では言っている。（緊急調査対象では）19社全てが書面によりリベート・アローアンスの運用基準を伝えているところ」と述べ、GLに沿って対応していることを説明した。中原委員は、中小メーカーはより厳しい環境に置かれているとして、同省が実態把握の一環で進める仕切価等の設定調査は中小メーカーも含めて行うことを要望した。

17年度上期　一次売差マイナスの解消進まず

厚労省は、2017年度上期において仕切価率は87.3％（税抜）で15年度と比べ0.2ポイント上昇、納入価率は84.0％（同）で0.4ポイント下降し、一次売差マイナスの解消が進んでいないとする流通実態を報告した。単品単価取引の状況は、200床以上の病院では65.2％で、15年度と比べ12.6ポイント増、20店舗以上の調剤薬局チェーンでは61.3％で、15年度と比べ1.5ポイント減だった。三村優美子座長（青山学院大学教授）は、関係者間のさらなる取り組みが必要であり、GL実施下での取り組み状況の報告を求めた。「覚書」のさらなる締結が必要だと指摘した。