東邦ホールディングスの馬田明専務取締役COOは11月13日の2024年度第2四半期決算説明会で、「29年3月期にROE8%以上、営業利益率1.5%以上」の達成に向け、「積極的かつ大胆なアライアンスを加速させる」と強調した。アライアンス先としては、▽医薬品卸売事業の成長のカギを握るスペシャリティ製品の獲得につながる企業、▽新規事業の早期展開を目指した企業、▽DXの加速的推進につながる企業――を想定していると説明。29年3月期までの5年累計の成長投資予算“500億円以上”は、「必要最低限の金額」であり、「アライアンスを加速させる投資が必要になる可能性があることから、大きく予定金額を上回る可能性がある」と述べた。
東邦HDはこのほど、今年4月に設置した経営戦略委員会からの提言に基づき、25年度を最終年度とする3カ年の中期経営計画の加速と実効性を向上させるための実行計画を策定した。実行計画では、「29年3月期に営業利益率1.5%以上を目指す」といった数値目標や投資予算、事業別の具体的な成長戦略とともに、東邦グループの中で事業規模が最も大きい「医薬品卸売事業」と「新規事業」に経営資源を傾斜配分することを掲げた。
◎枝廣CEO 企業価値の向上に「医薬品卸売事業と新規事業の2事業の成長は欠かせない」
東邦HDの枝廣弘巳代表取締役CEO兼CFOは、「(実行計画に基づいて)企業価値を大きく向上させる戦略を実現し、成果を上げていくためには、医薬品卸売事業と新規事業の2事業の成長は欠かせない」と強調。全社員に実行計画や戦略目標を浸透させるとともに、培ってきた事業パートナーとの信頼をさらに進展させて全てのステークホルダーからの信頼につなげる考えを示し、「不退転の覚悟を持って実行計画を推進する」と述べた。
営業利益率1.5%以上を創出するための収益性の向上に関しては、「現在の薬価制度が継続する前提で考えると、粗利率を大きく向上させることは容易ではない」と指摘した。ただ、営業・配送体制の質的向上・強化や、DX投資の積極的な推進による業務効率化を進めて販管費率をさらに改善することは可能だとし、営業利益率の目標を「達成することは可能」だと話した。
◎スペシャリティ製品の取扱いで競争優位を確保できる機能を拡充へ
実行計画では医薬品卸売事業について、▽5年後の国内市場の約5割を占めるとされるスペシャリティ製品の取扱いで競争優位を確保できる機能(物流機能、フルラインサービス)の拡充、▽営業・配送体制の質的向上・強化(チーム制の導入等)を通しての生産性の向上、▽顧客支援システムの収益性向上及び付加価値提供型ビジネスモデルの進化・強化――に取り組む方針を示している。
馬田COOはスペシャリティ製品について、「スペシャリティ製品の流通において当社が不足している機能、今後注力すべき機能といった課題は見えている」とし、東邦グループが取り扱うスペシャリティ製品の獲得や不足機能の補完・強化につながる投資を積極的に進める考えを示した。
営業、配送体制の質的向上・強化に向けたチーム制の導入に関しては、既に取り組んでいる2次医療圏を軸とした営業体制や、安定供給を軸とした効率的な配送体制の構築と並行して、「それぞれの生産性向上のための効率的な営業活動を行うための仕組み」だとした。そして、「医薬品卸売事業では成長力の強化と積極的な業務効率化を通して、利益額、利益性を高める」と強調した。
◎顧客支援システム「将来性や採算性を踏まえて整理」
実行計画では「新規事業」について、患者、医療機関、薬局、自治体、製薬企業それぞれの「あらたな価値創造」に貢献できるサービス/システムの開発・推進に取り組む方針で、医療用医薬品以外のビジネスの構築も目指す。イノベーションの創出に向け、既存の顧客支援システム及びホールディングス傘下のシステム関連子会社機能の整理統合や、外部との積極的なアライアンスを図る方針も明記している。
このうち既存の顧客支援システムについて馬田COOは、「顧客の課題解決に貢献するシステムを数多く揃えたが、営業や本社スタッフのリソースを集中できていない課題もあった」と振り返り、「今後、将来性や採算性を踏まえて整理し、成長が期待できるシステムにリソースを集中させることで売上や利益に貢献する」と今後の方向性を説明した。
このほか実行計画では「製造販売事業」について、ジェネリックの安定供給の確実な推進のほか、スペシャリティ製品の取扱いの拡充を念頭にCDMO事業の拡大の可能性を追求する方針も示した。
◎24年度上期 売上総利益3.6%増の403億円 売上総利益率0.05pt改善の5.54%
東邦HDの24年度上期の医薬品卸売事業の業績は、売上高が前年同期比2.72%増の7287億3300万円、売上総利益は3.60%増の403億5700万円、売上総利益率は0.05ポイント改善の5.54%、販管費は0.65%増の323億5100万円、営業利益は17.53%増の80億500万円、営業利益率は0.14ポイント改善の1.10%――だった。9月末の妥結率は金額ベースで95.1%、軒数ベースで62.2%だった。
スペシャリティ医薬品や希少疾病用医薬品、ワクチン類の伸長や、業務効率化による経費の抑制などで増収・営業増益を達成。取引卸を限定する製品(コロナ治療薬を除く)の売上が28.1%増の1266億円と引き続き堅調に拡大したことも、同事業の好業績に寄与した。
枝廣CEOは、0.05ポイント改善した売上総利益率について、「製薬メーカーからの仕切価の上昇はあったが、流通改善ガイドラインを遵守すべく、個々の製品価値と流通コストに見合った単品単価交渉に引き続き取り組んだ」としたほか、特に医療上の必要性の高い医薬品の“別枠”での価格交渉に努めたことで納入価の改善ができたと説明した。
24年度下期については、「一部の医療機関で納入価格の再交渉があるが、引き続き、個々の製品価値と流通コストに見合った価格交渉や別枠交渉に努める」と述べた。