厚労省・山本審査課長 RWD利活用は「次世代勝ち残るカギに」
公開日時 2018/04/19 03:51
厚生労働省医薬・生活衛生局審査管理課の山本史課長は4月18日、都内で開かれたバイオファーマジャパンで講演し、リアルワールドデータ(RWD)の研究開発や安全対策への利活用は世界の潮流とし、そのノウハウを得ることが「次の時代を勝ち残るカギになる」との見解を示した。4月1日から、医療情報データベース(MID-NET)の本格運用がスタートしたことを紹介し、積極的な活用を呼びかけた。
MID-NETの本格運用にあわせ、GPSP省令を改正。製造販売後調査でRWDを活用した比較調査が行えることが明示されるなど、RWDの利活用をめぐる環境整備が進む。山本課長はMID-NETについて、「データベースが構築され、いよいよ稼働する。市販後の必要なデータをコストパフォーマンス良く入手するひとつのツールになるのではないか」と述べた。特に、年齢別や他剤との比較など、「これまで手が届かない、コストがかかってできなかったことがRWDの利活用で手が届く」と強調した。
◎RWDの利活用 すでに国際競争へ 条件付き早期承認ワクチンへの活用も
RWDの利活用は、国際的にも規制当局や製薬企業から注目を集める。17年10月に京都市で開かれた薬事規制当局サミットでもRWDは議論の焦点となった。山本課長は、「世界中横並びで、まだ決まった仕組みがあるわけではない。だからこそいま、どう使いこなし、メリットを得られるか。新しいイノベイティブ(革新的)なことに使う競争、使いこなすための競争が始まっている」との見方を表明した。
安全対策だけでなく、研究開発へのRWDの利活用も注目される。17年に導入された「条件付き早期承認制度」では、早期承認の条件としてRWDの利活用を含めた製造販売後データによる有効性・安全性の確認が求められる。オーファンなどへの活用も期待されるが、「ワクチンもあり得るかもしれない。がんのドライバージーンに着目した医薬品で検証的臨床試験を実施しづらいものなどは、候補にあがり得る」との考えを示した。対象となる疾患や調査など、業界側からの提案により活用の幅が広がることへも期待感を示した。
また、疾患レジストリーを通じて集積されたRWDと比較することで対照群を置かずに治験薬群のデータを基に早期に承認する制度の構築を目指していることも紹介した。18年度予算では1憶619万円の予算を確保し、ガイドラインの策定から取り組む。これまでの臨床試験の定石を打ち破る手法であるだけに、「私たちも新しい技術、考え方を取り入れていかないといけない」との考えを表明。4月1日付で、PMDA内にレギュラトリーサイエンスを設置するなど、組織としても改革に着手している姿勢を強調した。
このほか、承認事項の変更について、内容を事前に相談、合意した承認後変更管理実施計画書(PACMP)を策定する制度の試行を4月1日から適用したことを紹介した。審査・確認期間が短縮することが期待される。国際的には、ICH-Q12がパブコメ中。こうした状況を睨み、医薬品医療機器等法(薬機法)改正も視野に検討が進む。山本課長は、「タイムリーな一部変更申請や承認書の変更を可能にしていきたい」と意気込みをみせた。