【World Topics】術後の鎮痛にニューテクノロジー
公開日時 2016/07/25 03:50
米国で、強い処方鎮痛剤への薬物依存や過剰摂取による事故死が大きな社会問題になっていることは本コラムでも繰り返しレポートしてきた。
健康な人が、これらの強力な鎮痛剤を服用するのは 、ほとんどが外科手術の術後。 快復期の痛みを止めているうちに薬物依存に陥る。この問題に外科医が、取り組み始め、鎮痛剤にできるだけ頼らない新技術の開発を模索している。
スポーツや事故でいためた肩の腱を修復するための回旋筋腱板手術(Rotator Cuff Operation)は、ポピュラーな手術だが、術後及び回復期の痛みが激しく、患者の苦痛が最も大きい手術として知られている。
整形外科医たちが、今この手術の術後をできるだけ鎮痛剤に頼らずに過ごせる工夫を盛り込んだ、手術と術後回復期のプロトコル の開発に努力している、とウォールストリート・ジャーナル紙が報じた。
チームを率いるのは、ニューヨーク大学医学部の「肩及び肘」外科部長であるDr. Andrew Rokitoだが、深い反省を込めて「あまりに多量の鎮痛剤をあまりに多くの患者に処方してきてしまった」と語り、「今後はopioidなどへの依存を最小化して、なおかつ患者の痛みをいかに軽減できるかを考えていく」と言う。
医師等による新しい外科的対応は次のようなものだという。
①首の付け根に24時間有効な麻酔をうつ
②患者は術後も継続して肩部分に麻酔薬を 注入するためのカテーテルを埋め込んで帰宅する
③最小限の鎮痛剤を処方
④水を入れたパッドで 肩周辺を冷やしながらサポートする(Cyrotherapy)
⑤PTの処方による適切なリハビリテーションの実施
(医療ジャーナリスト 西村由美子)