全日本民医連 バイエル薬品・イグザレルト問題で声明「会社ぐるみの行為は極めて悪質」
公開日時 2017/06/27 03:50
全日本民主医療機関連合会はこのほど、バイエル薬品の抗凝固薬・イグザレルト問題に対する声明を公表した。宮崎県の診療所で行われたイグザレルトの服用患者に関するアンケート調査に際し、バイエル薬品のMRなど複数社員がカルテを無断で閲覧し、その内容を基に同社の本社が論文を作成、全国での販売促進活動に利用していたとの一連の報道について、「会社ぐるみの行為は極めて悪質で容認できるものではない」と指摘した。また、MRにカルテを閲覧させた医師についても「倫理上の逸脱があった」とし、医療人は患者の人権を優先した判断と行動をとることが求められているとした。
この問題では、宮崎県の診療所において行われたアンケート調査に関し、バイエル薬品本社の指示で複数の社員が患者のカルテを閲覧したほか、得られた情報を基に2本の論文を本社の社員が下書きし、診療所の医師は数か所の文字修正だけで、その医師の名前で2012年と13年に雑誌に掲載されたことが報道されている。声明では、「1本目の論文の作成にあたってはバイエル薬品に関する利益相反(COI)の記載がなかった」と指摘。2016年に論文は取り下げられたとしながらも、「バイエル薬品は自社製品に有利な情報を手に入れ、販売を拡大するために組織ぐるみで一連の悪質な行為を行ったとの批判は免れない」と強調した。
◎「患者の安全を後景に押しやるという態度は許されない」
さらにその後の調査で、アンケートに記載された副作用12症例が厚労省に未報告だったことが発覚し、薬機法に基づく報告命令が出されたことに触れ、「売上のためには患者の安全を後景に押しやるという態度は、製薬会社として許されるものではない」と批判した。その上でバイエル薬品に対し、「事実経過を明らかにし、再発防止策を含め、社会的責任を果たすよう強く求める」とした。
一方、声明は医療者に対する責任にも触れている。「患者の同意がないにもかかわらず、バイエル薬品の社員にカルテを閲覧させた医師にも、倫理上の逸脱があったと考える」と指摘。「医療人は、製薬企業の利益優先の問題に無関心であったり、なれ合ったりすることは許されない。今あらためて全ての医療人がCOIについて理解を深め、患者の人権を優先した判断と行動をとることが求められている」とした。