日本製薬工業協会・医療用医薬品製品情報概要審査会の中垣友宏審査委員は8月27日、都内で開かれたMR認定センターのセミナーで、製品情報概要の新たな作成要領を、科学的根拠に基づいた記載を推進する内容に改めたことから、それを踏まえたMR活動を行うため、「MRには今後ますます統計学の基礎知識が要求される」として、参加したメーカーの教育研修担当者に対応を求めた。
中垣氏は、MR認定センターセミナー「時代の転換点でMR活動を考える」で、2015年10月に改定した「医療用医薬品製品情報概要等に関する作成要領」を解説した。新要領では、科学的な記載を推進することを明確化。臨床試験成績については「記載するデータは、科学的な裏付けがあり信頼性の確保された正確なものであること」「統計解析結果について記載する場合、統計解析手法及びその結果(信頼区間、p値等)を記載すること」とし、統計解析手法の記載も必要になった。
中垣氏は、科学者でもある医師に納得してもらえるようにしたと説明、「データを正確に理解し、説明するためには、MRには今後ますます統計学の基礎知識が要求される」と指摘した。その上で「特に今の若い先生にはエビデンスレベルがしっかりレクチャーされており、(製品情報概要などの資料の)説明の内容は気を付けていかなければならない。内容がどのエビデンスレベルにあるのかを読み切って、かみ砕いて説明できることがますます大切になる」と述べ、統計学知識を持って活動できるMRの育成の必要性を強調した。
中垣氏は、要領が不祥事を背景に改定されたとした上で「薬業界の社会的信頼が低下している。危機的状況である。これ以上問題を起こすと、資料の作成、MRの活動ができなくなってしまう」と述べ、科学的根拠に基づいた情報提供など新要領の趣旨を踏まえた教育研修とMR活動を呼びかけた。
製薬協・田中常務 医薬品の最適使用で「MR活動の重要性高まる」
製薬協の田中徳雄常務理事は、セミナーの閉会挨拶に立ち、高額薬剤問題に触れ「医薬品の適正使用から最適使用。効く薬剤を持てば持つほどMR活動の重要性は高まっていく」との認識を示した。
田中常務は、治療効果の高い高額薬剤が出て、最適な患者に使用する必要性が強まっていることを挙げ「先生とにかく使ってよ!というMR活動でいいのか。しかもその薬は高い。中医協でも問題になっている。そこを教育でどうのように変えていくのか。今まで以上に患者さんの目線で情報活動していかなければならない。使ったけど効きませんでした、では困る。MRが薬物治療のパートナーならば、こんな治療効果の高い薬剤を持った時、MR活動の最大のチャンス」と指摘。薬剤が合う患者と合わない患者の見極め、地域医療連携による治療支援に対する助言・提案ができるMRを育成する時であることを強調した。